ブックマークした作品
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「……やっぱり、ここにいたのね、リン」
視線の先には、リンと呼ばれた修道女が立っていた。夕闇に映える金の髪がまぶしい。砂にしゃがみ込んだリンは、服が濡れることを厭わず、ぼーっと水平線の彼方を見つめている。
夕の赤に輝いた、一筋の頬の輝き。
それは、幻か。
「……あぁ、クラリスか」
声で判断し...茜空ノ修道女
Stella
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あれは、父さんの禁酒に付き合い始めて一週間ほど経った頃だっただろうか。私はあの日、家の壁に開いた穴の修繕をしていた。粗末な私たちの家は、ときどき修繕してやらないと住めたものじゃなかった。不満がないわけじゃなかった。でも、それ以上に誇らしさを感じていた。あの家は、民衆を第一に考える父さんの心を映し出...
ビンテージ
カンラン
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『悪の娘』を捕らえることができた。
それが確信となった途端、ジェルメイヌは膝から崩れて座り込んだ。
安堵と満足。そして、革命で命を落とした者への謝罪。色々な感情がまぜこぜになり、足から力が抜けた。
端から見ると怪我で意識を落としたと思われたのだろう。
近くに居たカーチェスがジェルメイヌの体を支えよう...革命のあと
ogacchi
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部屋の窓から海辺を眺める。地平線の向こうまで永遠と続いている海。もし、この海の水が全てお酒だったら、私はそれを全て飲み尽くすことができるだろうか。そんな荒唐無稽な考えがふと脳裏を掠めた。
こんなたわいない考えが浮かぶのも、5年前から続く案件にようやく、本当の意味で終止符が打たれたからだろう。
...英雄ノ追憶
IRis
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また今日も使用人が処刑されたらしい。なんでもリリアンヌのドレスの裾を誤って踏んづけてしまったとか。
リリアンヌが王女に即位して一年。私が知るだけでも相当の数の使用人がギロチンにかけられている。可哀想だなんて思わない。むしろバカな奴らだと思わず笑いそうになる。この我儘娘に取り入るなんて大したことな...近くにあった幸せ
カンラン
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プロローグ
興味深い事実は多くあるが実際に公表することのできる話はほんの一部だ。
その一部の中には真実を語っているとは言い難いものある。果たしてどのような形になるのか…私にも分からない。
現在、取材を進めてはいるが世に出すことは困難であろう物語を以下に記す。
鏡の中の住人
塔に夜は来るか
プラトーの...悪ノ娘の処刑人
センリ
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ある晴れた日の昼下がり。
私はグーミリアに修行をつけていた。彼女はまるで乾いたスポンジが急速にたくさんの水を含むように魔法を覚えるのが早くて助かる。しかも折り紙つきの真面目さでコツコツと丁寧に基礎から固めていく。この調子なら近い将来に二人でクロックワーカーの秘術を使い、ルシフェニアの崩壊を防げるかも...夢と欲望と現実
ナユ
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黄の国で双子が生まれたとの報せを受け、招かれたお城でアルカトイルとくだらない喧嘩をして外に飛び出したのがおそらく2時間前。
無我夢中に城下を駆け抜けエルドの森に入ったのがたぶん1時間前。
迷ってたまるもんかと昔読んだ童話のように、森に実っていたトラウベンの実を落としながら帰りの道しるべを作って...青の国の迷子様
アカメ
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遠くから私を呼ぶ声が近付いてくる。
すごい勢いで。
一瞬誰か分からなかったが、「カイル兄様~!!」とドレスの重さを感じさせないくらいの速さでやってきたのはリリアンヌだった。よくあのドレスで走っていて転ばないものだなと感心しつつ、王女がそんなことをしてはいけないよと窘める。その言葉を受けしゅんと...夢の中でなら
雪夢
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誰が歌うか 子守唄を歌うか
それは私よ 白い蛇がそう言った
藪の木々と 大樹に祈って
私が歌おう 賛美歌を歌おう
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カタリという物音で私は目を醒ました。目をこすって私のいる部屋――使用人用の寝室――を見渡すと、閉め切っていたドアがほんの少しだけ開いている。ベッドか...駒鳥の私は愛おしいあなたに讃美歌を贈ろう
orca
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話をしよう。
その共同墓地は格好の遊び場だった。旧王都という街中では子供たちの遊び場は少なく、近場で人気のなく木々に覆われたそこは最適だった。
私が「彼女」に気付いたのは、ある日のこと。
かくれんぼの場所探しの最中、ある墓標の前の彼女を見つけた。その修道着は確かエルド派のものだ。
私は目の前の「彼女...悪ノ娘 黄のアンコールあるいはビス
万華
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「ブリオッシュを作りたい!!」
「……はい?」
あまりに唐突なことだったのでつい変な声を出してしまった。ブリオッシュを作りたい?リリアンヌが?
「なんじゃ変な声を出しおって。なにかおかしなことでも言ったかのぅ?」
リリアンヌがムッとした顔で僕に訊く。
「い、いいえ!申し訳ありません、突然のことでした...君と私のブリオッシュ
ゆうとぴあ
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◇◇◇ -Who killed them?
この墓には誰も埋まっていない。
それでも、人はこの墓に花を供える。
ルシフェニア共和国、首都ルシフェニアン郊外の墓地。
集団墓地の端にある小高い丘の上へ、私は花束を抱えて登っていく。
樹で囲まれた丘の上にはルシフェニア王国最後の王女、リリアンヌ=ルシフェン...墓守の修道女
たるみや
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[紫/死]を呑む狂宴
[赤/堰]を切れ 晩餐へ挑め
[黄/王]を頂く双頭の城
[白/拍]手で下ろす”偽”曲の幕
[桃/陶]酔する愛憎の炎
[青/生]を切り捨てる裁判
膂[緑/力]で招く終末
黄色の終曲は
緑色の子守唄となり
黄金の間奏曲を経て...Evils xxx.
たるみや
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◇◇◇
これは夢だ。
早々に彼がそう確信した理由は他でもない。宮殿の廊下に、本来ならばいるはずもないものがいたからだ。
加えて、窓ガラスも割れているというのに他の侍従達が騒ぎ立てている様子は無い。
目の前の事柄全てがあまりにも不自然だ。夢なのだろう。今、彼の前にいるこの「熊」は。
地を這うような低い...イレギュラーはアカシックレコードの夢を見るか?
たるみや
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好奇心は猫をも殺すなんてよく言うが、幼い頃の私の好奇心は、猫の死体に打ち壊された。
なんのことはない、町外れに人だかりが出来ていたから近付いただけだ。
私と同じくらいの年頃の女の子や男の子が輪になって何かを見ており、私も気になって覗き込んだ。
そこには──猫の死体があった。
大きな鳥に襲われたのだろ...ネコの屍
たるみや
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◇◇◇
年をとった。
肖像画を描けなくなったのはいつからだろうか。
──否。描けなくなっていた、と気付いたのはいつだったか、と考えるのが正しいかもしれない。
若い頃は絵を沢山描いていたし、画家を目指していたこともあった。
しかし、母と画家ニコライ=トールによりその夢を絶たれてからは絵筆を持つことも無...とある画家の肖像
たるみや
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時計塔の針の音が響いている。規則正しく鼓膜を穿つそれは、まるで心臓の鼓動のようだ。
マーロン王国ブラッドプール地方北部、キャッスル・オブ・ヘッジホッグ。その中心にある巨大な時計塔の針音は、その風体にふさわしい程大きく、城をぐるりと囲うように建てられた城壁の上にまで届いている。
針の音に合わせるように...逆さの塔に名を刻む
たるみや
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私はいつでも間違いだらけだった。この一生の中で。
償いはきっと、いつまでも終わらない。
君に会いにも行けない。
栄える王国の中心。ルシフェニア城の一室。
2人の大臣が集いて、2人の子供を崇めている。
王と王妃が亡くなりし国。新たな王を求めている。
この国を救うためには為さねばならぬことがある。
「王...Master Of The Lucifenia
悪ノてるてる
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「エルフェゴートへ?」
「そう、少し用事をね。お願いするわ」
「分かった」
「お土産に、エルフェゴートの名産品トラウベンがあれば嬉しいわね」
「ふあぁぁ」
あくびをするリリアンヌが、視界の端に見えた。
あーあ、退屈な会議ねぇ。形だけで、意味なんてない。リリアンヌじゃなくても、あくびが出るわ。
「ふぁ...化ケ物ノ襲来
亮也