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日曜日を一日使って、俺は『ピグマリオン』をPCのテキストデータへと移した。かなり面倒だし時間がかかったが、ネットに公開されているフリーの訳とかが無いんだから仕方がない。これで、後はこのデータのどこに修正をかけるかを決めて、決定稿になったらプリントアウトしてからコピーしてみんなに配ればいい。
巡音...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十三話【見てもいいが触るのはいけない】前編
目白皐月
自分の教室に入って席につくと、ようやくわたしは少しだけ落ち着いた。ミクちゃんは自分の席から椅子を引きずってきて、わたしの向かいに座っている。
「災難だったね、リンちゃん」
「……うん。ものすごく驚いたし……怖かった……」
一体何だったんだろう、さっきの人。思い出したらまた気分が悪くなってきた。
...ロミオとシンデレラ 第三十六話【もう飛ぶまいぞ、この蝶々】後編
目白皐月
日曜日、わたしは久しぶりに自分でクッキーを焼いた。三年くらい前までは、自分でクッキーやケーキを焼くこともあったんだけど、いつの間にかやらなくなっていた。
色々考えて、わたしは絞り出しクッキーとチーズを入れたパイクッキーを焼くことにした。どっちも前に――大分前だけど――作ったことがあるし、コツさえ...ロミオとシンデレラ 第三十六話【もう飛ぶまいぞ、この蝶々】前編
目白皐月
それからしばらく、俺たちは戯曲の話をしたり、公園を散歩したりして過ごした。巡音さんも午後になると多少は気分が上向いてきたらしく、笑ってくれるようになった。
三時になると、巡音さんは淋しげに「もう帰らなくちゃ。今日はありがとう」と言って、帰って行った。……本当のことを言うと家まで送って行ってあげた...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十二話【疑問は多くあれど答えは少ない】
目白皐月
結局、わたしは鏡音君と、『ピグマリオン』の話をしたり、公園を散歩したりして、三時ぐらいまで一緒に過ごしてしまった。……楽しいと思える時間は、あっという間に過ぎてしまう。
本音を言えばもっと公園にいたかったけれど、さすがにそろそろ帰らなくてはまずい。公園から自宅までは歩いて四十分ぐらいだ。門限には...ロミオとシンデレラ 第三十五話【瞳の中は星でいっぱい】
目白皐月
俺の肩にもたれて眠っていた巡音さんが、不意に身動きした。……あ、目が覚めたのかな? 見守っていると、巡音さんが目を開けて身体を起こした。二、三度まばたきをして、ぼんやりと辺りを見ている。寝起きで頭がはっきりしていないらしい。
「あ……巡音さん、起きた?」
声をかけると、向こうは弾かれたみたいにこ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十一話【全て同じというわけではないけれど】
目白皐月
「ルカおねえちゃん、あそんで」
「今お勉強でいそがしいの」
「ルカおねえちゃん、なんでいつもおべんきょうなの?」
「大事なことだから。リン、あんたももっとお勉強しなさい」
「……リン、おべんきょうきらい」
「お勉強ができないと、パパにほめてもらえないわよ」
「いいもん、ほめてもらえなくたって。ママは...ロミオとシンデレラ 三十四話【やがて綺麗に澄んでゆるやかに】
目白皐月
あ、でも……。
「あの……巡音さん、ちょっといい?」
俺は気になっていることを訊いてみることにした。
「あ、うん。何?」
「多分これ、ひどく失礼な質問だと思うんだけど……巡音さんも、時々、さっきみたいな状態になってたことがあったんだよ。自覚があるのかどうかはわからないし、最近はそんな対応しないか...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十話【折れた翼であの子は歌う】後編
目白皐月
金曜の夜、なんだかよくわからない食事会の後で帰宅した俺は、自室のPCで柳影公園の場所を調べた。そこそこ距離があるな。巡音さんはよく知ってるみたいだから、彼女の家からすると行きやすいんだろう。
翌日、普通の時間に起きだした俺は、朝食を取って身支度をすると、ポケットに財布と家の鍵と携帯を突っ込んで、...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三十話【折れた翼であの子は歌う】前編
目白皐月
「あの……」
「うん?」
「あのね、これから話すこと、誰にも話さないでもらえる? ミクちゃんにも話してないことなの――だから、鏡音君のお姉さんにも、ミクオ君にも、話さないでいてほしいの」
鏡音君が誰かに話すとは思えなかったけれど、わたしは一応そう念を押した。
「わかった。誰にも言わないよ」
「わた...ロミオとシンデレラ 第三十三話【どうしても影がほしいの】後編
目白皐月
その次の日。わたしは鬱々とした気分で目を覚ました。時計を見る。結構早いな……いつもより早いぐらい。学校の支度……あ、今日は第二土曜だから、学校は無いんだっけ。
あれ……? 意識に何か引っかかってるな……?
首を軽く横に振りながら、わたしは身体を起こした。いやだ、わたしったら服のままで寝ちゃった...ロミオとシンデレラ 第三十三話【どうしても影がほしいの】前編
目白皐月
というわけで、何故か洋食屋まで移動して、全員で食事をすることになってしまった。あ、さすがに一度家に入って着替えたぞ。制服のままで食事に行きたくない。
「さてと……カイト、とっとと白状しなさい。なんでめーちゃんの家の前をうろうろしていたの?」
テーブルに座り、ウェイトレスに注文を告げると、マイコ先...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十九話【未知との遭遇】後編
目白皐月
金曜日は姉貴が食事当番なので、俺は買い物はせずに自宅に帰った。十一月なので、もう辺りは真っ暗だ。これからどんどん暗くなるのが早くなるのかと思うと、毎年のこととはいえちょっと気が滅入る。
自宅の前まで来た辺りで、俺は家の前に誰か立っているのに気がついた。……ん? 誰だあいつ。シルエットからすると男...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十九話【未知との遭遇】前編
目白皐月
その日の夕食は、ルカ姉さんも一緒だった。朝と同じで、やっぱり平然としている。わたしを叩いたことは、ルカ姉さんの中でどうなっているんだろう?
どうしよう。ルカ姉さんと話をしてみる? それともやめておく? どちらを選んだらいいのか、しばらく考えてみる。
……やっぱり、このままにはできないわよね。話...ロミオとシンデレラ 第三十二話【これと結婚するの?】
目白皐月
リンちゃんと鏡音君は順調に仲良くなっているようで、わたしは今日、リンちゃんに「放課後に鏡音君の相談に乗りたいから、またミクちゃんと一緒にいたことにしてもらえる?」と頼まれてしまった。わたしの返事は「もちろんいいわよ」に決まっている。
ついでに何を相談するのかも訊いてみたんだけど、鏡音君の相談とい...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十八話【ミクの要望】
目白皐月
ミクが「レンと巡音さんをくっつけよう」と言い出したのは、十月の頭のことだった。それから一ヶ月ちょっとが経過した現在、事態は妙なことになってきている。
もともと俺は、この作戦に乗り気じゃなかった。レンとは確かに仲がいいが、他人の色恋沙汰になんか興味は無い。それに、どう見てもレンは巡音さんに興味は無...ロミオとシンデレラ 第三十一話【クオの不満】
目白皐月
廊下を走ってはいけない。それはわかっている。だが、今の俺にそんなことを気にしている余裕は無かった。校舎の出口に向かって走る。巡音さんの性格上、寄り道するとは考えにくいから、この途中にいるはずだ。校舎の外に出てしまっていたとしても、校門の辺りで迎えを待つだろう。
下駄箱のところまでいくと、見慣れた...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十七話【君は特別な人】
目白皐月
下駄箱まで来て、靴を取り出そうとした時、わたしは運転手さんにメールを送っていないことに気がついた。あ……しまったな。しばらく、お迎えを待たないといけない。
わたしはため息をつくと、鞄を開けて携帯を探し、メールを送信した。その時だった。
「良かった……まだいたんだ」
「え……?」
わたしは驚いて...ロミオとシンデレラ 第三十話【ガラテアはピグマリオンに恋はしない】
目白皐月
「ついでにさ、あの人は変なところでプライドが高いから、目の前にいるイライザのことをちゃんと認めてあげられないんだよ。イライザのことをいつまでも花売り娘ってバカにしてるけど、家のあれこれを任せてたってことは、本当は信頼してたってことだろうし」
ただの花売り娘だったら、あんな短時間でちゃんとした貴婦人...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十六話【望むのはどこかの部屋】後編
目白皐月
金曜の朝、俺が登校すると、巡音さんはやっぱり自分の席で本を読んでいた。
「おはよう、巡音さん」
声をかけると、巡音さんは本を置いてこっちを向いてくれた。
「おはよう、鏡音君」
あれ……また表情が暗いな。何かあったんだろうか。とはいえ、こっちを向いてくれるようになったのは、進歩だよな。
……自...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十六話【望むのはどこかの部屋】前編
目白皐月
「だってフレディって、何の役にも立ちそうにないじゃないか。確か定職ついてなかっただろ、あいつ。そんな甲斐性なしと一緒になっても、幸せにはなれないんじゃないの?」
鏡音君はきつい口調でそう言った。役に立ちそうにないって……。確かにタクシー捕まえられなくて、母親と妹に呆れられたりしているけど……。どう...ロミオとシンデレラ 第二十九話【愛される権利】後編
目白皐月
ルカ姉さんに叩かれた次の日。朝食の席で顔をあわせたルカ姉さんは、昨日のことなんて無かったかのように、平然としていた。わたしは話しかけようかと思ったけれど、止めた。これからルカ姉さんは会社、わたしは学校だ。朝の忙しい時間に、蜂の巣を突付くような真似はしたくない。お母さんもいるし。
いつものようにほ...ロミオとシンデレラ 第二十九話【愛される権利】前編
目白皐月
「せんぱーい、幾らなんでも悪ふざけが過ぎますよ! あたし、一瞬本気にしたじゃないですか!」
ラブホテルを出て目的地に向かう最中、ハクちゃんはそんな文句を私に言っていた。
「あっはっは、あの時のハクちゃんの顔、見ものだったわ」
「もう、先輩って悪趣味!」
「心配しなくても、私はストレートだってば」
...ロミオとシンデレラ 外伝その十【シンデレラごっこ】後編
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
レンの姉、メイコの視点で、外伝その八【あの子はカモメ】外伝その九【突然の連絡】の続きです。
この作品に関しては、『アナザー:ロミオとシンデレラ』を第二十三話【真実はいつも少し苦い】まで読んでから、読むことを推奨します。
【シンデレラ...ロミオとシンデレラ 外伝その十【シンデレラごっこ】前編
目白皐月
巡音さんが言葉どおり『ピグマリオン』を貸してくれたので、俺は休み時間や、部活が始まるまでの短い時間に、最初の方を読んでみた。……映画を見た時はそこまで感じなかったけど、ヒギンズ教授って相当性格イタくないか? まあ、そこがギャグとして機能してるんだろうが……。お前はだだっ子かよ、と突っ込みたくなる部...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十五話【自分はありふれた人間】
目白皐月
次の日、わたしは『ピグマリオン』を鞄に入れて登校した。鏡音君が登校してきたので、本を渡す。本を受け取った鏡音君が喜んでくれたので、わたしは少し安堵した。少なくとも、一つはいいことができた。
その日の昼休み、いつものようにミクちゃんとお弁当を食べていたわたしは、ふと思い立ってミクちゃんに訊いてみた...ロミオとシンデレラ 第二十八話【わたしには姉さんがわからない】
目白皐月
「巡音さん、ちょっといい?」
水曜日の放課後、俺は巡音さんにそう声をかけた。
「……鏡音君、どうしたの?」
とりあえず、また以前のように話せるようにはなっている。……これでいいんだよ、これで。……多分ね。
「実はちょっと相談に乗ってほしいことがあって」
「え……わたしに?」
心底驚いたといった...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十四話【ショウほど素敵な商売はない】
目白皐月
「……生きた人間が出てこないお芝居は演じにくい?」
ちょっとふざけて、わたしは鏡音君にそう訊いてみた。
「人生を描くには、あるがままでもいけなくて、かくあるべきでもいけなくて、自由な空想に現れる形じゃないといけないんだよ」
あ……わかるんだ。何だか嬉しい。
「お芝居には恋愛が必要なのよ」
そこ...ロミオとシンデレラ 第二十七話【お芝居には恋愛が必要】後編
目白皐月
ハク姉さんとひと悶着あってから二日後。放課後に、鏡音君がわたしに声をかけてきた。
「巡音さん、ちょっといい?」
「……鏡音君、どうしたの?」
例の「好き」と「嫌いじゃない」の話のおかげか、わたしたちは、また普通に話せるようになっていた。……ミラーハウスでのことは事故だったと思って、忘れた方がいい...ロミオとシンデレラ 第二十七話【お芝居には恋愛が必要】前編
目白皐月
姉貴に『エンダーのゲーム』を渡して、俺は学校へ向かった。学校に着いて教室に入ると、いつものように自分の席で本を読んでいる、巡音さんの姿が目に入った。……どうしたもんかなあ。向こうは本に集中しているので、俺のことには気づいてない。けど、ここで声をかけないのは、それはそれで「昨日のことを気にしてます」...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十三話【真実はいつも少し苦い】後編
目白皐月