タグ:カンタレラ
91件
活気付く大通りで、レンはひとり重い溜息をついた。
気に掛かるのは勿論リンのことだ。
あれから一晩の時間をおいて一先ず怒りは収まったものの、朝からずっと沈んだ様子で部屋に篭もったままなのだ。
朝も昼も、今ひとつ食の進まなかったリンのために、レンはあてもなく市場を歩いている。
「参ったな。あんまり長く時...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第5話】
azur@低空飛行中
「何よ、あんな女!」
舞踏会から戻ってからの、リンの荒れようといったらなかった。
並ぶものなき大国の頂点に君臨する彼女にとって、他人から軽んじられるなど、屈辱以外の何者でもない。気まぐれに話し相手に選んだ青年から、すっかり存在を忘れられたことに、彼女の自尊心は傷ついていた。
その前にレンが彼女に見蕩...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第4話】
azur@低空飛行中
近付いてくる人影に、花嫁は伏せていた顔を上げた。
会話も無く寄り添う二人は、まるで美しい絵のようだが、互いを見つめるでもない視線はどこか余所余所しく、ぎこちない。
「お兄様・・・」
その声に花婿もやっとそちらに視線を向け、蒼い髪の青年の姿を認めた。
二人の男は無言で向き合い、儀礼的に会釈を交わした。...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第3話】後編
azur@低空飛行中
夜の舞踏会の会場は、式典の行われた城の中枢とは場所を別にして、少し離れた庭園で行われた。
幾つもの篝火が照らす夜の庭園には、着飾った紳士淑女が歓談している。
その中に一際、人目を集めている二人がいた。
「レン、喉が渇いたわ」
「何か取ってきます。ワインが良いですか?紅茶?それとも果物?」
「ワインが...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第3話】前編
azur@低空飛行中
もう間もなく結婚式が始まる。
ここ、シンセシスの若き国王と、その王妃となる人の結婚式だ。
式典までの半端な時間を、リンは式典の行われる広間ではなく、程近い中庭で過ごしていた。
広間の中では大勢招かれている他の賓客たちが口々に主役の二人の噂話で盛り上がっている。
若い国王の美男子ぶりや、そのくせ浮いた...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第2話】
azur@低空飛行中
慣れない異国の道を辿りながら、レンは満足げな面持ちだった。
活気のある市場に並べられた食べ物はどれも新鮮で質も良い。
いくつかの露天を回った結果、綺麗な林檎が手に入った。リンのための、今日のおやつになるだろう。
仮宿ではあまり凝ったものは作れないが、これなら手を掛けなくても十分に美味しい。
何を作ろ...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第1話】
azur@低空飛行中
乗り合いの馬車を拾って、次に連れて来られたのは大きな広場だった。
中央に芝生を設け、いくつかの噴水が点在し、そこらに鳩が群れている。のどかな眺めだ。
「あれは?」
広場の奥まった所に、一際目立つ豪華な佇まいの建物がそびえている。
「あれはこの街で一番大きな劇場よ。ところでメイコ、教会ミサ曲の安息の祈...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第0話】後編
azur@低空飛行中
連れて来られたのは、既製服を扱う店だった。
服など自分で縫うのが当たり前のメイコには全く馴染みがないが、ミクによればこれらは最近になって出来始めたタイプの店で、従来通りに一から服の仕立てもするが、もう少し安価に既に仕立てた服を置いてもいるのだという。
「ほら入って、メイコ」
「ちょ、ちょっと・・・」...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第0話】中編
azur@低空飛行中
どこの国も港の歌は、いつも底抜けに陽気なものだ。
人と物が行き交う賑やかな港の喧騒を眺めながら、三日ぶりに降り立った陸の上に一息付いていたメイコの耳に、またあの聴きなれた歌が聞こえてきた。またひとつ新しい船が着いたらしい。
積荷の上げ下ろしに合わせてテンポよく聞こえてくる船乗り達の荒っぽく陽気な歌声...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第0話】前編
azur@低空飛行中
Ⅰ.
In the closed world, he stare quietly.
She stares quietly, too.
I pretend not to notice it.
Do you notice my drunkenness?
Hid love that see...Cantalera (カンタレラ英訳ver0.9)
棕櫚
月影が森を照らす。
森の中に、そびえ立つは荘厳な城。
城の主は、青い髪と青い瞳を持つ青年。
名を、カイザレと言う。
使用人もいないこの城は、昼も夜も、ひっそりとしていた。
カイザレは、この静けさを好んでいた。
今日も一人、森を見渡せる最上階の窓辺で、
月を愛でながらグラスを傾けていた。
コン、コン。...囚われたのは誰なのか (カンタレラ妄想小説)
youki ゆうき