タグ「巡音ルカ」のついた投稿作品一覧(13)
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♯エピローグ「いつだって」
ウチがビイベックスをやめると提案した時、会社の人は残念がるよりも、ただ驚いていた。
入ったばかりで、どうして?と当然ながら聞かれた。
“初心に帰りたくなったので”
“初心?”
三年前を思い出す。高校を卒業し、音楽の仕事を始めてから一年目。
その時フリーだった私は、ギターだ...空の向こうの淡き光 12 【終】
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「久しぶりだねぇ、ルカ」
ウチは、先程自動販売機で買ってきたホットの缶コーヒーをごくりと一口飲んで、言った。
「えぇ、まぁ」
「ん~?ルカ、どしたの?元気ないですねぇ」
「仕事帰りで疲れてるからね。逆にグミは何でそんなに元気なのよ」
「いや~ははは、だって懐かしいんだもん!四年ぶりでしょ?そりゃテン...空の向こうの淡き光 11
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「ルカ、ねぇ、帰ってないの?」
ウチはすがる思いでドアを叩く。彼女がどうか帰ってきていますようにと。
築三十年のアパートの一室、一○一号室がルカの自宅だった。
チャイムが壊れているから、ドアを叩いて来訪を知らせるしかないのだ。
「ルカ、ねぇルカ……!」
何度呼びかけても返事は帰ってこない。その度に不...空の向こうの淡き光 10
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困る事なんてきっとない。……そんなことはなかった。
ビイベックス社に所属になってから、一週間後。
「つっかれたぁ」
その日自宅に帰ってきたのは夜の十時半。朝九時から中々ハードなスケジュールだった。
まず氷山のサポートメンバーとして、九時から十二時まで曲のセッション。
休憩一時間を挟み、一時から六時ま...空の向こうの淡き光 9
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♯3「二人の距離」
N市市民ホールでの公演の件から、次々にいろんなオファーが舞い込むようになった。
あの後、次はウチのホールでもやってくれと頼み込んでくるお偉い方が何人か来た。
それ自体もウチを驚かせるには十分だったが、一番びっくりだったのは有名なレコード会社からメジャーデビューの誘いまで来たことだ...空の向こうの淡き光 8
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「次に演奏する曲で最後となります。五曲目はなにを演奏するかわかります?ふっ、わからないでしょ?ではここでクイズ!ウチが次に演奏する曲のタイトル言い当てたら先着一名様に百万円あげちゃいましょー!!」
市長との話し合いから一カ月後の、八月某日。N市の市民ホールの舞台にて、ウチはマイクを片手に喋っていた。...空の向こうの淡き光 7
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それから3カ月後。
つい先日、ウチに単独公演のオファーがあった。
その時氷山のコンサートに偶然訪れていたとある市長がいて、ウチの演奏がその市長の目にとまったらしい。
氷山のコンサートなのだから、本来注目すべきは氷山なのだけれど、何故だか市長はウチの演奏ばかりを見ていたようだ。聞けば趣味がギターを弾く...空の向こうの淡き光 6
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ライブが終わった後、近くのホテルの一室で一人寝転がりながら先程の事を思い返していた。
まさか彼に紹介されるなんて思っていなかった。サポートメンバーなのだからただ楽器を弾いて、それで終わりかと思っていたのに。
あの観客たちの一万人の目。それが印象に残って頭から離れない。
ルカも、今頃は立派なシンガーソ...空の向こうの淡き光 5
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♯2「グミの四年後」
ウチらが高校を卒業して四年が経った。
ある日の事。
「皆さんこんにちは!今日はこの暑い中、俺の歌を聞きに来てくれてありがとう!」
アーティストが舞台の真ん中で堂々と叫ぶ。すると観客席の方からは、それに反響させるように「わー」だの「うおー」だの「いえー」だのと返事が返ってきた。観...空の向こうの淡き光 4
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翌日、放課後の音楽室――。
「んん~これがこうなのか、それともこうか!」
グミは先程からしきりにギターの弦をいじりながら、何かを思考錯誤しているらしい。
弦はグミの手によって音を奏でられている。その様子を、ルカはちらちらと見ていた。
「さっきから何してんの?」
「とりゃ!これでどーだ」
どうやらグミ...空の向こうの淡き光 3
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「あー……背中痛い。何だよ何だよ。ちょっとじゃれただけじゃんか」
先程まで尻に敷かれていた背中を、丁寧にさすりながらグミは愚痴をこぼした。
「時と、場合を考えて。やっていいこととやっちゃいけないことの区別もちゃんとつけて」
「やっちゃダメだった?」
「当たり前でしょ。人が熱いお茶持ってるのに、こぼれ...空の向こうの淡き光 2
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♯1『夢の話』
「うわっちっちっ……んくんく、ふー……やっぱり練習後に飲む緑茶はたまらないですなぁ~」
「放課後ティータイムってやつですね。ふふ、漫画みたいですよね」
午後三時二十五分。時間的には学校の六時限目が先程終わったところで、音楽室の窓からは温かいふわりとした日差しが差し込む。
その光を浴び...空の向こうの淡き光 1
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no logic