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「ねぇ、弘くんー。お腹空いたー。」
目の前には炬燵に入り、上気した顔で僕にねだる女の子がいる。下手に相手をしてたかられてはたまらないので、放っておくことにする。
「弘くんってばー。ねぇねぇねぇねぇー!」
こいつは猫か。構ってもらえるまでこのまんまなのか、こいつ。馬鹿だろ。うん、そうだ、絶対馬鹿だ。
...ぼくと花
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カチカチカチカチカチカチ。
真っ暗な部屋に神経質な音が響く。たまに、どこかから爆発音が微かに聞こえる。ただひとつの光源は目の前のゲーム画面。
カチカチカチカチカチカチ。
ただひたすらに、機械的にボタンを押す。カチ。機械音と共に記憶が溢れ出してきた。
僕は、いわゆる秀才だった。体力は十人並みだったが、...ゲーム
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夢一途、願いしことはみづからの心の音をば
届けんと声を張りしとき
そなたは見つけてくださるでせうか
わが惑い。
迷い立たずむこの地の子
皆一度は旅に出で
一人見上げし夜空にの色は移り行くさま、世の倣い。
いつしか人は旅に出で還るべき道を見失い
いつかまたあのとき見た里の星の色探し
歩きゆく...帰れぬ里へは帰られず「
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何時か人という存在は絶滅してしまうらしい。それはとても愉快だと言ったら、不謹慎だろうか。
僕は人という存在はなくてもよいものだと考えている。もし人が居なかったところで、困る人すらいなければ、救うべき誰かも存在しないし、抑、そんなことを考える存在がいないことを僕は知っている。だから、絶滅しようが繁栄...無い物ねだり
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いつかの景色。海辺に立つと、夕日が紅くて目が眩んだ。手を伸ばして触れようとしたら、それは血の色だった。ひらりと水に浸した私の手から血が滲み出る。
花を見た。周り一面が花だった。黒い花。折りとろうとしたら、それが徒花であることを思い出した。だけど、徒花でも綺麗なのに。徒花だから綺麗なのに。なのに、触...何時か見た夢
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1、なぞる
「ねぇ、君はさ、いつも何を見ているの?」
不意に千春が訊いてきた。
「何でそんな事、訊くんだ?」
「いや、何て言うかさ、君の側にいても、君の目に入ってない感じがして。」
ふ、と笑いたくなった。そんな訳ないのに。絶対に、ないのに。でも、嬉しい。僕のことをそれほど見ていてくれてるなんて。
「...耳で5題
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1、絡ませる
その手は、とても冷たい。まるで、冷気を放っているかの様に。だけど、僕にとっては誰のものよりも愛しい、彼の指。
「ねぇ。」
「ん? なんだ?」
そう言って振り返るキミの手と僕の手を絡ませる。やはり、キミの手は冷たくて、気持ち良い。その手が僕の体温に馴染むころ、キミはそうっと僕に近付く。ふ...指で5題
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見えないモノが此処に一つ。隣りにもう一つ。併せて二つ。
見えぬ幻、二つ。
「バク、と言う生き物を知っているかな?」
僕の目の前に空気の中からとけだしたかの様に現れた少女は、いきなりそんな事を問うた。白いワンピースをふわりとなびかせる様を見ながら、僕の口から疑問が零れる。
「は…?何いってんの。」
突...それはメビウスの輪のように
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「私もいやです。でも、ご主人様がそうおっしゃるのでしたら、私達はこの幸せだった時のことをこの世界の墓標にして、この世界と共に眠りましょう。」
あぁ、本当に嫌になる。こんな僕をこんなに慕ってくれた君達のことが、大事なのに。大事なのに、殺そうとしている。なんて、最悪。
「さて。もういいかな?」
紳士はこ...夢から目覚める物語。(4)
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そして、そんな始まっていない世界には、終わりも等しく存在しないということを。
「どうすれば…どうすれば、この世界を終わらせられるんですか?」
「君が望むだけで良い。望んで造った世界は、望むだけでこわれるんだよ。」
「そう、なんですか。わかりました。」
「「ちょっと待って!私達はどうなるの?」」
そう...夢から目覚める物語。(3)
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欠けるモノなんかない、素晴らしい世界。満ち足りた世界。僕は笑って、遊びに来たよ、と告げる。二人は笑って、やったぁ、ご主人様が遊んでくれるって、と、喜んでいる。あぁ、と、息を吐く。この、楽しい時間は、やはり何物にも替えがたい。
「へぇ、なにするんだい?」
あれ?誰だ、この人。僕はこんなシルクハットの紳...夢から目覚める物語。(2)
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どこまでも、黒くて白い世界にいた。ここは何処か、なんて知りはしない。だけど、何かは知っている。夢、だ。そう、寝ている時に見る、夢。そこには、気持ち悪いくらいに、僕の好きなモノしかなかった。甘いお菓子に楽しい仲間、終わりの来ない時間にどこまでも続く物語。そんなモノしかない世界。とても楽しくて、いつまで...
夢から目覚める物語。(1)
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夢は幻想でしかない、と、声がする。私の声だ。夢を拒否し、幻想を拒否し、過去を拒否し、未来を拒否し、生を拒否し、死を拒んだ私の声。
男は言った。
「ここは夢だが、幻想などではない。」
と。私は尋ねる。
「ならば、ベットに入った私は誰なのか?夢と世界は等しきモノではないはず。」
「それは、世界なんて、誰...私と夢を解体する男。