◇白黒反転の世界で鏡像に出会う。液晶画面越しには自分の部屋が映っていた。自分は部屋の向こうのドアから来たのだろうか、あのドアのあたりだけが唯一彩り鮮やかに、床は血(赤)で塗りたくられている、天井は何かの光(緑)が反射している。ドアの下には黒い骨と白い肉が横たわっていた。「あれは僕か?」鏡像に聞く。「あれは僕だ」鏡像が言う。「そうか」鏡像に言う。「そうだ」鏡像が言う。「取り澄ました白い部屋はもううんざりだ」と僕が言うと「淀んでいる黒い部屋はもううんざりだ」と鏡像が言う。だから僕たちはドアを明けたのだ。鏡像が言う「どうしようか」。僕が言う「どうしようか」。僕が言う「こいつはもう動かないかな」。鏡像が言う「こいつはもう動かないだろうな」。


■意味のない脳内会議から覚めた私はいつもの並木道を歩き出した。これから家に向かうのだ。先ほどまで静かだった脳内はイヤホンから流れる音楽に占領されにわか騒がしくなる。道行く人が皆私を見るのはなぜだろうか。ああ家までもうすぐだ、坂道に差し掛かった。



◇「どうする?」「どうする?」「僕に聞かないでよ」「僕に聞かないでよ」「じゃあどうすればいいのだ」「君はどうしたいのさ」「なんかうるさいね」「そうだね、うるさいね」「どこに行くのかなぁ」「家に行くんだろ?」「そうだった」「そうだよ」「で、こいつどうしようか」「白と黒ならいなくてもいいんじゃない?」「そうだね、問題は赤と緑だ」「これだけはどうしようもないな」「何か置けないかな」「たとえば?」「オルゴールとか」「陳腐」「じゃあ君は何がいいの」「そうだな・・・」



■家につくと、植え込みの緑に血の赤色が鮮やかだった、なんでこんなに鮮やか何だろう。血? 怪我人か? それなら救急車を呼ばなくては。植え込みの向こうにはだれもいなかった、ただ古びた時計が壊れて放りだしてあった。時計・・・? 時間はXX時XX分で止まっている。その時間は――



◇「そうだ、時計がいい」「時計? なぜ」「時を刻むから」「だからなんで」「あれは年を刻んだから」「へぇ、陳腐」「そんなに変わらなかったかな」「でも時計は悪くなかったかもね」「じゃあいいか」「いいんじゃない?」「扉はとじてあったことにしておくから」「そうだね、僕たちは何も見なかった」「それがいい」「うん」



■彼女は話した、白黒の奇妙な夢のこと、そこにでてきた黒と白の男。そして彼女が家から帰った時のこと、植え込みの向こうで血だまりと時計をみつけたこと。彼女の正面にすわる男は、傍らでキーボードをたたいている女性を一瞥して言った「そして、なにがありました?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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カガミ・フタヘヤ

意味不明的中ニ文章。
カガミ・トビラやカガミ・ハンキョウの関連作品らしきもの。
イメージテキスト?



彼女の帰り道
血だまりと木陰の赤と緑
脳内会議
僕と鏡像と白黒世界と部屋
横たわる白黒の肉と骨

閲覧数:95

投稿日:2011/02/21 01:03:51

文字数:1,106文字

カテゴリ:その他

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