「ユウ!やったわ!」

突然マネージャーが鼻息荒く私に詰め寄った。手には興奮の余り握り潰された書類が見える。良いのかな?同時に入って来た奏先生もクスクス笑ってる。

「ウチの事務所だけでのコンサートが決まったの!場所はT都のセントラルホール!
 総勢30名以上、観客動員数2万人の大規模コンサートよ!」
「本当ですか?!やったぁ!!」
「おめでとう、体調崩さない様に気を付けないとな。」
「はい!奏先生のお陰です!最近は発作も無いし、声もよく出るし…。」
「それは努力した結果、だろう?」

奏先生は自分の事みたいに嬉しそうな笑顔で髪をくしゃっと撫でてくれた。嬉しい…嬉しい!大きなホールで歌える、皆に聴いて貰える!そうだ、先生や羽鉦さんは来れないのかな?

「あの…奏先生はその日、来れませんか?」
「え…俺?」
「あ、先生は、忙しいですよね?!ごめんなさい!」

何言ってるんだろう、私。先生は医者なんだし、忙しいし、きっと仕事だってある。私のワガママに付き合わせる訳には行かないよね。しかも、よく考えたら女の子が殆どのアイドルコンサートな訳で…そんな所に招待するなんて嫌がらせにも取れちゃうかも。

「行くよ。」
「え?でも、お仕事とか…。」
「担当患者の体調を見守るのもお仕事ですから?」
「…ありがとうございます!」
「ユウったら嬉しそうにしちゃって~。」

本当に今直ぐ飛び上がりたい程嬉しかった。マネージャーは握り潰しちゃった書類を伸ばしながら少し涙ぐんだ目を擦る。と、そんな空気をけたたましい警報が打ち壊した。

「な、何?!火事?!地震?!」
「これは…!」
「警告、第3棟3階にて火災発生、現在消火活動を行っています。規模は小規模、
 繰り返します。第3棟3階にて火災発生…。」
「小火…みたいね?」
「すいません、ちょっと行って来ます!」

奏先生が飛び出して行った後、小規模の報告に私達はほっと胸を撫で下ろした。びっくりした…。でも小規模で良かった。私達が呑気に安心している裏で、少しずつ何かが動き出していた。

「で…一体どう言う事かな?羽鉦。」
「いや、俺もさっぱり…。ほら、捨て猫みたいな?」
「こんなデカイ捨て猫があるか!」
「猫じゃない!木徒!…工音木徒!」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -10.デカイ捨て猫-

※次ページはネタバレ用ですので今は見ない事をオススメします。

妹の事情を知りたい人は見ても良いかもしれません。

闇月さんお待たせ~。( ・∀・)ノ

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投稿日:2010/05/24 01:23:11

文字数:947文字

カテゴリ:小説

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