オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボ(2人)でお互いのマスターのお話を書けることになりました!
コラボ相手は、カッコいい素敵なお姉さんの生みの親、つんばるさんです!
上記の通り、私とつんばるさんのオリジナルキャラ(マスター)が登場します……というか、マスター(♂)×マスター(♀)です。
そして、ところによりカイメイ風味ですので、苦手な方は注意してください。

おk! という方は……。

(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)




*****



翌日。
その日の仕事は、いつも以上にはかどらなかった。
いや、実際の進み具合はそれほど変わらないのだが、いつまでたっても前に進まないように感じて……やっと定時になって上がった時は、少しほっとした。


「……よし」


同時に、緊張も沸き起こってきたが、俺は気合いを入れ直して、一旦自宅に向かった。




―Grasp―
悠編 第十一話




私服に着替えてから、再び家を出る。流石に、スーツのままで押し掛けるのは……少し堅苦しい気がするし、いかにもついでのようで、嫌だった。
ミクから聞いていなかったのか、皆驚いたような不審げな視線を向けてきたが、アキラのところへ行くとだけ、言っておいた。
皆の事だ、これだけ言えば悟ってくれるか、そうでなくてもミクが何とかしてくれるだろう。
そう考えながら歩いているうちに、気が付いたらアキラの自宅の扉が目の前にあった。
ここまでの道は、一体どこに行ったんだ。まるで、俺の家からワープでもしたかのような感覚に、俺は思わず苦笑した。
まったく……笑っている場合ではないというのに。改めて扉を睨んで、俺は深呼吸した。
大丈夫だ、落ち着け。どんな事を言われたとしても……覚悟はとっくにできているだろう。
そう自分に言い聞かせて、俺は思い切ってチャイムを押した。
……どうした事だろう、ちゃんと考えていたのに、今になって何をどう言えばいいのか、解らなくなっている。
忘れ物を取りに来た。昨晩の答えを教えて欲しい。
この2つだけのはずなのに……昨日あんな事があった後では、そのたった2つを言葉にする事もこんなに難しいだなんて。


「……よう」


扉が開いて、彼女が顔を出してからも考えがまとまらずに、結局ありふれた挨拶しかできなかった。
だが俺の顔を見た途端、もともと色白なアキラの顔から、さっと血の気が引く。


「……ッ!」


直後に扉を閉められそうになって、慌ててひっ掴む。
こじ開けるつもりはなかったが、閉められてたまるかと、ドアを引く。その向こう側で、アキラが負けじと扉を閉めようと力を込めてくる。
その内、開けたいのか閉められたくないのかなんて、半ばどうでもよくなって、ただ必死で扉にしがみついていた。


「お、い……アキラ……! なんで、いきなり閉めようと、する、っ……!」

「な、んの、用、ですかッ、ハルちゃん、先輩ッ……!」

「訊きながら閉め、ようと、すんなっ……! いいから、開けろっ、って……!」

「だ、から、なんの用か、言え、ば、開けるかどーか、きめ、ます、って……!」


閉めようとする理由を訊こうとする俺と、ここへ来た理由を訊こうとするアキラ。
互いに先に相手の答えを聞こうと譲らず、段々意地になって全身でドアを引き合う。当初の目的を違えてしまいそうだ。
言葉を重ねるうちに、ドアから軋むような不穏な音が聞こえてくる。
このままじゃ埒があかない。先にこの状況に耐えられなくなったのは、俺の方だった。


「――ミクの置いて行った荷物を取りにきた! だから開けろ!」


叫ぶと、途端に扉の向こうの力が消え、後ろに倒れそうになる。
なんとか転ばずに持ちこたえたが……急に手を離すなんて。


「おい、アキラ!」


抗議の声を上げるが、アキラはそれには応えずに、すたすたと戻ってきて、見慣れた桃色のポシェットとUSBを差し出した。
慌てて受け取って、確認する。……よかった、間違いなくあのコラボの曲が入ったUSBだ。
それにしても、ポシェットごと置いてきたのか、ミクは。よほど余裕がなかったと見える。
……泣いていたくらいだ、当然か。


「……はい。返しましたよ。とっとと帰ってください」


淡々とした声に、考えが現実に引き戻される。
話は終わりと言わんばかりの言葉に、俺は本題に入ろうと口を開いた。


「俺の用はそれだけじゃない」

「コラボのことですか。編曲データはきちんと受け取りました。あとはこっちに投げてくれても結構です、私が全部やっておきます。大丈夫、ちゃんと編曲のところに名前は――」

「そうじゃなくて、まだ俺は、お前の『答え』を聞いてない!」


目を合わせようとしない彼女に、思わず叫んでいた。
『答え』と聞いた途端に、アキラはぐっと言葉に詰まって、俺を睨み上げてきた。


「……なんなんですか。なんでそこまで私を気にするんですか。おかしいですよ、放っておいてください」

「おかしいのはお前の方だ、なんで濁すんだ! 逃げるなんてアキラらしくもない!」


アキラのはっきりした態度が、生意気だとも、好もしいとも思っていた。
だから、彼女に濁されると、余計に不安が大きくなった。
その思いからの言葉で、アキラの目に鋭い光が宿る。


「逃げる? 誰が!」

「お前だよ! 何が怖いのか知らないが……かたくなに逃げようとしてるようにしか見えない!」

「知った風な口を……!」


声に、表情に、怒りが滲んでいる。
いや……違うな。そんか単純なものではない。
苦しげで、何かを……今すぐにでも叫びたいのをなんとか耐えているような、そんな表情。
力が入りすぎて、彼女の拳、指の関節が白く変色しているのが、見てとれた。


「恋は罪悪だよ! わかってるの、悠サン!」


吐き出された言葉は、悲鳴にも似ていた。
しかし、罪悪ときたか。どこかで聞いたような言葉ではあるが……ついさっき『怒り』だと感じていた気色は消えて、泣き出しそうな表情へと移行していて。
小さな獣が、身を守ろうと必死で威嚇しているような、そんな痛々しさすら感じた。
熱くなりかけていた頭が、すっと冷えていく。


「……ミクに何か言われたのか」

「初音さんに何か言われたくらいで、私がどうにかなるとでも!?」


昨日以上に取り乱しているようにも見えて、発した問いに、アキラは噛みつくように言い返してくる。


「悠サンはおかしいよ、どうして私なんかを気にかけるんだ! なんでそんなばかな真似するのさ! 何が目的? 私には、あんたにあげられるものなんかなにもないのに!」


一気に捲し立てられて、こちらが口を挟む間もない。
が、彼女がこれほどまで感情を爆発させたのも初めてかもしれない。
ならば俺は……アキラの言葉を、ちゃんと最後まで聞いてやらなければ。
こうなるまで溜め込んでいた思いを、しっかりと受け止めてやらねばなるまい。
こちらから発信した事が受け止めてもらえない苦しさは、彼女には感じさせたくない。


「――どうせ、私には無理なんだ、私を好きな誰かに、私がしてあげられることなんてないんだ! へんな期待はしないでもらえるかな!」


どうせ無理、か。
どうして彼女は、こんなにも恨みごとばかり言うのだろうと、思った事はあった。
やはり何かが……誰かが、彼女をここまで歪めてしまったのだろうか。
何もしてあげられないなんて、そんな馬鹿な事があるわけないのに……。


「でも、もういいんだ、初音さんには嫌われたんだ、平手ひとつ受けたんだから彼女だって文句ないはずだ!」


もういい、と言いながらも、アキラの目にじわりじわりと涙が浮かぶ。


「私だって痛かったけど、でも、それで悠サンが私を好きにも嫌いにもならないでいてくれるなら安いもんなんだよ!」


そこまで叫んで、アキラは肩で息をする。
何も言わずに、冷静に見返している自分が、どこか妙だと思えた。


「……近づかないでください、好きにならないでください、きっと嫌になる日がきます、他にいいひとはたくさんいます、だから」


しばらくして聞こえてきた声は、先ほどとは比べ物にならないくらい弱々しくて。
堪えきれなくなったのか、大粒の涙が彼女の目からこぼれ落ちる。


「お願いだから、どうせ捨てるなら好きだなんて言わないで……!」


ああ……そういう事か。
捨てられたのだと言っているも同然の言葉に、俺は理解する。
彼女にとって、『好き』という言葉は、俺が思うよりずっと重かったのだろう。
抱きしめたくなるのを堪えて、うつ向いてしまった彼女の頭を、優しく撫でてやる。
捨てないよと、そう言ってやりたかったが、軽く聞こえてしまいそうで、言えなかった。
けれど……。
私なんか? ばかな真似?
あげられるものなんかない?
馬鹿な事を言わないでくれ。
お前から、どれだけの物をもらってきた事か。
どれだけ助けられてきた事か。
今ここで、全て話してしまいたい。


「……ごめん」


だが、口にできた言葉は少なかった。

ごめんな、アキラ。
お前がどれだけ拒んだとしても……。
やっぱり俺は、お前が好きなんだよ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第十一話 【悠編】

実は前からこっそりそういう事を考えていたんですが、なんとコラボで書ける事になってしまった。
コラボ相手の方とそのオリキャラさんが素敵すぎて、緊張しております……!



わっふー! どうも、桜宮です。
悠さん、アキラの答えを聞きに行く、の巻。
ここまできたなぁ……って感じですね。
アキラさんと悠さん、2人の想いが正面からぶつかっていくわけですが、それが2人にどうはたらいてくるのか……楽しみにしていてくださればと思います。

今回は……もう私から言えることはないです、はい。
アキラさんがどう思って叫んでいたのか、つんさんのアキラ編で確かめて下さい。

そのアキラ編では、後輩さんがとうとう……! そちらもぜひ!←


東雲晶さんの生みの親で、アキラ編を担当しているつんばるさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:452

投稿日:2009/11/28 14:14:35

文字数:3,818文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 桜宮 小春

    桜宮 小春

    ご意見・ご感想

    銀翼 紫苑さん>
    ありがとうございますー^^
    いやいや、つんばるさんの草案が素敵だったんですよ……!

    そろそろ話も大詰めなので、頑張っていきたいと思います!
    コメントありがとうございましたー!

    2009/12/07 12:46:04

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