[アドベンチャー]

乾く口元に水を差し
微睡みのままに街を行く
市を抜け出せば宵の口
虫を騒がせる宴の音色が

風に遠ざかりやがて消える
異形の調べが染み出す
「冷めた躰など土に還せ」と
翡翠の森は言う

あかく遠吠えが世界を震わせ
冴えてしまった私は眠れない
草根に張り付く足先を剥がし
夜霧に逆巻く夜へ

彼方に聳ゆは非情の楼閣
照空燈のディレイが惑わす
古地図に透かせど 白亜の磁針は
僅かに身じろぐばかり

西の塔に棲む魔術師は
常夜の秘術を夢に見て
旧いカンテラを鍵と立て
己が血で今宵 此れを成す

忍ばすナイフの握りを確かめ
一段一段足を掛ける
叶うものならば 血を見ぬ形で
貴方を止められたなら

冷たい扉が軋む音を立て
隙間を光の線が走る

眩い月夜がふたりを照らしだす

結末はこうだ 楼閣の主は
既に語ること能わず
かくも儚しや 旅路の幕切れ
乾いた血は語らない

崩れた屍に一瞥をくれて
小さな灯かりを吹き消し
そうしてお終い 夜空が明ければ
世界がまた廻るだけ

全てが過ぎたら 貴方の側には
花の冠を 静かに飾って
そうしてお終い 史乗の隅には
ほんの僅かなひと走り

我が家に着いたら 枕の傍には
壊れた磁石を飾って それから
静かに眠ろう 藪蚊に刺された
傷を数えて眠ろう

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[アドベンチャー](歌詞)

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投稿日:2016/10/24 05:23:31

文字数:553文字

カテゴリ:歌詞

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