グミヤが私を見てくれないのは何でだろう…。


辿り着いた結論。



“そうだ、グミヤのレンズを新しくしてしまえばいい”

―――あなたの視界に、私を入れててみせる。



ちゃんとした結論にはならなかったけど、これで何かが変わるなら…。





【シリョクケンサ Ⅱ ~自己解釈~】




「つ、追試ですか?!」

自分で聞いても悲痛な声が職員室に響く。先生に軽く窘められた。…当たり前か。

「ああ。しかもお前のクラスは他に追試のヤツいなかったから放課後はお前一人で頑張れよ」

そう言って、どっさりと重みのある追試用の国語プリントを私に渡した国語の先生。…って、

「え、ちょっと待って下さい!先生は?」

普通追試には先生がつくものではないだろうか?

「えー…めんどいし、それ全部終わったら職員室来てくれればいいよ」

……それでいいのか、先生。
めんどくさがり屋な先生のおかげで私は、放課後、たった独りでたっぷりとあるプリントをやり終えなくちゃいけなくなった…。


―――てゆうか、一人であの全然分からない国語がやり終えれるのかなぁ…。

私は憂鬱と不安いっぱいで職員室を出た。










「お、終わんない~~…」

待ちに待たない放課後。私は分からない問題に頭を悩ませながらも、比較的真面目に問題を解いていた。……のだけれども、
プリントをやり始めて約45分。やぁっと一枚終わったかと思えば、隣に白紙のプリントの束。やる気と達成感が一気に失せるのも当たり前だ。

という事ですっかりやる気を失くした私は、べたーっと机に突っ伏す。
こうすると体が良い感じに伸びて、なかなか良い気分になれるんだけど、。…それじゃあ何も変わらない。分からない問題はそのままだし、大量の白紙プリントは真っ白のままだ。

それは分かっていてもそのまま起き上がれない。
そんなうだうだと体を伸ばしていると、教室のドアが開く音がした。


―――げっ!先生が見に来ちゃった?

私は慌てて、いままでさも勉強をしていました、風に背筋を伸ばしてシャーペンを立てる。

横目でちらっとドアの方を見ると…


グミヤがいた。



「よっ、グミ。」

「えぇっ?!」

……何でこう、微妙なタイミングで現れるんだ、いつも。

グミヤは、私の心の声なんて聞こえないかのように(いや、当たり前だけど)話し出す。

「たった一人で追試なんだって?」

「何よぅ…皮肉を言いに来たの?」

グミヤの少し痛い所を付いてくるセリフはスルーして疑問形で返すと、


「違うって。国語の出来ないグミの為に教えに来たんだよ」


予想と違う言葉が返ってきた。

「…え」

「グミひとりじゃ解けない問題もあるかなーって思って」

―――それで、わざわざ?

グミヤのさり気ない優しさに胸が高鳴る。
グミヤはそのまま(ずうずうしくも)私の隣の椅子に腰掛けて、問題用紙を覗き込む。


―――近い、とか、別に、そんな、

思ってないよ。思ってない。


「てゆうかさ…、グミヤ、目悪過ぎだよ」

照れ隠しとか、そんなんじゃないけど、私はさっきから気になっていたことを言う。


「そんなこと無、」

「見えてないじゃん。」

そう言って、私はグミヤの掛けている眼鏡を両手で外す。



「眼鏡、変えればいいのに」


―――グミヤの視野が変わればいいのに。

グミヤに聞いてほしい方の声は聞こえないまま。
心の奥で、消えかけの私が悲しげに微笑んだ気がした。


私達の周りの空気が、ゆっくりと恋人たちのそれのような空気に変わっていく。


―――のをグミヤが壊した。


かしゃん。

グミヤは私から眼鏡を少し乱暴にひったくると素早く掛けた。


「見えてるって。ほら、さっさと解き始めるぞ。グミさん」

ピクッ。
―――また、その呼び方…。

わざとだ。わざと、私が傷つく呼び方をしている。
そんなにも私を遠ざけたいの?“生徒”と“先生”で居たい?
胸の奥がカッと熱くなる。

その衝動に任せて私は口走っていた。


「私一人で解けるから!グミヤ…先生は仕事に戻ったら」

吐き捨てるように言い放つ。
顔は上げれなかったけど、足音でグミヤが教室を去っていくのが分かった。


私は、涙が溢れないように下唇を噛んだ。



********



夕刻。勿論気の入らない白紙のプリント達はそのまま。
ただ私は考えた。グミヤが居なくなっただだっ広い教室で。

もうただの幼馴染として、友達として笑いあったあの頃には戻れないのかな…。
いつの間にか、私達の間には見えないレンズの壁が出来てしまった気がする。


―――見えなくなって、しまった。

あの頃は当然として見えていた景色が。



変わってしまったのは、グミヤ?



「……グミの方、じゃないかな」

過去の私が呟いた気がした。




そうだ。

私が変わってしまってたんだ。
いつの間にか、「先生」というレンズ越しでしかグミヤを見ていなかった。

それじゃあ駄目なんだよね。

私が掛けてしまったレンズと言う見えない壁。

だから、


―――私が壊しに行かなくちゃ。






気がついたら私は走っていた。

グミヤが居るかもわからないのに、勝手に体が保健室に向かっていた。

階段を抜けて、廊下を駆けて、保健室前で無理のある急ブレーキをかける。
そしてバァンっと音がする程勢いよくドアを開けた。

そこには目を丸くして佇むグミヤ。


―――良かった、居た。
まだ肩で息をしたまま思った。


「あっ、あのね、私ね、」

さっきまでずっと、いや、昔からずっと思ってた事なのに、グミヤを目の前にするだけで緊張して上手く言葉が出ない。


「私、グミヤの事が好きなの」

渇いた唇が妙に気になる。

「だからそういうのは…」

言葉を濁しながら回避しようとするグミヤを遮って私は続ける。


「先生と生徒としてじゃなくて!幼馴染として!友達として!一人の男と女として!」

国語苦手だし、上手く言えないけど、


つまり、



「肩書きとか関係なくて!私はただのグミとして、ただのグミヤが好きなのっ!」



大声で叫ぶように言ったからか、完全に酸素が足りない。
私は、さっき廊下を走った時よりも大きく肩を動かしていた。

呼吸がやっと整ってきた頃、私は視線を保健室の床からグミヤに戻す。



…ことが出来なかった。


目の前が、いつもグミヤの着ている白衣で埋まる。

と、同時に腕ごと抱きしめられる。





…―――レンズが砕ける音がした気がした―――…





「ぐ、グミ…」

や、と続けようとした口が塞がれる。

その柔らかな感触は一瞬で終わり、代わりにグミヤが口を開いた。



「…今までごめんな。―――グミ、好きだよ。愛してる」


私より少し大人なグミヤの言葉に真っ赤に染められた私の頬は、保健室の窓から差し込む光に溶かされていった。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

シリョクケンサ Ⅱ 【自己解釈】

随分長くなっちゃいましたテヘ☆(((殴

わ…忘れてなかったです…はい。←
でも期間が空き過ぎて前の回と色々食い違っちゃったりしています。スミマセン;;

完結です。一応…。
もっといちゃいちゃさせたかったけど、私には無理でした…orz

それにしても……両片思いって好きです!いいですよね!!(((


カラオケで歌ってきました!意外と難しかった…orz

素晴らしき本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15230821

閲覧数:1,608

投稿日:2012/01/21 16:51:55

文字数:2,904文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

  • 関連動画0

  • 紅華116@たまに活動。

    ご馳走様でした←

    ああああああ!!
    私もグミヤに抱きしめられたいとか言ったらグミに殴られそうだから、芽梨沙に抱きつきた(((ぇ
    ミヤグミで十分、萌えを補給できました☆←

    ブクマも貰っちゃうよー^^

    2012/01/22 16:13:36

    • 芽莉沙

      芽莉沙

      ≫紅華へ
      えええええ?!ど、どういたしまして←

      うおっΣ(゜Д゜lll)
      いいよ!私の胸に飛び込むがいい!!((((ちょ
      それはなによりでs((

      ブクマ&メッセありがとー><

      2012/01/28 14:47:47

  • 姉音香凛

    姉音香凛

    ご意見・ご感想

    ミヤグミいいよ!ミヤグミ!←
    一部ツンデレなGUMIさんがいて萌えたy(ぇ

    もう末永く爆発しろよ!ミヤグミなら許すから!((何コイツ←

    両片思いって何・・・(´・ω・`)

    あたしは一番しか歌えないよ ̄ー ̄)どやぁ((違う
    一時期逃避してたのによくぞここまで・・・!
    解釈上手いな、オイ。尊敬の眼差し←

    乱文スマソ・・・ではでは(*´ω`*)ノシ

    2012/01/22 08:39:18

    • 芽莉沙

      芽莉沙

      ≫モモコへ
      ミヤグミサイコーっ!←

      そ、そう?途中までただのヘタレじゃn((
      じゃあモモコも私と一緒に教えられにいこうぜ!←

      うわわわありがとーっ><

      だよねっ!実は私が書いた小説ってほとんどが両片思いだったり←

      そうだよねぇ…;あれは意外と難しい…;;
      歌ってみたの人を尊敬しちゃうよ!((

      モモコ神だ…ブクマ&メッセありがとうっ!


      ≫かおりんへ
      ミヤグミはいいよねっ(´∀`*)
      アレ…?いつの間にツンデレ発動した…?←

      だよねー!もう完全に二人の世界行っちゃてるしw←

      ええと、「両方とも片思い」の事だよ!相思相愛なのに気付いてないって感じw

      ちょwwドヤ顔www((失礼
      トウヒ…?ヤダナァwソンナコトナイy(((((棒読みで言うなし
      きゃあああ////その視線を向ける相手を間違えてるよ><私なんて雑魚に向けてはいけないっ←

      いえいえ^^メッセありがとう!

      2012/01/22 11:14:16

  • モモコ

    モモコ

    ご意見・ご感想

    きゃーーー!!!ミヤグミーーー!!!

    グミヤ、超カッコイイ!!!
    私もグミヤに国語教えられt(((

    ていうか、グミかわいすぎる…。ヤバい…。

    そだねー。両片思いっていいよねー。
    すきー!!

    私も歌ったけど無理でした…。
    うぅ~ん…。難しい……。

    あっ!もちろん、ブクマを連打したよ☆

    2012/01/21 19:24:29

    • 芽莉沙

      芽莉沙

      ≫モモコへ
      ミヤグミサイコーっ!←

      そ、そう?途中までただのヘタレじゃn((
      じゃあモモコも私と一緒に教えられにいこうぜ!←

      うわわわありがとーっ><

      だよねっ!実は私が書いた小説ってほとんどが両片思いだったり←

      そうだよねぇ…;あれは意外と難しい…;;
      歌ってみたの人を尊敬しちゃうよ!((

      モモコ神だ…ブクマ&メッセありがとうっ!


      ≫かおりんへ
      ミヤグミはいいよねっ(´∀`*)
      アレ…?いつの間にツンデレ発動した…?←

      だよねー!もう完全に二人の世界行っちゃてるしw←

      ええと、「両方とも片思い」の事だよ!相思相愛なのに気付いてないって感じw

      ちょwwドヤ顔www((失礼
      トウヒ…?ヤダナァwソンナコトナイy(((((棒読みで言うなし
      きゃあああ////その視線を向ける相手を間違えてるよ><私なんて雑魚に向けてはいけないっ←

      いえいえ^^メッセありがとう!

      2012/01/22 11:14:16

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