此処に連れて来られてからどの位経ったんだろう?今が何時なのかも判らない…。

「騎士…!」

騎士が外してくれた鎖は無情にも再び私の手足を縛り付けていた。あの人は私も騎士も道具としてしか思ってない…連れて行かれた騎士がどうなったのか確かめる事も出来ない、あんな状態でもし強い発作が起きたら騎士の身体が持たないかも知れない…!お願い騎士…無事で居て…!祈る様な思いでもどかしさを噛み締める。不意にガチャリと重いドアが開いた。其処に居たのは見知らぬ女の人だった。

「……。」
「ねぇ、騎士は…私と一緒に連れて来られた人はどうなったの?!」
「……。」
「お願い!此処から出して!」
「……。」

この人…何だろう、まるで目の焦点が合ってない?動作こそしっかりしているけど人形みたい…。その人は機械的に私の口元へ携帯ゼリーを突き出した。

「いい…要らない…。」
「……。」
「要らないってば!」
「……。」

手を引っ込める気配は無かった。何を言っても反応は戻って来ない。諦め半分にゼリーを口にする。人間ってこんな時でも食べられるんだ…。私が食べ終わるとその人は空になったゼリーパックを無造作に放り、そのまま入り口付近に座り込んだ。見張りなんだろうか?また意思の無い顔でこちらを見ていた。

「ねぇ、貴女何て言うの?名前は?此処の職員なの?」
「……。」
「此処から出して。」
「……。」

反応が無いので独り言を言っている様な気分になりハァっと溜息を吐く。せめて鎖だけでも外して貰えればと思ったんだけどな…。

「騎士…。」

涙が零れそうになった。発作は起きて無いだろうか?私みたいに鎖で繋がれて無いだろうか?皆はどうしてるだろう?きっと心配してるよね…せめて此処が何処なのか報せる事が出来たら…。

「報せる…?」

私の中に一つの考えが浮かんだ。逃げる事も戦う事も出来ない私に出来るのは…。

「騎士…!」

迷ってる時間は無い、このままじゃ何も出来ない、なら賭ける…!

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -91.籠の鳥-

迷うより進む 嘆くより動く
ただ強く 前を向く

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投稿日:2010/07/03 09:41:17

文字数:839文字

カテゴリ:小説

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