浮かんで、出逢ったのは今までの思い出。
 それはさながらエンドロールのようだった。
 いや、正確には走馬灯でも言えば良いのかな? 分からないけれど。いずれにせよ、その幕の切れてしまった白昼夢は、わたしの悲しさをただただ暈かしていった。いいや、悲しさだけじゃあない。それ以外の感情だって。そうだ。
 思い出してしまう、夕焼けの空。
 滲み出すパンザマストのメロディ。
 わたしは彼に言う。帰ろう、道を間違えないように、と。
 落ちていくさなか、いや、浮いているといってもいいわたしの身体は、地面に落下するまでの数秒間があまりにも長くて、あまりにも短くて、あまりにも切なくて、走馬灯にしては贅沢だった。
 また明日だなんて、言わなきゃ良かったな。
 やっぱり、辛いよ。
 きっと届かないだろうけれど――ごめんね、大好きだよ。


 ◇◇◇


 目を覚ますと、そこは、すべてが逆さまになった世界だった。
 いや、正確に言えば、目を覚ましたからこそ、わたしは位相の違う空間に移動したのかもしれない。つまり、あの世界の『楯山文乃』は消滅して、カゲロウデイズに取り込まれた、といったほうがいいだろう。
 わたしは、間違っていない。
 間違っていないけれど――どこかぽっかり心に穴が空いたようなそんな感覚がして。
「ほう、人がやってくるとは珍しいのう」
 そこに居たのは、大きな蛇だった。
 カゲロウデイズに取り込まれるためには――蛇に出逢わなくてはならない。
 蛇はカゲロウデイズにとっての管理人だった、ということは父さんの持っていた本で知っていた。
 ああ、怖いな。
 やっぱりどうせなら最後に言っておけば良かったかな。
 勘違いだったとしても、構わない。
 ずっと言いたかった、あの言葉を。


 ――さよなら、大好きだよ。



 そして、わたしは――蛇に『取り込まれていく』。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【自己解釈】アディショナルメモリー 後編

 ――友達なんかに、なりたくなかったな。


原曲:http://www.nicovideo.jp/watch/sm33854807

閲覧数:366

投稿日:2018/09/16 00:30:44

文字数:788文字

カテゴリ:小説

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