あなたのことを想うと
いつも心が柔くなる
嘘のつけない優しい人
笑顔の綺麗な人
穏やかな人

可愛いねと花を撫でて
今日も変わらず微笑んでいる
苦しい時も悲しい時も
決して涙は見せず
言葉すら知らない子どものように

細やかな幸せを
静かに静かに祈りながら
すぐにでも駆けていこうとする僕を
精一杯に抱きしめてくれた
その腕はいつも少し震えていた

たったひとつきりの命だから
血の巡る音に耳を澄ますよ
強くなりたいと願うのは
手を掴んでほしかったからだ
届かなかったこの手を

何も見えずにただ喚いて
似合いもしない力を振るった
ぬるついた指先では
眠るあなたの顔に触れられない
残るのはいつも痛みだけ

離さないでくれよ
ひとりにしないで
ふたりなら怖くないんだ
反吐が出そうな地獄でも
本当に幸せだった

まるであなたがいないみたいだ
醜く歪んだ世界がぼやける
無理にまぶたを持ち上げても
目に映るものに色はなく
もう戻れないことを悟る

優しい光に包まれて
夢にまで見たあなたのことを
ようやく、ようやく

らしくないよとあなたが笑う
凛とした声が聞きたくて
瑠璃色の瞳に見つめてほしくて
黎明の空に抱かれて
路地裏でそっと目を覚ました

わかっているよ
いつまでも夢は夢のままでいい
運命を
永遠を
あんなにも当たり前にありふれた
あなたとの明日を

僕は信じているから

僕だけは、信じているから

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僕らは初めに愛を知る

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投稿日:2019/08/26 00:09:23

文字数:604文字

カテゴリ:その他

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