「弱音さんちの留学生」
  第二話 天使の神楽 

PART2「またまたやらせて頂きました~」


この小説は、2013年01月01日に思いついたので、
慌てて忙しい中、書きとめたものです。

ボカマスなどにて、また無料配布小説本のに収録するかもしれません。

起承転結 4章構成になっています。



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「危ないっ!」

「ひゃっ!」

ネルちゃん、リンちゃんの悲鳴が聞こえる中、
私は阿綾の身を案じ、駆けだそうとした。

が、青い風が、彼女を抱き上げていた。
足を止め、安堵と共に見上げる。

仙女の飛翔、まさに見惚れてしまった…。

「はぁ?」

「えぇー!?」

また別の意味の二人の悲鳴が聞こえた。
昨日の夜に見たばかりだが、素晴らしいほどに上乗の軽功だ。
私も、中国武術を嗜むが、こんなジャンプは出来たものではない。

神主様が千社札の貼り付けに、長い棒を取りに行った。
ところが戻ってみると、彼女がこの軽功でふわりふわりと飛び上がって貼っていた。

私も神主も、腰を抜かして驚いたものだ。



初見のネルちゃん、リンちゃん、他の参拝客が呆然とする中、
主人を抱きかかえた中国ボカロ、天依ちゃんは、
ふわりと私達の前に着地する。

全ての参拝客がぽかんと口を開け、驚いている中、
抱きかかえられた阿綾は嬉しそうに、己のボカロに身をゆだねていた。

天依ちゃんは、主人を落とさぬようにしながら、
私に向ってうやうやしく頭を下げた。

頬を染めた主人も、慌ててボカロの腕から降り、
抱拳礼で頭を下げ、私に話掛ける。

あぁ、私を女傑か女侠客とでも思って居るこの勘違いは、
どうやらまだまだ抜けないらしい。

「お、お姉様っ!!
 こ、この度は、このように日本文化に触れる機会を頂きっ!
 本当に、本当にありがとうございますっ!
 私、ずっと、巫女服って着てみたくてっ!
 信仰に関わるバイトも、初めてでっ………」

嬉しさに喉を詰まらせる彼女に、私の苦労も報われたものだ。

あの日、酔い過ぎた私を引きずって帰ったネルちゃんは、
報われる以前に、まだ隣でぽかんとしているw


「はっ!?」

やっと、我に返った彼女は、ぶるると頭を振って呟いた。

「わ、分かったわよ。
 あんたが彼女達を規格外って言った意味はね……」

さすが親友、私のこの苦労を理解してくれたようです。

まぁ、楽しい苦労ではあるけどね…


「でもね、こんなんなっちゃって、本堂のほうはどうすんの?
 あの神主、そろそろ……」

彼女が言い終る前に、がらららっと社務所の戸が開き、
次いで大きな土埃が上がる。

竜巻がごときその姿が見えるや、
あっと言う間に、こちらへと疾走してくる。


「よ、 わ、 ね、 さあぁーーーーーん!!
 巫女っ!巫女がっ!
 巫女が持ち場を離れて、どうするつもりですかぁーーーーー!!!」

土埃が喋った。

「ひぎっ!」

ネルちゃんの顔が引きつる。神主さんがご来臨だ。


「や、 だ、 なー♪ 」

自分でもわかる位、いやらしい顔で微笑み、すすっと彼女の後ろに回る。

「その為にも、ネルちゃん連れて来たんじゃない♪」

「ま、まさか!?」

さすが、ネルちゃん、こちらを振り返る顔は明らかに嫌な予感に満ちて居たw

とんっと軽く、ネルちゃんリンちゃんの背中を押す。
とととっと二人が前へよろけると、飛んできた土埃の中から神主が現れ、
優しく両手でふたりをナイスキャッチした♪

「交代っ、交代要員だね、弱音さんっ!」

神主の瞳が、これ以上ないくらいの喜悦に輝いて居た。

「イエス、マイマスターw 写真よろしくでありますっw」

「もちろんっ、もちろんだ、マイアプレンティス!
 これで、当神社の留学生向け巫女装束が、一気に全て使用されるっ!
 メイ フォース ビー ウィズ ユーっ!」

神主が、そこまで素直に欲望を吐露しちゃ駄目だろう。
ツッコむ間もなく、土埃が社務所に駆け戻り、ガラララッ!ピシャッ!と戸がしまった。

「ハク姐ぇー!覚えてろぉー!」

「わーい、ネルちゃんと一緒に巫女さんだぁー♪」

という声がかすかに聞き取れたが気にしない。
いつものバイトの倍近い給金が出るのだ、ネルちゃんにはむしろ感謝してもらいたい。


それに、着替え終わった後、ネルちゃんの飛び蹴りを受けるのも覚悟済み、
その飛び蹴りの様子を、神主様がカメラに収めるところまで打ち合わせ済みだw

どんな容姿の交代要員を用意したかは伝えてない。
この社の留学生用巫女服は、欧米からの留学生向け、緑と青だと言う。
金髪の需要は、お見通しだったのだw

私にこんな素敵な年始を用意してくれたマイマスターの為だ、
弱音ハク、容赦せん~♪


「あ、あのぅ、お姉様。よ、よかったんでしょうか…」

ひきつった笑顔で阿綾が話掛けてくる。

「うん、この時間に来てね、貴方達と一緒にお神楽を見たかったのよ。
 ネルちゃんには後で美味しい物を奢るとして、まずは計画通りよ♪」

参道の左脇に、お守りや破魔矢をお返しするお焚き上げと、
神楽を奉納する舞台が並んでいる。

「あのゴミの山、なんなんですか?」

破魔矢やお守りが山積みの光景を見て、阿綾が不思議そうに首を捻る。
本堂のほうからは、この光景は見えて居なかったらしい。

中国にも同じような風習はあるが、この神社のように舞が終わるまで、
積み上げてあるのは、違和感があるようだ。

そして、彼女達は神様に焚き上げてお渡しする物への感覚も違う。
これは、双方の礼拝の作法を見て見ると、結構面白い相違なのよね。

「積み上げてある場所の奥に舞台でしょ?その脇に焚き上げる場所。
 これからお神楽が舞われて、神様にご報告した後、焚き上げてお返しするのよ?
 午前の舞はお神楽しか見えなかったかな? 舞いはどうだった?」

聴くとたちまち喜色満面になった阿綾が、声を上げる。

「はいっ! とっても、とっっっっても、お美しかったです!
 私、舞の度、つい手を止めて見入ってしまって、神主様に怒られ続けてます;^^」

ペロっと舌を出し、照れ笑い。
うん、いつもの彼女だ。この元気あっての阿綾なのよね♪


つられて、私の口元も自然に綻ぶ。

「でしょ~♪  で も ねっ♪
 このお昼の2回目の舞いを見逃しちゃ、絶対絶対、駄目なのよ~♪」

ちっちっちっと、自慢げに人差し指を振り、自慢げに胸を張る。

「えっ? 午後の舞いも、内容は同じだと神主様に聞きました。
 なにか、特別なんですか?」

素直に驚きの表情を浮かべる少女、この純真さが羨ましい。
こんな子だからこそ、人の感情を鋭く理解する「特殊なボカロ」が
傍に寄り添うのだろう。


「まぁ、舞台のほうを見てなさい♪」

私はそう言って、二人の手を引いて列を離れる。
参道脇で舞台の見える場所に立つ。

程なく二人を納得させる光景が、眼前に広がった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【ハクミク、南北組】 弱音さんちの留学生「2話-2章」

ハクとミクが暮らす部屋に、中国ボカロの二人がホームスティに来ました。 年が明けて元旦・・・  第二話の2/4。

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投稿日:2013/01/13 09:07:20

文字数:2,916文字

カテゴリ:小説

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