「…お」
 小さな声を上げたのは、レンのほうだった。
 リンとレンの二人で帰っているところだったのだが、館が見えてきたところで、二人の目に見知らぬ少女の姿が映ったのである。その少女が道を歩いていたなら気にも留めなかったのだろうが、その少女が館のドアの前で突っ立っているのだ。気にも留めないというわけにはいかない。
「うちになんか用でもあるのかな」
「声、かけたほうがいいよな」
「そりゃあ、あそこにずっといられたら私たち、中に入れないし…。かけないわけにいかないよ」
「そだな。よし、話しかける」
 ぐっとこぶしを握り、決意を見せる。
「うん、レン、がんばって!」
 それにノって、リンも横から声援を送る。
「任せろ!」
 ポン、と胸をたたく。
 無駄に意気込みつつ、二人は身長に、ゆっくりと少女の後ろへと忍び寄った。なんだか泥棒か何かのような表現に思えるかもしれないが、事実、二人の動きは泥棒と思われてもおかしくはなかった。
 少女の後ろに回り、レンガ呼吸を整えると、リンがレンのわき腹を小突いて催促する。
「あ、あの…」
「はい」
 振り返った少女は妙に落ち着き払い、レンの目を見た。真紅とはいかない、紅色の髪と同様に赤い瞳は、夕日のような赤だった。服装もこの辺では見たこともないような服装だし、表情はなんだか硬いように思えた。
「えと…。ここに何か用?」
「はい。もしかして、こちらのお宅に住んでいる方でしょうか?」
「え、あ、まあ…」
「では、こんなところで言うのもなんですが、言わせていただきます」
 いうと、少女は一方白に下がり、勢いよく頭を下げた。
「お願いします、私を匿って下さい!」

 リビングのソファに礼儀正しく座り、少女は不安そうに眉を下げていた。
 そんな少女の前に紅茶を出し、カイトが微笑んだ。それをみて、少女が微妙な笑顔を作った。
「あのそれで、さっき言ってたことって、どういう意味…ですか?」
 連歌恐る恐る言った。
「言葉のとおりです」
 説明になっていない説明をして、少女はレンと積極的に会話を交わそうとはしない。
「状況を説明してくれませんか」
 なおも一生懸命にレンガはなしかけると、少女は急にしおらしげな声になった。
「時間がないんです。お願いします。きっとお話しますから!」
 そういうと、また深々と頭を下げた。
「お願いします!」
 全員が顔を見合わせた。
 すると、この館の主であるメイコがため息をつきながら困ったように笑って、
「まあ、ここを頼ってきてくれた人を放り出すわけにはいかないわ。気が済むまでいていいわよ」
 その言葉を聞いて顔を上げた少女は、ぱあっと表情を明るくして、もう一度勢いよく頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「ところで、君、名前は? ここで暮らすなら、名前くらい知らないと不便だよね」
 カイトが言うと、少女はしっかりと答えた。
「ミキ、です」
 リンとレンは顔を見合わせたのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

鏡の悪魔Ⅴ 8

こんばんは、リオンです。
mikiさんの登場です。
多分すぐにユキちゃんも出てきます。
鏡の悪魔は久しぶりなので、ちょっと設定とか忘れてるかもしれないです。
変なとこあったら教えてください。

閲覧数:263

投稿日:2010/07/10 23:45:28

文字数:1,233文字

カテゴリ:小説

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