私はシンデレラになりたかった。

でも、シンデレラは計算的な女の子だなぁとも思ってた。

だって、ピッタリのはずのガラスの靴がそう簡単に脱げるわけがないでしょう？

ガラスの靴は、シンデレラがわざと置いていったの。

もっと、愛されたいから・・・


＊


「リン」


「なぁに？」


「なんであの時．．．俺が告ったとき、嘘ついたの？」



「――シンデレラに、なりたかったの」



「シンデレラ？」


「だってもっと．．．愛されたいから」


だから、早く見つけてね、私の気持ち。

悪い夢に焦らされるから。




「そんなことしなくったって・・・好きなのに」




レンがそっと唇を重ねた。


甘い味がした。


そうしてまた私はまたベッドに倒れた。






「もぅ、いいよ？遠慮しなくて」


レンは少し戸惑ってから、数十分前と同じように黒いレースの紐に手をかけた。






「どうなってもいいの？」






「―――いいの」



＊



それから先はあんまり覚えてない。


気がついたらもう３時で、私はちゃんと服を着ていた。


レンはうたた寝をしていて、起きる気配も無い。

ほっぺたを突いてみた。

反応ナシ。


「あ・・・」

レンの髪の毛はサラサラだっていうことにも気がついた。


「さらさら、なんだぁ・・・」


と、レンがいきなりパッチリ目を開けた。

私の腕をつかんで、顔を近づけて、意地悪に言う。


「なーにしてんの？」

顔が一気に赤くなるのが分かった。



「あーんなに凄いことになってたのに、また弄ってほしいんだ？」

「す、凄いこと？」

多分、記憶が飛んだ時の話だろうと思うと、背中に少し寒気がする。



「欲しいモノばっかり溢れかえってる」


「つ、つまり・・・欲・・・？」


求めてた、ってこと？

シンデレラやジュリエットは欲にまみれていたのかな？

それとも、人間はみんな欲にまみれているのかな？






「リンの全部が欲しい」





「・・・え？」




「毛先まで、全部」




「わ、私もっ・・・だよ？」



私だけの物語の残りのページは少ない。






「いっそレンの居場所までも埋めてしまおうか？」








「でもそれじゃ意味無いよ、リン」