episode0-4
この先の事を考えて、呆然(ぼうぜん)としている信介の姿を…自分自身の不甲斐なさに落ち込んでいると、勘違いした濃殿は…「お腹、減りましたね!…何か作って来ますね。少しお待ち下さい…。」「…あの、言上をした武将のお名前を知っていますか?…命を掛けるほど人が、ちょっと気になって。」「…そのお方は…戸次道雪(とつぎどうせつ)様です。…戸次様は、この家中に無くてはならない存在だと思うております。」『おぉっ~!俺が一番好きな武将じゃないか!…もっと顔を良く見て置けば良かった…。まてよ…九州の大友家に仕えたはずだが…。ここは九州なのかな…?もしかして、盟友の高橋紹運(たかはしじょううん)も居るのかな…。』「…貴女は…その他に重要な武将は誰だと思いますか?」信介は…興味津々で濃殿の答えを待つ。「…殿を目の前にして、女子(おなご)の私が申し上げるのは…差出がましい事と思いますが…。ハッキリと申し上げまする。明智光秀殿、黒田官兵衛殿、竹中半兵衛殿、伊達政宗殿、本多忠勝殿、不肖ながら…我が父、斎藤道三も必要かと考えてございます。…数え切れぬほどの有能な武将達が、殿の元に集まって居りまする。それらの武将達を適材適所に配置して、国の政(まつりごと)を行う事こそが、当主のあるべき姿かと思いまする。」濃殿が座したままで…額(ひたい)を床に擦り付けるほどに、頭を下げる。…それはまさに、当主として…こう成って欲しいと懇願している姿でも在った。その当主…本人は『ん~っ…、仕えた大殿もバラバラだし、国を治めた大殿も居る…。しかも、国を治めた時期も、大殿に仕えた時期も違うはずなのに…一緒に存在してる。…歴史的に、こんな事がある訳が無い…。とすれば……んっ…?今の顔ぶれ…何処かで見た事が在る様な気がするな……。あ~っ!こ、これは…。こんな事が有り得るのか…?ここは…戦国シュミレーションゲームの中だと…仮定したらどうだろう?今、濃殿が言った面々は…俺がゲームの中で集めたカードのメンツだとしたら…。なるほど…どおりで聞き覚えのある訳だとなる…。俺はゲームの中に入り込んだんだ…と結論付ければ、辻褄(つじつま)が合う訳じゃないか…?当主と言えば…ゲームをやってるこの俺だし、家臣達も当然の事ながら自分で集めた訳だし…何もかも辻褄が合う訳だ。…いやいや、納得してる場合じゃないだろ!どうして?なんで?って…判らない事ばっかりだし、元の世界に戻れるのかって話になる訳だし…。考えた処(ところ)で…すぐ答えも出そうに無いみたいだし…。先ずは…ここで生活出来るかって事になるかな…。しかしながら…濃巳にそっくりな妻が居るなんて…想像もして無いし、正直なところ驚いたけど…。ただ…この方(濃殿)の願いには、今の俺には到底…叶う事は無理だな…。』やっと1つの結論に辿り着いた信介だったが、濃殿の願いは届かないまま…。「…頭を上げて下さい。すみませんが…貴女が言ってる事は、良く解かります。…その通りだと思うし、納得もしています。でもそれが…俺に果たせるのか?と、思うと…自信が無くて、経験も少ない…。少なくとも、家臣たちの命を預かる訳ですから…。」ただただ、申し訳ない気持ちを伝えた信介…。「そうですよね…。私が焦り過ぎたかも…知れません。ただ…殿の口から『命を預かる』との言葉を聞いて…少しの安心と嬉しさを頂きました。」そう微笑む濃殿が、眩しく見える信介だった…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

歴史を変える、平和への戦い

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投稿日:2024/03/17 16:07:25

文字数:1,429文字

カテゴリ:小説

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