「君の願いをきかせてもらったけど、二つも叶えてほしいなんて強欲すぎじゃあないかい?」
普通は遠慮してひとつしか言わないもんだけど。まぁ君みたいに沢山願い事を言ってくる輩もいるけどねぇ…と魔法使いは面倒くさそうに呟きました。
「…そう…ですよね…」
姫君は魔法使いの言葉に驚き、瞳に涙を溜めています。



暫くの沈黙の後に、魔法使いはゆっくりと問いかけました。
「………願い事には対価が必要だ。
もし私が君の願いを叶えたとしたら君は私に何をくれるかな。
宝石?金塊?国を滅ぼせる程の兵力?」
―――そのどれもが私にとって欲しいものではないけれど―――
魔法使いは心の内でぽつりと呟きました。

「………あなたが口にしたものは私は全て差し上げることはできません…」
姫君は困惑した面持ちでそう応えました。
「君は一国の姫君なのに?随分とケチなんだねぇ」
魔法使いは侮蔑の表情で姫君を見ました。
「王族といえどもそのようなことはできません。国の財は国民のもの。西の国の財は私達王族のものではありません」
そう姫君は応えました。
魔法使いは先程とは違い、少し驚いた表情で姫君に問い返しました。
「ならば君は何をくれるんだい?」
「私自身に出ることは歌を歌うことだけです…私があなたに差し上げられるものはそれしかありません」
姫君は申し訳なさそうに微笑みました。
魔法使いは暫し逡巡した後に、姫君にこう囁きました。
「…ならばその歌声を聴かせて貰おうじゃないか。君の歌が相応の対価になるようならば、私は君の願いを叶えよう」

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

うたものがたり ~魔法の都と紫の魔法使い②~

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投稿日:2011/05/08 15:40:16

文字数:658文字

カテゴリ:小説

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