<Dear My Friends!第2期 第24話 魔剣の審判>
(ヤマト国 オーエド地区 セントラル区 ニンギョーチョウ ギア整備工場“カガ”内 会議室)
次にテルは、刀身が半分に分断されてしまった愛刀を憂う目で見ていた学歩に目線を向けた。
テル「次は、学歩、キミの愛刀だ」
しかし、レンの事を見ていた学歩なのに、やはり良い表情をしなかった。
学歩「・・・・・刀の事は知り尽くしているでござる。こうなってしまった刀は普通、壊れた刀身を溶かして、刀鍛冶に頼んでもう一度鍛え直し、刀身を作って貰うしかないはずでござるが…」
しかしテルは自信満々だった。
テル「まぁ、チートな事を言うつもりはないが、そうしなくても立派な刀を生み出せるのが、錬金術のウリでな。それにこれから錬成する刀は、幸か不幸か、“君ほどの腕を持っていないと使いこなせない”、そういうシロモノだ」
学歩は、ちょっと不思議そうな顔をした。
テル「では、行くぞ!」
そういうとテルは、魔方陣の中央に置かれた“壊れた刀”に、蓋をあけた封素瓶から数滴、輝く素材を垂らした。すると、壊れた刀全体が透き通る色でまばゆく輝きだした! そしてテルはレンの時と同じように、手のひらを魔方陣にかざした。
テル「我、汝を支配するモノ也! “斬鉄剣”に由来する素材以外は、この瓶に戻れ! 該当素材はこの壊れた刀の素材となりて、斬鉄剣を新たに構成せよ!!!!」
ギューーーーーン!!!!
すると、垂らした部分から、1/3ほどが瓶に戻っていき、そして、壊れた刀は先ほどと同じく、輝く球体に変わり、そしてすぐに、宙に浮く光り輝く日本刀と、それを納める刀の鞘に変貌を遂げたのでした!
ヒュン ヒュン ヒュン
学歩「な・・・・・なんと・・・・・・・」
テル「これは出所情報があった。“ゴエモン”というサムライが持っていた、コンニャクという素材以外なら斬れる、恐ろしい妖刀だ。刀自身が認めない程度の力量しか持たない所持者は、逆に刀に支配されて、狂った辻斬りと化す。だが、学歩、キミなら大丈夫だ。さぁ、手にとって、刀を支配しなさい」
学歩は、今までにない、畏怖とも言える顔つきをしながら、同時に躍動する心を持って、刀の柄を掴んだ。すると、学歩の脳内に、刀から直接声が聞こえてきた。
斬鉄剣の声(新たな所有者候補よ、汝の力量、調べさせて貰う!)
すると、学歩自身が透き通った光で輝きだした!
めぐみ「!? ど、どうしたの!?」
テル「さっき言った通り、刀が所有者として認めるかの“魔剣の審判”が始まったんだよ。学歩程の腕なら、審判はさすがに通るはずだ。むしろ、グレーで心配なのは、キミの方なんだよ、めぐみさん…」
めぐみ「え? え? 私?」
斬鉄剣の声(抜刀速度…許可。入刀速度…許可。斬撃…許可。峰打ち…許可。突撃…許可。居合い切り…許可。次は基本スキル。絶刀円月輪…弱点まで把握済みで許可・・・・・・・・・・・・・・・)
学歩の脳内にダイレクトに入ってくる声は、当然学歩しか聞こえない。次々に入ってくる斬鉄剣のチェック声に臆すること無く冷静に聞いている学歩は、さすがの一言であった。
そして学歩自身の輝きが収まった。
斬鉄剣の声(全て許可。よかろう、我は汝とともにある。我は『斬鉄剣』、コンニャク以外なら一刀両断できる剣だ。我の弱点も効果も、常に把握した上で、扱うがよい。全てを汝に委ねようぞ)
そして学歩は一言つぶやいた。
学歩「斬鉄剣、感謝するでござる。汝と共に行かん!」
こうして、学歩は最強武器である“斬鉄剣”の入手に成功した。
***
次にテルは、先ほど心配である事を言っておいた、めぐみに目線を向けた。
テル「次は、めぐみさん、キミの番だ」
めぐみは心底驚いてしまった。護身は別として、自分は完全に“非戦闘要員”だとばかり思っていたからだ。
めぐみ「わ、私!?」
テルはめぐみの心中は十分わかっていた。だから心配だったのだ。これから錬成する“とんでもない魔剣”に、彼女は本当に認められるのか、正直、“だめ”の方が遙かに優勢だったからだ。だがあえてテルは厳しい一言をめぐみに投げかけるしか無かった。
テル「めぐみさん、マージの一件でもわかるとおり、これから相手をする全ギアとテイマーの戦いは、正直、こちらの『総力戦』になる事は確実だ。マージを撃破した事は、ルォの上司はもう知っているだろう。当然、これから奴らが仕向けるギアとテイマーは、マージ以上の器である事は戦略的に言って、確実なのだ。キミはもう、“非戦闘要員”なんて言っていられないのだよ?」
めぐみはあたふたしていた。
めぐみ「だって私! 護身のハンドガンとか簡単なナイフ術程度しか知りませんよ! 無理ですよ!」
テル「さっき言った、キミへの心配はそこなんだよ、めぐみさん。これからキミのショートナイフから錬成する魔剣に、キミは認められなければいけない」
めぐみはもう半ば子供に戻った声で怒鳴った!
めぐみ「無理です! 他の人もナイフを持っているでしょ!? イアさんとか! 私なんかより、ずっとイアさんの方が腕が立つはずです!」
テル「私もそれは考えた。しかし、この封素瓶に入っている『該当素材』が求めている『ベースとなるナイフ』は、キミのモノだけを指名している。残念ながら他では錬成できないんだ。私にだって、意味はわからん!!!」
めぐみはテルの説明で、怒鳴るのをやめた。どうやら“腹をくくる”しかないようだ。そう頭で理解した。
めぐみ「・・・・・・・わかりました。子供みたいに怒鳴ってごめんなさい…。そもそもこの旅を企画したのは、私でしたね…。うん! わかりました! その審判の試練、受けます!」
テルはようやっと受理については安心できた。しかし、同時に確信が持てない不安はまだ残っていた。めぐみが負ければ、めぐみは支配されて、人斬りに変貌してしまう…。
だが、テルも全て腹をくくった。
テル「では、行くぞ!」
そういうとテルは、魔方陣の中央に置かれた“めぐみの無傷のショートナイフ”に、蓋をあけた封素瓶から2,3滴、輝く素材を垂らした。すると、ナイフ全体が漆黒の輝きに包まれた! 魔剣、その前説明どおり、ある意味まがまがしかった。そしてテルは、学歩の時と同じように、手のひらを魔方陣にかざした。
テル「我、汝を支配するモノ也! 魔剣“クリスナイフ”に由来する素材以外は、この瓶に戻れ! 該当素材はこの、汝が指名した“めぐみのショートナイフ”の素材となりて、クリスナイフを新たに構成せよ!!!!」
ゴモゴモゴモゴモ!!!
すると、垂らした部分から、1/5ほどが瓶に戻っていき、そして、ナイフは今度は真っ黒に輝く球体に変わり、そしてすぐに、宙に浮く、刀身がジグザグになった風変わりの漆黒のナイフと、それが納められる不思議な鞘に変貌を遂げたのでした!
ゴゴゴゴゴゴ!
めぐみ「わ・・・・・わ・・・・・・な、なんて禍々しいの・・・・・これが私の武器・・・・なの?」
テル「これは出所不明だ。ただおそらく“魔剣士”系の剣士が所有していたのだろう。斬るよりは、魔術を扱う、不思議なナイフだ。おそらく、キミを指名した理由の半分は、ナイフ術の素養をナイフが求めなかったからだろう。問題は、“魔術”の事だ。こればかりは、ナイフから直接聞いてみてくれ。幸運を祈るぞ」
めぐみは、もう本当に慎重に慎重に、真顔になって、クリスナイフの柄を掴んだ。すると、学歩の時と同じように、脳内に、クリスナイフから直接声が聞こえてきた。
クリスナイフの声(我が指名した、新たな所有者候補よ、汝の力量、調べさせて貰う!)
めぐみ「や、やっぱり怖いよー!!!!」
すると、めぐみ自身が漆黒に包まれた!
リン「ちょ! テルさん! 本当にめぐみさん、大丈夫なんですか!? というか、このナイフ、呪いの魔剣とかじゃないんですか!?」
テルは少し言葉を選んでから、一言だけつぶやいた。
テル「大丈夫であることを・・・・信じたい・・・・」
リンは唖然としていた。同時に、杖を構えて“解呪の魔法”の準備をしていた。
リン「私、有事になったら、使いますからね!」
テル「・・・・・・そうしてくれ」
***
クリスナイフの声(我は、ナイフの物理スキルは求めない。よって、汝程度の力量で問題無い。護身術程度身につけていればよい。次は問題の“魔術”だ)
めぐみ「わ、私、裁判官だから、魔力なんてないですよぉ・・・・・・」
しかし、クリスナイフの声は意外なモノだった。
クリスナイフの声(・・・・・ほほぉ、汝の深部まで見てみたが、我の思っていた以上だ。やはり汝のみを指名して正解だったぞ。よろしい、一発合格だ。我は汝とともにある。我は『クリスナイフ』、様々な『支援魔法』の魔力を極限まで増幅するナイフ也。全てを汝に委ねようぞ)
そして漆黒が消えた“めぐみ自身”は、安堵に包まれながらも、今度はしっかりした顔つきで、こう答えた。
めぐみ「わかりました。あなたが増幅してくれた“支援魔法”、しっかり使わせて頂きます!」
クリスナイフの声(期待しているぞ?)
こうして、めぐみは、最強支援武器として、クリスナイフの入手に成功したのでした。
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん
ミゥ:Mew
欲音ルコ(ルコ):欲音ルコ
唄音ウタ(デフォ子):唄音ウタ
桃音モモ(モモ):桃音モモ
雪歌ユフ(ユフ):雪歌ユフ
義 井具蔵(ヨシ イグゾウ)(イグゾウ)):某演歌歌手
ルォ:オリジナル男性中華ボカロ(オリジナルボカロになります)
チンシャン:某女性中華ボカロ
マカ:某少年中華ボカロ
ティエンイ:某女性中華ボカロ(ルォの姉(こちらが本家“ルォ・ティエンイ”で、女性中華ボカロになります))
その他:エキストラの皆さん
Dear My Friends!第2期 第24話 魔剣の審判
☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第24話です。
☆第22話を書いたときに、この次まで原稿ができあがっているので、そこまでは投稿したいと思います。
☆第22話からの流れです。続きになります。
☆今回は入手するのに、試練と審判を要する、2つの魔剣のお話でした。
***
私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”~第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh
同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”~第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日~2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1
更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A
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Re:sui
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ご意見・ご感想
オレアリア
ご意見・ご感想
enarinさん、今日は!
メッセージを書かせていただくのは久しぶりになりましたが、前回までのお話も含めて拝読させていただきました。
さて、今回は前回の22話に続いて失った武器の修復ということで、2人に下される審判。がくぽは元々備わっている素質と力量があると思っていたので、大丈夫とは考えていましたが、めぐみに関しては戦いの経験も無い非戦闘員なので、果たしてクリスナイフは彼女を認めるのだろうかと、不安になりましたが…流石めぐみ、何の問題もありませんでしたね!
それにしてもテルの錬金術がここまで万能で、かつ以前の物よりも更にグレードアップさせることができるとは。テルの言葉を借りれば、正にチートと言っても差し支えないですねw
しかし、考えればこの地獄でこれほど有り難いことはありません。これらの最強武器で迎えるテイマー戦が楽しみです!
斬鉄剣についての余談ですが、元ネタの「コンニャクが切れなかった」というのは、あまり知られていない話ですよね。戦車は勿論、ヘリや戦闘機はバスバス切れるのに←
だいぶ昔に、某ムダ知識番組でも紹介されましたが(笑) しかしまさか…ディアフレでも、この設定が伏線になったりはしませんよね? ともあれ、強化・再生された武器たちの活躍も含め、次回のストーリーに期待しています!
「またつまらぬコメントを残してしまった…」
2013/10/10 09:32:29
enarin
オレアリア様、お久しぶりです!
> 拝読させていただきました。
ありがとうございます! ちょっと事情で不定期だったり間が空いたり、申し訳ないです。とりあえずできあがっている原稿は残り1つです
> 力量があると思っていた
はい、学歩さんはそもそもの力量が違いすぎますから、まぁ確認のため行いました。というか次の”めぐみさん”との比較のためもあります。
> クリスナイフは彼女を認めるのだろうか
どうやら魔剣”クリスナイフ”は、彼女の中に眠る”支援能力”の大きさを感じ取って、一発OKにしました。今後彼女がどう活躍するか、お楽しみに!
> テルの錬金術がここまで万能
えっと、これは解説しますね。テルの錬金術は万能では無いです。”それになり得る素材やエネルギー”がある事が大条件で、それが無ければ何にも出来ません。0からモノを作る事が出来ないのです。それと素材の構成原理、これも理解できないとモノを作れません。なので今回の最強武器の製作は、マージが今まで吸収した”その武器”の素材があったから作れたので、チートに見えますが、そうでも無いんです。
> これらの最強武器で迎えるテイマー戦が楽しみです!
はい。この光景は、テイマー上層部はサーチの能力である程度は掴んでいるはずですから、テイマー達がこれからどうするか、そしてどういう刺客を送り込むのか、楽しみですね。
> 元ネタ
そうなんですよね♪ 元ネタの方では、1話丸々そのネタを使った話があります。敵に奪われた斬鉄剣攻略のため、現地で調達したこんにゃくいもを煮てコンニャクを作り、それを飛行機全部に塗って、奪い返したわけです。
実際、金属スパスパなのに、コンニャクだめって、おちゃめな設定、さすが先生ですね。
> しかしまさか…ディアフレでも、この設定が伏線になったりはしませんよね?
ふふふ、どうでしょうか?♪♪
> 次回のストーリーに期待しています!
もう1話、残りのメンツの武器強化の話があるので、それを投稿したら、設定を整理して、話を進めます。いかんせん、ルォに復活してもらうまで、一段落できませんからね。
このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!
2013/10/11 19:00:37