※警告という名の諸注意、やっちゃったよセルフパロ

・帯人×女性マスター(篠武)
・カイトは出てきません
・妄想による世界観、しかも本家よりダーク。
・オリキャラ満載(オリキャラは名前・設定ともにシャングリラと同じ・若干性格は変わっている場合もあり)
・帯人はアンドロイド・機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』

※ここ大事※
 多分いないとは思いますが…万が一、本家シャングリラを少しでも気に入ってくださっている方がおりましたら、今すぐ全力で引き返してください!本家シャングリラとは一切関係ありません。悪いのは全面的に私ですorz

恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです

上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ




☆☆☆☆☆☆☆




45.

SIED・HANAZONO


海外の大学に在学中の頃、たまたま参加した五十嵐所長の講演会がきっかけで、卒業後すぐに希望して研究施設へと移った。
誰でも務まるわけじゃない。
五十嵐所長の手腕で得られる潤沢な資金を元に、それぞれの分野から世界有数の研究員、設備等が揃うその施設は、まさに選ばれた人員のみが参加を許される。

私はこの研究施設で働ける自分に、絶対の自信と誇りを持っていた。

数年して、この施設ではトップクラスのプロジェクトが持ち上がり、そのチームの一員として大抜擢されたときは、有頂天になった。これまでの努力と、私の才能が認められた瞬間だった。


『これからよろしくね、』

プロジェクトリーダーは、若くして所長の右腕的存在となった北澤正隆主任。
彼は、この施設内でも群を抜いて優秀な研究者だった。
その発想、着眼点、実行力等、どれをとっても他の追随を許さない天才。ここにきた当初から彼に憧れていた私は、共に最高のプロジェクトに参加できるのが嬉しかった。


(でも、それだけだったら、幸せだったのに、)


プロジェクトの機密性保持の為、少数精鋭のメンバーは、寝食も出来るだけ同じフロアで行っていた。
もともと研究熱心で、身の回りの多雑な物事には無頓着な主任。私は彼の世話を焼くのが楽しくて、率先して彼を公私区別なくサポートした。

私の研究目的もすり替わり、主任の為に結果を出すことだけを目標としていた。


『いつもありがとう、…ごめんね?』

眉を下げ、すまなそうに笑う主任が…とても可愛く見えた。

(好き、だった…、)

憧れが、いつの間にか好意に変わったのはいつだったかな。


でも、だからこそ気づいてしまった。


彼の変化に。


少しだけ服装に気を遣う、さりげなく寝癖を直す、携帯を気にする。
ふと漏らす笑みが、何処となく柔らかく蕩けている…。
本当に些細だけど、私にとっては大きな問題だった。

一体何が、誰が、彼にこんな表情をさせているのか。



『この前、所長の娘さんを紹介されてさ、それが凄く面白い子だったんだよ、』

素っ気なさを装っても、浮つく気持ちが滲み出た声。
私に見せるのとは全く違う、彼の一面に戸惑った。


(どんな人なんだろう、)

研究以外興味を向けない主任が、そこまで気に入った女性。
五十嵐所長の娘なら、きっととても美しくて品が良くて聡明な人なんだろうな。

気になった。知りたかった。会ってみたかった。



『へぇ、まー君って、ベーコン嫌いなんだ、意外―、』

『そう言う篠ちゃんは、好き嫌いとかないの?』

『甘いものは好きだなー、』

ある日、偶然社食で見かけた、主任と見知らぬ女性。

もしかして、この人が…五十嵐所長の娘さん?

少し離れた席から様子を見ていると、彼女は私の想像とは全く違う人物だった。
荒々しい言葉遣い、粗野な態度、化粧っ気もなく服装だってシャツにジーパンと、およそ女性らしいところは一つも見当たらない。

ショックだった。この数年ずっと傍にいた私より、こんな女が主任の隣で笑っているなんて。


(どうして?何が良かったの?何処が気に入ったの?)

私には、彼女の魅力が何なのか、全くわからなかった。

(まさかとは思うけど、『所長の娘』だから…?)

それは、とても嫌な妄想だった。

彼女が立場を利用して、彼に近づいているのは間違いない。何の取柄もない一般人が、この研究施設に立ち入ること自体おかしいからだ。
肩書だけで、この場に、彼の隣にいられるのが許せなかった。


ちょうどそんな時期。


私は思い悩むのに疲れ、気晴らしに外へと出るようになった。
基本的に重要機密を扱う部署に所属するものは、あまり外出するのは褒められた行為ではないけれど。
でも、部屋に籠っているのは辛かった。主任の傍にいるのは苦しかった。



『あなたは…五十嵐さんのとこの研究員さんでは?』

たまたま飲みに行ったバーで、声をかけてきたのは。
現在、私が所属する研究施設を有する企業の理事である榊だった。
榊は私が学生時代、何度か大学内で会ったことがあったから、懐かしさも手伝ってすぐに打ち解けた。
それから何度か、このバーで会って話をするうちに。


『よかったら、うちの研究員になりませんか?あなたが飛び抜けて優秀なのは、よく知っています。あの大学には、目ぼしい学生さんをスカウトに行っていたのですが、残念なことにあなたはすでに進路を決めてしまっていた。今からでも遅くない、よかったらあなたを次期所長として、我が施設に迎えたいのですが、』


天啓を受けたと思った。


私が所長に就任して、施設を今よりもっと立派なものに出来たら。
北澤主任を、引き抜けるのではないか?そうしたら、所長の娘からも引き離せるのでは?


『え?五十嵐所長に娘さんが?そんな話は初耳ですねぇ、』

首を傾げる榊を他所に、私はどうしたら研究施設を世界屈指の、それこそ五十嵐所長を越えられるかを考えた。


(まずは、より大きな『実績』を創るのが、一番だわ、)


そう、例えば。



『VOCALOID・KAITO』を完成させる、とか、ね。




46.

SIED・SINOBU


「ん、…まぶしい、」

このビルの五階に、件のレストランがある。
建物内は煌々と電気が点いていて、光に弱い帯人には辛そうだ。
サングラスでもあればいいんだけど、あいにくそんな洒落たものを持ち合わせている人間はいない。

「大丈夫か?辛かったら車で待っていてもいいんだぞ?」

その場合は、加奈さん回収して早急に帰るから。

「…嫌だ、篠武といる、」

緩慢な動きで首を横に振り、オレの腕を掴んだ彼の手に力が入る。離すもんかと意思表示されて、呆れるやら嬉しいやら。



(ん、…嬉しいって何だ、)



嬉しいのか。オレは。帯人に懐かれて。愛されて。



(嬉しい、んだ…、)



数日前、帯人の中に芽生えた感情についていろいろ聞いた時。自分にはない、たくさんのフィルターを通して見える景色の多様性を知った。
万華鏡を回転させて展開する色柄は、決して綺麗な物だけではないけれど、正直羨ましくて仕方なかった…。

(頭で理解しただけじゃ、意味ないよな、)

チラリと見上げた先にある、帯人の紫炎に濡れた瞳。
真っ直ぐに、オレを見つめるその奥底に読み取れる、深い熱情。
慈愛や博愛とはまた違う、甘ったるい猛毒にも似たタールのように、暗澹とした情愛に全身丸ごと絡め取られてしまいそうだ。
相手によっては拒絶しかねない、濃い粘着性を帯びたそれを、オレはむしろ心地よく思う。

だって、それが帯人の愛し方だから。



(ああ、…そういう、ことなのか?)

他人の心の機微を知るには、自分も同等の心情を持ち合わせていなければわからない。
視線一つで、こんなにも帯人の内面が伝わるのは。


(同じだから?)

相手の言動に自身の感情を投影し、無意識に推察している。
『空気を読む』『共感する』『相手を慮る』…それら全ての元になるのは、つまりそういうこと。


(オレも、持ってる?帯人と同じように、人を愛せる?)


だったら、やっぱり相手は…



「着いたよ、このレストランだ、」

「あ…、うん、」

正隆さんの声に、一瞬で現実へと戻される。

開いたエレベーターのドアの向こうに見える、高級そうな内装が施されたイタリアンレストラン。

(加奈さん、こんなとこに呼び出して何だろう…?)

案内された個室の扉の前に立ち、そう言えば今日はまだ夕飯食べてないなと、空腹を抑えてぼんやり考えた。



続く。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

※亜種注意※Lost.Eden//叶わなかったシャングリラ【帯マス】第十七話

おぅーまいがー…

閲覧数:51

投稿日:2016/10/08 18:18:19

文字数:3,547文字

カテゴリ:小説

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