君がくれた光



 出会いは真夜中、黒い川の上。
 欄干に足をかけたとき、君の声が、風のように微かに耳を掠めた。
 全てを失くした空ろな僕には、未来も希望も何もない。命さえも失くしたって、構いはしないはずだった。
 それなのに、君は言った。
「もし、あなたがここから消えたなら、……きっと、私は悲しい」
 と。
 見知らぬ僕への、真っ直ぐな言葉。
 なぜだろう、苦しくて。
 僕のこと、何も知らないくせに、と返した声が揺れている。
 寂しげにそっと頷いた君が、紛れていく、夜闇へ。気がつけば、僕は、手を伸ばしていた。

 もう一度、君に会いたいと、願った。



 再会は、深く青い空の下。
 全てを失くしたこの場所で、手向けた花束見つめる、君に気づいた。
 振り向いた君は、まるで、僕を待っていたように話し出す。
 ――あの日犯した、過ちを。

 告げられた罪に、震える両手で刃向けた、僕を見て。
 微笑んだ、君の瞳が、あまりに悲しげで息が苦しい。
 それでも、あのとき奪われたものは、もう二度と戻らない。全てを無かったことにも、できない。
 踏み出した僕は、切っ先を君へと、――



 穏やかに流れる風が、日差しを揺らし、瓦礫の山を通り過ぎていく。
 膝をつく、僕。
 目の前に、もう、動かない、君。

 世界が、歪む。

 空っぽな僕に、確かに光を注いだのは、君だった。
 いつか会いたいと願っていたのは、こんな終わりのためじゃない。
 散り落ちた花の鮮やかな紅が、涙まで染めていく。手にしていたはずの光は、解けて、幻のように零れ落ちていった。



 この手で壊した、君の微笑みが。
 言葉が、……光が。

 忘れられないんだ。




---以下、想定ひらがな歌詞---



であいわまよなか くろいかわのうえ
らんかんにあしおかけたとき
きみのこえが かぜのよおに
かすかにみみおかすめた

すべておなくした うつろなぼくにわ
みらいもきぼおもなにもない
いのちさえも なくしたあて
かまいわしないはずだった

それなのにきみわいいった
もしあなたがここから
きえたなら きいと
わたしわ かなしいと

みしらぬぼくえの まあすぐなことば
なぜだろお くるしくて
ぼくのことなにも しらないくせにと
かえしたこえがゆれている

さびしげにそおと うなずいたきみが
まぎれてく よるやみえ
きがつけばぼくわ ておのばしていた
もおいちどきみに あいたいとねがあた



さいかいわふかく あおいそらのした
すべておなくしたこのばしょで
たむけた はなたば
みつめるきみにきづいた

ふりむいたきみわまるで
ぼくおまあていたよに
はなしだす あのひ
おかした あやまちお

つげられたつみに ふるえるりょおてで
やいばむけた ぼくおみて
ほほえんだきみの ひとみがあまりに
かなしげでいきがくるしい

それでもあのとき うばわれたものわ
もおにどと もどらない
すべておなかあた ことにもできない
ふみだしたぼくわ きいさきおきみえと



おだやかにながれる かぜがひざしおゆらし
がれきのやまおとおり すぎてゆく
ひざおつくぼく めのまえに もお うごかないきみ
せかいがゆがむ



からあぽなぼくに たしかにひかりお
そそいだのわ きみだあった
いつかあいたいと ねがあていたのわ
こんなおわりのためじゃない

ちりおちたはなの あざやかなあかが
なみだまでそめてゆく
てにしてたはずの ひかりわほどけて
まぼろしのよおに こぼれおちていいた



このてでこわした きみのほほえみが
ことばがひかりが わすれられないんだ

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【応募歌詞】君がくれた光

malkaさんの歌詞募集曲(https://piapro.jp/t/qtQ2)に応募するため書いたものです。

疾走感あるイントロに、「これは……近未来SFだ!」と盛り上がって書き始めたのはいいのですが、
書き上がったものに近未来SF要素がほぼ残っていなかったので愕然とし、
とりあえずそこだけ浮いていた銃を刃物に差し替えることにしました。
さようならわたしの近未来SF……


今回の執筆時のいろいろ。
常識人の私 「内容も書き方もタイトルも問題だらけなんですがこれは」
自由人の私 「でもこういうの面白いよね?」
実際に書いている私 「……えーいやっちゃえ!」

やりすぎたなって反省はしています。

閲覧数:111

投稿日:2023/03/31 23:49:53

文字数:1,522文字

カテゴリ:歌詞

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