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「うーん。推理物って難しいわね。」
そう言って、寒空の中、ピエロのマリオネット人形とリアルな蝋人形を片しながら頭をひねる女性の姿があった。
「雪の足跡トリックはいいとしても、結局これだと『you君』が見た蝋人形の挙動含め、あとは全部『私』の妄想ってことになるけど、流石に煩雑ってイメージにならないか心配だわ。」
丁度よく来月取り壊しで立ち入り禁止の公園も演劇の練習に使うには持って来いだった。
いつ補導されるかわからない状態ではあったが、人っ子一人いない空間というのはなんとも爽快である。
チャーチャチャー♪
そんな中、突如として鳴り出す携帯の着信音。
ああもう。と彼女は片付けを中断し、人形を置いた。
「・・・はい。もしもし。」
「・・・あ、XXXさんの携帯ですか?」
「え?そ、そうですけど・・・?」
「実は、今朝お会いしたご実家の解体業者なんですけどね?」
「・・・・げ。」
「あ、今『・・・げ』って言いました?言いましたよね?」
「いえ、言ってないですケドなにか!」
「やっぱ無断だったんですね?!ちょっとマジ今どこいんスか?!」
「あー・・・キュウニデンパガー。」
そういって彼女は携帯を見なかったことにする。
困ったことになった。
物語の創作に夢中で蝋人形の指はさっき自分で壊してしまったし、あの調子だと留守にしていた母に連絡がいくのも時間の問題だろう。
蝋人形の指をくっつけるにはどうすれば・・・。
そんな思想が彼女の脳裏を駆け巡る。
「普通に考えれば火で熱せば付きそうだけど、それだと周りの塗料がこげちゃわないかしら。ってこれ、推理につかえそうかも?!って違う!直さなきゃ!」
そういうと彼女は今朝そうしたように蝋人形を台車に乗せる。
そして『ピエロの人形』と『綱渡りの女の子の人形』もまた鞄の中へとしまい、台車へと乗せたのだった。
了
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