電話を切った倉式が深く息を吐いた。
「おい、何であんな嘘吐…むぐっ?!」
口を塞がれると同時に目の前にメモとペンが突き出された。筆談って事か?
『来留宮先輩には凰さんがこっそりボディーガードを手配していて、真壁さんもそれは知っています』
『それじゃあどうしてあんな嘘を?』
俺の書いた返事に少し考えてからまたペンを走らせた。
『さっき2人は多々良先輩と瀬乃原先輩を探しに行くと言っていました。なのでこの2人と同じ寮に居る鶴村先輩は安全です』
確かにそうだが、それが嘘を吐く理由とは結び付かず、俺は眉を寄せて首を傾げた。
『七海さんは警察に捕まりそうになっていたんですよね?』
『そうだなムカツクけど嵌められた』
『侑俐さんが此処に連れて来た事迄は多分バレています、それから私達が全員の安否を確認した事も』
『何が言いたい?』
『今から私がしゃべる事は嘘です、紙に書く事を信用して』
そう言って顔を上げた。一瞬の沈黙の後俺はコクリと頷いた。
「私やっぱりしふぉんの所に様子を見に行きます。」
『驚いたフリをして、止めて』
「はぁ?!いや、あいつ等外に出るなって言っただろ?!」
「七海さんはしふぉんが心配じゃないんですか?!」
『私の服を着て、この帽子被って』
「え…そりゃ心配だけど、でも連絡付いただろ、こんな時間に出歩く様な事しないって。」
「無事ならそれで良いんです、来留宮先輩の所には侑俐さんか真壁さんか…凰さんが行くと思いますから。」
『じゃあせめて変装しろ、と勧めて』
「…ならせめて変装でもして行けよ、そんなスカートに乳チラしてこんな時間に出歩いたら変質者に襲って下さいって言ってるも同然だろ。」
『言い過ぎ、最低、セクハラ』
ギロリと睨まれたが、倉式は直ぐ切り替えた。
「じゃあ七海さんの帽子貸して下さい、髪も帽子で隠しますから。」
「ミニスカと乳は隠…ごふっ?!」
女が鳩尾に膝蹴りとか有り得ねぇ!皆どんだけ外見に騙されてんだよ?!少なくとも俺はこんな凶暴な女とごっこでも恋愛したくねぇ!あれか?皆Mか?Mなのか?
『私の支給携帯持ってしふぉんの所に行って下さい』
待て、この格好で?!明らかに声が出そうになるのを必死で堪えると倉式は笑顔でメモを差し出した。
『大丈夫です、スカート余裕で入るのが癪ですが何処からどう見ても女の子です!』
殴りてぇ…!しかし背に腹は変えられないか…。
『気を付けて』
かなり不本意な格好で家を出た。半分はヤケで。
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