朝起きるとメールが着ていた。差出人は館林先生、内容は兎に角1人になるなとだけ書いてあった。何かあったんだろうけど、正直聞く気にはならなかった。
「ねぇモチコ…何か皆怖いよね…これ、ゲームなのにね。」
ペチョペチョと猫ミルクを飲むモチコを眺めながら重い溜息を吐いた。と、モチコに首輪を買っていなかった事を今更思い出した。今日は休講だし、特に予定も入っていない
「私が今直ぐ狙われるなんて事は無いよね?モチコ。」
モチコの元気な鳴き声に励まされた気分になった私は、キャリーケースにモチコを入れて馴染みのペットショップへと向かう事にした。
「むぎゅ…ぐえっ…!」
バスに乗った数分後、早くも私は人に押し潰されていた。こう言う時車があると便利なんだけど、生憎私はそんなにお金持ちじゃ無いし車庫も無い。そもそも大学までは歩いて行ける距離だから遠出する時はバスや電車で充分だった。キャリーケースが踏まれない様に必死に抱えていると腰の辺りに何やらもぞもぞと嫌な感触があった。え?もしかして痴漢とか?何処のマニアック変態?!いやいや、でも誤解かも知れないし…。
「ごっほん!ごほっごほっ!」
わざとらしく咳をしてみたけど一向にその感触が離れる事は無い。鞄か何かかと思ったけど、払っても払ってもしつこく私の腰に戻って来る。何が何だか解らなくなって泣きそうになりながら必死に手を払うしか出来なかった。
「次はー南口ー南口ー。」
天の助けとばかりにバス停に着いた。人ごみを掻き分けて降りようとした時だった。背中にドンと重い衝撃が走って私は少し高いバスのステップからバランスを崩して転げ落ちた。吃驚したのと恐怖で体が震えて振り返る事すら出来ないまま後ろでドアが閉まって、そのままバスは発車した。抱えたキャリーケースの中からモチコの鳴く声が聞こえて、放心したままモチコを抱き締めた。
「モチコ…モチコ大丈夫?!ごめ…ごめんね…!」
直ぐ起き上がってお店に行くべきなのに、私の足は言う事を聞きそうに無くて、悔しさと恐怖とで涙が出そうだった。
「…おい、大丈夫か?浅木萌香。」
頭の上から声がした。恐る恐る見上げるとサングラスに帽子を被った人が私を見下ろしていた。
「ひぃやぁああああっ?!マフィア?!」
「人聞きの悪い事を言うな!俺だ!」
「あー…絵眞さんでしたか…。」
そのデカさに黒い服着てサングラスと帽子被ったら明らかに犯罪者ちっくだよこの人…。
「転んだのか?怪我は?ヒール折れたりしてないか?」
「あははは、大丈夫大じょっ…?!」
「…には見えないな。」
足がぷらぷらと宙に浮いていた。顔が目の前…あれ?何で私絵眞さんに高い高いされてるの?
「はい、じゃあ誘拐ー。」
「へぁ?」
「良いから来なさい、ちょっとここじゃ言えない話。」
担ぐ必要はあるんだろうか…?
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