冬が、やってきた。


 歩くとき、目が勝手に青いマフラーを探しているのはなぜなんだろう。
 授業中、君が発言するのをずっと待っているのはなぜなんだろう。
 なんで私は、君を見るとこんなに胸が苦しくなるんだろう?






◆咲音メイコ◆


 終業のチャイムが鳴る。
 キーンコーンカーンコーン……
「……お願いしますメイコさん、今日も勉強見てください……」
 ハクが小声で泣きついてくる。
 いつもは控えめでこういう事を言わない彼女だから、よほど切羽詰っているんだろう。


 もうすぐ、期末テスト。


「図書室は空いてないだろうから、図書館にでも行く? でも前そこでやったら怒られたしなあ……」
「……そ、そうですね」
「あーそうだ! ねえカイト、咲音さんも呼ばない?」
 カイコさんの元気のいい声が教室内に響く。
 何を言ってるか分からないから無視して黙ってたら、カイコさんが私の手を取り、
「お願い咲音さん! 私とカイト、全然授業内容理解できてなくて……みてやってくださいませぬ?」
「今日はハクと一緒にやr(ry」
「じゃあハクも来ていいから!」
「私らはどこに拉致られんの?」
「えっとねえ、私の家!」


 カイコさんと始音君で勉強することになったらしい。カイコさんが始音君のことを好きなのは、もう学年中に知れ渡っている。
 バカ二人が集まってもあれだからと、頭いい人を呼ぼうということになり。。。
 なぜか私が誘われた。


「よかった、学年上位の人がいたら心強いもん!」
 両手を「いただきます」みたいに合わせたやつを斜めにしてあごの下に入れようとするカイコさん。何やってんだこの人。
 カイコさんの家は暖房が効いていて、暖かかった。
「ココア淹れよっか」
 実を言うとコーヒーの方が良かったけど、一応うなずいておいた。
「めーちゃんはコーヒーの方がいいよ」
 始音君がいきなり言う。
「ね、めーちゃん」
「え……まあ、うん」
 なんでこいつは分かるんだ。
「じゃ、コーヒーにするね」
「……あ、じゃあ私もお願いします……」
「めーちゃんがコーヒーなら僕も」
 結局カイコさん以外みんなコーヒー。
 カバンからノートと筆箱を引っ張り出すハク。
「……メイコさん。ここが、分からないのですが……」
「ああ、ここはこうで」
 それから三時間ほど、みっちり勉強した。
 カイコさんは私を誘っておいて、一度も私に対して何も言わなかった。


 気付くともう六時。
「私夕飯つくらなきゃいけないので、帰ります」
「……私も、失礼しました……」
 ハクが丁寧に頭を下げる。
「僕も帰るわ」
「そう? それじゃ、またね」
 なぜ始音君の時だけ天使のような笑顔を向けるのだ。
 差別だ!


 始音君とは近くのマンションだから、どうしても二人になってしまう。
 ハクと別れ、始音君とは目を合わせないようにそっぽを向いて歩く。
 心拍数が上がっていく。上り坂だからか。
 最近運動してないもんなぁ。勉強ばかりで。
「はぁ……」
 思わずため息がこぼれる。
「どしたの?」
 今度は顔が赤くなっていく感じがする。
「つか、れた」
「そんな感じの顔してる」
 風邪には十分注意だよ、明後日テストだしと始音君が屈託なく笑う。
「あ、そうだ」
 赤面した頬を隠そうと、マフラーに顔をうずめる。
「私が学年一位とったら、またアイス買って」
「この寒いのに?」
「いいのよ、食べたいんだから」
 息も凍るような季節、アイスなんて食べたらお腹を壊すだろう。
 その事にやっと気づき、照れでまた赤くなっていく頬をさますために少し大きめの声で言った。
「やっぱりやめとくわ。なんかあったかいやつ買って。食べ物でもカイロでもなんでも」
「おk。じゃあ僕が二桁とったら、なんかちょーだい」
「あんたが二桁ねぇ……」
 とれるわけがないという私の思いでも察したのだろうか、始音君がふくれる。
「じゃあ一桁でいいよ」
「ぶっ」
 吹き出してしまった。
「始音君が、一桁……」
「めーちゃん、何笑ってるの!」


 みくびっていた私が悪かった。

 廊下に張り出された結果表。

1位 咲音メイコ 500点
2位 始音カイト 476点
3位 田中花子 470点
4位 弱音ハク 465点

……


「カイトすごい! 2位じゃない!」
 カイコさんの驚いた(っぽい)声がする。
 私との差は三十点以上あるけど、こいつがあんなにやるとは思わなかった。
「メイコさん! 私やりました! 4位です!」
 ハクが抱き着いてくる。
 嬉しいのか、涙ぐんでいる。
「よかったじゃない!」
「ええ! ……えと、ですから、ご褒美で」
 顔を赤らめ、
「……始音君のように、メイコさんの事めーちゃんって呼んでいいですか……?」


 おいおい、
 それじゃ私の方がご褒美になるじゃないか。


 テスト結果発表後の帰り道っていうのは、すごく清々しい。
「めーちゃん、あのですね」
「うん?」
「……私めーちゃんと同じ高校に行けるよう頑張りますから、また勉強見てください」
 くそぅ、可愛い奴め。
 思わず彼女に抱き着くと、喉でぐぇっと奇声を発した。
「……あ、始音君だ」
 前を向いてみると、確かに青いマフラーがちょんちょこ歩いている。
 するとむこうもこっちに気付いたようで、立ち止まる。
 なぜ。
「めーちゃん、僕2位だよ!」
「あーはいはい、みたみた」
「だから、ちょーだい」
 何をだこのマフラー野郎。
「めーちゃん」




 あとで分かったことだけど、
 私は始音君の事が好きらしい。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【カイメイ注意】MEIKOさんがKAITO君を恋愛感情として好きになるまで2

続編です。

何を書きたいのか自分でも分からなくなってきた…


夏休みだー!
台風はウザったいけどエンジョイするぞー!

夏に冬モノ書くってすんごい疲れます。。。

閲覧数:486

投稿日:2011/07/20 21:01:41

文字数:2,330文字

カテゴリ:小説

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  • シベリア

    シベリア

    ご意見・ご感想

    ハクかわいいいい!!
    か、カイトが2位…!?すげえええッ!www
    2桁でも難しかったんじゃないのかwwやるなぁ、カイトwうちに勉強とか教えてくr((
    うちも2桁難しい((((え………。
    う、うちはでも馬鹿でもべつにいいもんね!馬鹿らしく生きるもんn(((黙

    っていうかハクもよくやったあああ!4位すごい!
    そうか、めーちゃんに教えてもらえばいいのか…!
    めーちゃあぁあん!ヘルプ!←

    2011/07/21 00:41:52

    • 絢那@受験ですのであんまいない

      絢那@受験ですのであんまいない

      ハクは誰がなんと言おうと可愛い!
      兄さんに教えてもらうと話がすぐ脱線しそうな気がするwww
      二桁なんて私無理…
      わ、私ももうバカでアホで間抜けで運動音痴でオタクでいいもんね!

      ハクはいつも弱音ばっかりでかわいそうだから、喜ばせてみました。
      めーちゃーん! 自由研究と数学とその他いろいろやtt(ry

      2011/07/21 06:18:16

  • 瓶底眼鏡

    瓶底眼鏡

    ご意見・ご感想

    ハクさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんn(ry

    言いたいことは以上です←
    チミーさん無茶ぶり本当にすみませんでしたそしてこんなに萌えなハクさんありがとうございましたあああああああああ(ry

    P.S.兄さんはやれば出来る子←

    2011/07/20 22:01:01

    • 絢那@受験ですのであんまいない

      絢那@受験ですのであんまいない

      ハク姉への愛を感じる!!
      ハクさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんん愛してるううううううううううううううううううううう(ry

      瓶底眼鏡さんがハク姉と結婚できる日を楽しみにs(ry
      萌えてくださいました?? ありがとうございます!

      P.S. …兄さんがんばれ!

      2011/07/20 22:06:51

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