「出会ったか……」
少年は急いでいた
こちらに向かっていた、魔力
それが、少女に出会った
それは無視できないもの
きっと自分たちと同じもの
「リンファ……」
彼女はすぐ力を使う
それも大きな力を
強大で、巨悪な力
自分のそれとはまた違う力
一撃で周囲を吹き飛ばす力
「力が集まってる」
やはり戦わないという選択肢は彼女にはないか
わかっていることだが、微かに期待をしていた
今は戦っている場合じゃない
一刻も早く、女王を壊さなければ
そうしなければ、自分達が壊されてしまう
あの、変わってしまった姫に
「もし、逃げられなんてしたら……終わりだ」
しかし段々と女王の気配は遠のいていた
もう走れなくなっていてもおかしくないだろう
それだけ疲れているはずだ
なのに、変わらず城へ気配が移動している
「回復術が使えるのか……だったら得意なのは攻撃じゃなく防御か」
きっと例の魔力の主が女王の疲労を消したに違いない
願うのは、相手が攻撃も防御も得意な特殊な能力を持っていないということ
戦えば、圧倒的な力の暴力でリンファが勝つはずだ
普通ならば
だが、どうしてだろう
放っておいても、きっといつものように敵を倒して目的を達成できるだろう
女王にだって追いついて、あっさりと命令を遂行できるだろう
なのに
「ざわざわする……リンファが、戸惑ってる……」
胸騒ぎがする
楽観視できない
この目で見なくては
ずっと感じていた、段々と大きくなっていた魔力の正体を
きっと強い
力がではなく、彼が
「もうすぐ……もうすぐだ」
障害物の無い場所
先程荒野になった場所で
見えた
この距離では人がいるのかなんてわからない
けれど、少女の頭上だろう
大きな力の塊が見える
また……
また力に頼って
また力に走って
制御をしているつもりで
力の把握ができていない
大きいことは脅威だけれど
大きいから強いとは言えない
それを彼女は考えた事があるのだろうか
いや、と小さく頭を振る
それはない
考える前に終わってしまうから
考えなくても、相手が倒れるから
今までそんな必要が無かったから
でも、自分は違う
少女のような力の無い自分は、考えて、考えて
力の使い方を考えて
観察をして、思考錯誤して
ずっと見てきた身近な力
考えようとしていなくても気付いてしまった
リンファの脆さに
大きな力の陰にある弱さに
「……!」
二人のもとに着く前に、少女は力を放った
我慢の利かない彼女のことだ
予想通りと言えばそうだが、吹き飛ぶ前に一目見ておきたかったのだが
強大な力を正面から受ければ、結果は一目瞭然
もうその姿を見ることは叶わないだろう
「リンファ、女王は……」
片割れの元へ着き、声を掛ける
だが
「……」
「リンファ?」
反応が無い
爆風で生じた砂煙で見えない、彼がいたであろう場所を見つめたまま瞬き一つしないで立ち尽くしている
「リンファ、どうし……」
「レンファル……あれ……」
言われなくても気付いた
少女が指差す先
そこには、涼しい顔でこちらを見つめている青い髪の青年がいた
碧い蝶―小説版― 26話 力の強さ
前話の続き
少年視点
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