episode0-2
…風が心地良く感じる夕暮れになると、部活を終えた生徒達が、ぞろぞろと坂道を下って来る。「お疲れ~!またな~!」「おぅっ!お疲れ~!また明日なぁ…!」剣道部員たちに別れを告げて…およそ15分の道則を歩いて帰るのが、信介の日課である。まぁ、家から近い事も…受験をする理由の1つだったらしい。『さてと…国造り、国造りっと…。資源を増やさないと、兵力も増強出来ないからな。』スマホを取り出して、ゲームを始めだした。どうやら、戦国物のシュミレーションゲームようだ…。いつの頃からか…戦国武将を『カッコイイ!』と思い始めて…戦国時代の史実を読み漁り、甲冑のフィギュアを集めては…戦国の世に思いを馳せていた。『…中々、レベルが上がらないなぁ~。課金すれば一気にレベルアップするんだけど、ゲームに金掛けるのは…勿体無い気もするし、ここは我慢して乗り切るしかない!…そう言えば、昔にじっちゃんが言ってた「この家の祖先様は、名立たる名将の家系じゃ。今はその名を言えぬが…歴史が見直しされれば、その名を聞いて驚く事じゃろう。」って言ってたけど、誰なんだろう…?』…そんな事を思ってる内に家に着く…。この家は…信介が小学校に上がったばかりの時に、両親を山林事故で亡くし、祖父母夫婦の元で育てられたのが…この古民家と道場が隣合わせの祖父母の家である。
「ただいま~!」年季が入った引き戸を開けると…正面の広い座敷に置かれた、馬鹿デカい座卓が眼に入って来る。その座卓に群がる人々が一斉に振り向き…満面の笑顔で迎えてくれる。…信介はこの瞬間が大好きである。幸せを肌で感じる、そんなひと時であった。「おかえり。今用意するからね。手を洗って、早く着替えてらっしゃい。」優しい笑顔に、優しい声…。この持ち主は、祖母の妙(たえ)さん。信介の母親代わりである…いや、母親そのものである。「今日は、信介兄ちゃんの好きな唐揚げだよ~。」「あ~っ!つまみ食いしたぁ~!ねぇねぇ、お母さん!僕も食べていい…?」この可愛い姉弟(きょうだい)は…蘭(らん)、小学校4年生。髪の両側に結んだおさげが、チャームポイントの女の子。その弟の光康(みつやす)、2年生。妙さんにべっとりな甘えん坊で食いしん坊…。この姉弟の母親である市奈(いちな)は…道長と妙の長女。しかしながら、バツイチで出戻って3年…。道長の伝手(つて)のお陰も在って、今は森林組合の事務として働いている。
「…もぅ!子供達の前で行儀悪い事は止めてくれる…?あの、じっちゃんに声掛けて来て。ご飯だよって…。たぶん、お風呂出たところだから。」「わかった…!」
信介の部屋は…道場の裏にある師範部屋を、道長に我が儘を言って渋々譲り受けた部屋である。風呂はその途中にある…。
「じっちゃん!…ご飯、出来たって!」「おぅ!信介、おかえり。…お前も風呂入ったらどうだ…?」「…うん。腹減ったから、先に飯にするわ。」「…そうか。わかった。」右手を振りながら風呂を出て行く道長。
部屋に入るとベッドに、飛び込むように横たわる信介…。『今日も練習、キツかったなぁ~。まぁ最後の大会だし…。最後かぁ…あっという間だなぁ、3年間って…。今更だけど…もっと真面目に練習して置けば良かったなぁ。そうすれば、もっと早くにみんなで一緒に、全国大会行けたかも知れないな…。まぁ…自分の力を買い被り過ぎだな。』ぼんやりとそんな事を考えてると…眠気が誘い出して来た。『あ~っ!飯食わないと…このまま寝たら腹空き過ぎて…目が覚めるわ、途中で…。』そう思ってる内に…眠りに落ちた信介。静まり返った信介の部屋…。床の間の棚に…戦国武将の甲冑フィギュアがズラリと並ぶ。その端に…刀の鍔(つば)…?らしき物が飾られている。それはかなり古い物だが、一際(ひときわ)、異彩(いさい)を放っていた。その鍔が、カタッと突然、動く…。その途端、不思議な現象が起こり始めた!一瞬で辺り一面、全てが真っ白な光に包まれる!傍(そば)に置かれたスマホに、その光が吸い込まれて行く!信介自身も一瞬で引き込まれて行った…!

その体験は…深い深い渦の中に陥(おちい)る感じだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

歴史を変える、平和への戦い

閲覧数:10

投稿日:2024/03/17 16:01:14

文字数:1,721文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました