Lied~青い瞳の死神~
「Memoiren~Bruder~」


 冷たい水が全身に絡み付く。

 遠退く意識。影は嘲笑(わら)う。

 消えてしまった、記憶。

 『僕』は……『誰』?


 僕には昔の記憶が一切無い。
 名前も、年齢(とし)も……全て。
 家族が居るのかも分からない。

 そしてそんな僕は拾われ
 『闇』(Finsternis)の住民となった。


 僕は『暗殺』という世の中を生き抜く為の術を教えられた。


 始めのうちは怖かった。
 手の震えが止まらなかった。
 人の『命』を奪うなんて、人の『一生』を終わらせるなんて。

 其れでも、僕は奪い続けた。自分が生き残る為に。


 やがて、僕の感覚は麻痺していった。

 もう手が震える事も無くなった。
 目を背ける事も無くなった。
 寧ろ『楽しい』とすら思い始めていた。


 僕は……きっと、もう『光』(Licht)の中を歩けない。


 『おい、仕事だ』

 僕を呼ぶ声。僕と同じ暗殺者。
 青い瞳が印象的な男。
 家族の居ない僕にとっては、兄のような存在。

 『……相手は?』

 『とある貴族一家だ。ま、おまえなら大丈夫だろうけど
  失敗だけはするなよ?』

 今宵もまた、僕の手によって
 誰かの『命』が終わる。

 僕はもう躊躇(まよ)わない。

 これが僕の生きる途(みち)だと言うのなら……。


 『僕は堕ち続けよう。……何処までも』


 この日の空には、満月が浮かんでいた。

 僕は小刀(Messer)を振るう。


 【Blut】 まずは一人目。眠りの中の貴婦人を。

 【Blut】 次は二人目。趣味を楽しむ公爵を。


 そして、三人目……。


 雲が満月を隠して。
 薄暗い東屋。
 一人佇む少女の後ろ姿。
 実に容易い……。



 【Blut】



 淡い月影。其れは刹那の出来事。

 僕の目に映ったのは

 僕と全く同じ顔をした少女。


 『な……ん、で…………』


 少女は何かを言いかけて、息絶えた。


 嗚呼……何て事だ……。
 僕は一瞬にして全てを思い出(りかい)してしまった。

 同じ顔。少女は僕の双子の……。

 さっきの二人が僕の両親……。



 『僕は……僕は、自分の手で、家族を……!!』



 その先の事はあまり覚えていない。

 僕の偽りの名を呼ぶ青い瞳の男が近づいて来る。

 僕は精一杯、笑ってみせる。

 僕はもう現世(ここ)に存在していてはいけないから。



 『お父さん……お母さん……お姉ちゃん……』



  ボ     モ        イ
    ク        マ           ヨ
          イ          ク

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Memoiren~Bruder~

注:経験の浅いサンホラ好きの妄想です。

Liedの記憶を喪失(なく)した暗殺者のお話。
Memoiren~Bruder~(メモアーレン~ブルーダー~)は
ドイツ語で「回想録」、「弟」。

途中のドイツ語の読み方は
Finsternis(フィンスターニス)
Licht(リヒト)
Messer(メッサー)
Blut(ブルート)

またまた青い瞳って……?
さぁ、本当に誰なんでしょうね(笑)。ご想像にお任せします。

え?Blutの意味?んー、別に大した意味じゃないけど……。
ま、この場では秘密DEATH★(←オイ)

ドイツ語の読み方は一応調べてはきたんですが
もしかしたら間違えてるかもしれません。
はっきりしなくてごめんなさいです。 orz

イラスト、歌詞、曲を募集してます。
心の広い方がいたらお願いします。m(_ _)m

閲覧数:267

投稿日:2009/04/15 18:12:11

文字数:1,160文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • 梓紗

    梓紗

    ご意見・ご感想

    あうー
    あんまりパソ触れなくって
    これてない間にたくさん書いたのね><

    私もコレみたら
    創作意欲湧いてきたっw

    これで作詞やらせてもらいますw
    できたら報告にくるねーw

    待っててくれると嬉しい、なw

    2009/04/19 14:56:57

  • かのひと

    かのひと

    ご意見・ご感想

    いやはやw
    フォルトゥーナ様は、更新が早いですねwテラ遅い自分は、見習いたいです´・ω・`

    …おば;ω;ばば。感動しました!青い瞳の死神;切ない。
    でも、こういうの良いですよね。胸にくる感じが…

    2009/04/15 19:52:01

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