心の中の風景が何もかも色を失って
言葉に詰まり呼吸に躓き想いが消える
俯いても灰色で見上げた空も灰色
今日は歌えない今日も歌えない


森の中を歩いて行くと聞こえてくる
枝を伝う水葉をこぼれ落ちる雫
今日は静かだねって不思議そうに
今日は歌わないからって不機嫌そうに

それじゃあって森が木々を揺すって
朝露が飛び跳ねて大合唱してくれた
楽しげに弾む団員達が「いつか君に
お礼をしなきゃって思ってたんだ」


せせらぎを下って川沿いを歩くと
木々の隙間から鳥たちがさえずってる
今日は静かだねって怪訝そうに
今日は歌わないからって不本意そうに

それじゃあって鳥たちは身を震わせ
高く掲げたクチバシから響くオーケストラ
とても愉快そうな楽団員が「いつか君に
お返しをしたいって思ってたんだ」


川幅が広がって海へと繋がる浜のそば
風が騒いで波がしぶきを上げている
今日は静かだねって拍子抜けして
今日は歌わないのって申し送る

それじゃあって海が砂浜をドラミング
風が木々を抜けて騒ぐストリングス
とても軽やかそうな演者が「いつか君に
贈り物をしたいって思ってたんだ」


なにも知らなかった私は知らなかった
それぞれの馳せる想いもあたたかさも
森の囁きも鳥の語らいも海の呟きも
そして風は私の濡れた頬をそっと撫でた


波打ち際でうずくまって泣きじゃくって
私は小さな雫をそっと海へと還していく
雲の切れ間から陽が差して雨が止んで
「君の分まで降らせたからこれをご覧」って


凪いだ海の鏡が映す色とりどりの橋のたもとで
泣きながら笑って響かせるプレゼントソング
歌えなかったから聞こえるものが宝石のように
陽射しに照らされてキラキラと打ち寄せていく

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

歌わなくなった日

閲覧数:38

投稿日:2021/06/26 12:21:04

文字数:727文字

カテゴリ:歌詞

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