たっぷりと説明を聞かされ、色々未知の知識を植え付けられて、私は半分ヤケになって居た。何度目になるのか書類の中にある『ルールブック』を見直す。
・『∞』データテスト参加者はその証明として、各自に指定されたコードネームの入った鍵を持つ事
・テスト参加者は社から提供されたtwitterアカウントを使用する事
(既に個人アカウントを持っている場合はどちらも使用可能)
・テスト内に置いて『CP』と呼ばれるポイントを設定、出題される『イベント』を成立させる事でUP
・定期的に出題される『イベント』は、twitter上に『成立確認』と打ち込める証人が居なければイベント成立と見做されない
・『イベント』を放棄する場合定められたCPを没収、CPが足りない場合の放棄は原則として不可
「ちょっと、質問なんだけど。」
眉間に皺を寄せた七海さんが口を開いた。
「この『イベント』って、相手決まってんの?」
「決まっている場合もありますが、参加者の誰かであれば問題無いですよ?ほら、同性に告ったりとかも最近は需要ありますし。」
七海さんは何か言いたげな顔でふるふると拳を握り締めていた。敵認定したけど今だけ握手しに行きたい気分、そりゃもうガッチリと。
「期限はリコリス祭までですのでじっくり楽しんで下さい。」
佐藤さんの口から『リコリス祭』と言う言葉が出て、楽しそうにしていたしふぉんも流石にギョッとして顔を上げた。それもそうだろう『リコリス祭』は私達が通う聖リコリス学園の一大イベント。大学部も合わせたかなり大規模な学園祭みたいな物だ。お祭り自体は凄く楽しみなんだけど、問題はその開催時期だった。
「ふざけんなよ!リコリス祭って4月じゃねぇかよ!半年もバカやれってのかよ?!」
「恋は一両日中には芽生えませんよ?」
「あの…これテストですよね?」
「………………。」
「ちょ…目を逸らさないで下さい!」
明らかに明後日の方向を見る佐藤さんをゆさゆさしてみた。焦る私達を見ながらしふぉんはけろっとして言い放った。
「つまり~半年間ラブラブごっこ?」
「「冗談じゃないっ!!!」」
「あははは、君等仲良いね。」
敵認定解除しようかなぁ…むしろ今は佐藤さん達が敵な気分だから。
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もっと見る送ってくれる車に乗ってる間、私はずっと上の空だった。七海さんみたいに怒る事も、しふぉんみたいに純粋に楽しみにも出来なくて、漠然と不安を感じていた。
「それじゃ、ひおまた明日ね~。」
「あ、うん!明日ね!おやすみ。」
しふぉんが家に入るのを見届けると、自然に溜息が零れた。
「…そんなに嫌?」
余程ぼん...いちごいちえとひめしあい-7.フラッシュバック-
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「二人共暗いですよー?お通夜じゃないんで...いちごいちえとひめしあい-3.ヘタレトマト-
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「キュンてみよう!」
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