焦げ付いた唇を静々と歪ませながら
暗がりを背に群盲を見降ろしては
嘲謔する賢しらに


群衆「祝融に託つ見まくほしき君かな」「集諦！」

ゆめゆめたがえませぬように
高く積まれた丹塗の様

― 群衆の曰く
見よ！彼は素晴らしい！
彼は悉く穎脱している！
赫赫たる日輪の如き！
あがこころのきよらを！
幸あれ！幸あれ！


彼らは心を投げ打つが
全て、全てがからっぽであった

西方の遠景
霧らす心

泥だらけの黒靴の真横で
されこうべが手招きして嗤う

泡沫の恋だとも
知らずに踊り
焼き付いた御伽


ここは辰砂燻る望楼さ
窓辺にて燻り薄暮は逆巻き
背中は焦げ付いているけど
何も痛くないと
笑った貴方の
真っ赤な影法師と目合う
そんな夢境さ
「光輪紛いに深々と刺す！」
笑っちゃうな

― さわぎたてるひと曰く
「吉報！吉報！吉報！彼による空前絶後の金字塔である！」
「朱を燃しつ跋提へ向かうとのこと」
やはり！彼は素晴らしい！
まさに彼は鬼形である！
煌々炯々たる光輪！
またこころのすべてを！
「やっぱりからっぽ！」

うつろはまほしくうつろはず
あやしわらざるをえぬばかり

もう遠く消えた夢も越える道を
私はまだ憶えているから

ここは辰砂燃え盛る望楼さ
誰にも見えない青雲を泳ぐ
望むべくも開かぬ眼に
何も痛くないと
泣いた貴方の
真っ赤な影法師と目合う
そんな夢境でも
抱きとめる

ずっと


思うに

創り表す者として

それは本望だろう