少し天気が寒くなり、雨も減ってきた頃。
 街はいつにもまして活気にあふれていた。
 いつもとは違うさまざまな色の光で照らされている街やお店。
 街灯や店の電灯はカボチャ模様に飾られている。

 10月31日。
 ハロウィン。

 ヨーロッパで始まったその祝いは今では日本でも有名になっている。
 特にこの街は日本の中でも西洋の文化が強い。
 そのため、ハロウィンは街規模で行われる。
 人々は一週間前から当然のようにハロウィングッズを身につけて歩き、お店もハロウィン仕様一色に染まる。
 まさに街全体で一つのハロウィン祭りだ。
 それほど大きい街ではないが、この祭りを目当てに来る旅行客もいるほどで、この街のハロウィン祭りの有名さがよくわかる。
 もう生活の習慣の一つとも言えるだろう。
 女性は街を歩きながら左手につけられた腕時計を覗いた。
 女性は腕とお腹を丸出しにした赤い服と短い赤いスカートという余りにラフな赤一色の服装をしている。
「10時まであと20分かー」
 夜10時からのハロウィン祭りを考えながらその茶色髪の女性メイコは呟いた。
 目にかかった髪を横に掃う。
 実は彼女には一つの秘密がある。
 秘密というほど秘密なことでもないが。
 彼女は確かに女性である。
 しかし、人間ではない。
 人間に果てしなく近いものである。
 だが、それを聞いたところで驚くものはほとんどいないだろう。
 では、彼女は何者なのか?
 そう聞かれたら、おそらくほとんどの人がこう答えるだろう。
 ボーカロイド、と。
 とある会社が作りだした、非常に高性能な歌を歌うアンドロイド。
 試作機が何個か作られ、実験を繰り返し、そして、完成としての一号機、一番最初に作られたのが、彼女、メイコである。
 その完成度はもはやアンドロイドを逸脱していた。
 人と全く変わらない見ため。
 完璧なまでの自己判断能力。
 そして、泣き、笑い、飲食までもするという人間らしさ。
 もはやアンドロイドと呼ぶには惜しいほどである。
 そんな彼女はとあるマスター、飼い主とでも説明すべきだろうか、その人の家にいる。
 メイコのマスターの家には他に同じボーカロイドのカイトもいる。
 彼女たちの仕事はマスターの作った歌を歌うこと。
 その歌はネットに乗り、そしてアルバムとして発売される。
 メイコはまさに今、一躍人気なネット歌手といったところである。
 マスターはと言うと、そのアルバムだけで食べていけるだけ稼いでいるが、バイトをしている。
 まあ、そのバイト先に好きな人がいるからだが……。
 そして、時には恋愛で悩んだり苦しんだりしたマスターはメイコに泣きつき、メイコはマスターをなだめている。
 
 そんな彼女は今日をすごく楽しみにしていた。
 今日はこの街で最大の祭りのハロウィン。
 そして11月5日、5日後はメイコの誕生日。
 そのこともあって、同じボーカロイドであるミクやそれに今年生まれたリンとレンも今日家に来てハロウィン祭りに参加する。
 メイコにとって、ミクやリンレンは可愛い妹や弟のようなもの。
 もう彼女たちのための衣装も用意していた。
 メイコは胸を膨らませて家に向かうのだった。

 ガチャ。
 家に着いたのは10分後ぐらいだった。
「ただい…」
「おかえり!」
 メイコが言い終わらないうちに飛びついてきたのは黄色い髪の少女リン。
「はいはい、リンちゃん、ただいま」
 そう言って頭をなでると、リンはまたぎゅっとメイコに抱きついてきた。
「ほら、メイコの邪魔になってるだろう」
 そう言うと青い髪をした青年カイトがひょいとリンを持ち上げた。
「え!? わ!?」
 いきなりのことにリンは驚き慌てる。
 カイトはリンを他の人達のところまで持っていき、ゆっくりと下ろす。
「リン、迷惑だろ!」
 リンと瓜二つの黄色い髪の少年レンはリンにそう言った。
「だ、だって……」
 言い訳をしようとするが先が続かず、リンは黙り込んで頬を膨らます。
「お帰り」
 少し困ったような顔をし、頭をかきながら部屋にようやく入ってきたメイコに、緑色の二つ結びのミクが明るく言った。
「うん、ただいま」
「じゃあ、時間もそろそろだしみんな準備しようか?」
 そう言ったのはマスター。
 若い女性であるマスターはそう言うと、衣装を取り出した。
「それぞれ着替えてきてね」
 その一言に全員が元気よく返事した。
 
 5分ほどすると全員が着替え終わっていた。
 幽霊のミク。
 可愛いカボチャお化けのリンとレン。
 ゾンビでなおマフラーを巻くカイト。
 ドラキュラのマスター。
 そして…………。
 大きな鎌を携えた死神のメイコ。
 余りに似合いすぎて、全員が恐怖に震え上がった。
「きょ、今日、ハロウィン祭りに行くの、や、やめようか……?」
「う、うん……」
「そ、そうだね、私も何か熱っぽい……」
「何か寒気がするしな……」
「ハロウィン言っちゃうとアイス食べられなくなるから……」
 マスターの震えた声に全員が賛同する。
 だが。
「ん? ハロウィンいかないの? ちゃんとした理由があれば言っていいのよ。別に何もしないから。うん、何もしないはずだから。 何かある?」
「「「「「いいえ、ありません、メイコ様!」」」」」
 メイコの一言に、全員が必死に首を横に振るのだった……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ハロウィン  2009/10/31

ハロウィン!


ヘルフィヨトルです
最近あまり投稿できてないですね……。
まあ、それはさておき。
今日はとりあえずハロウィンを祝して書きました。

みなさんもお気づきと思いますが、今回はルカさんが出ていません。
この時点ではまだルカさんは生まれていない設定ですw
どうでもいいことをすみません


世界のハロウィンファンにワルキューレが微笑むことを

閲覧数:324

投稿日:2009/11/23 11:34:23

文字数:2,232文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • Hete

    Hete

    ご意見・ご感想

    ああああああああああ・・・
    想像すると、カイトやリンレンはまだ笑えるんですが・・・

    メイコは・・・・



    怖い・・・

    2009/11/01 22:22:07

  • ヘルケロ

    ヘルケロ

    ご意見・ご感想

    >奏羽さん
    さすがといわれるほどうまくもないですよ。
    楽しんでいただけてよかったです^^
    何時か全員絵にしたいですね

    >犬寺さん
    楽しんでいただけてうれしいです
    文才なんてないですよw
    短いほうがいいとも限りませんよ。
    私はただハロウィンではそんなに長くは描けなかっただけです^^;

    >Errerさん
    はじめまして
    リアルといってもらえてうれしいです
    出来るだけ現実にありそうな設定を目指しました^^

    2009/10/31 22:22:29

  • ヘルケロ

    ヘルケロ

    ご意見・ご感想

    >ゆっきーさん

    コメントありがとうございます^^
    そんなに文章力高いでしょうか?

    カボチャお化けのリンとレン
    私も正直見たいです>w<
    それにみたいという人もいたので、友達に頼もうと思っています^^
    完成はバレンタインを過ぎてしまうと思いますが、待ってくれるとうれしいです。

    ブックマークありがとうございます^^

    2009/10/31 18:40:46

  • ゆっきー

    ゆっきー

    ご意見・ご感想

    文章能力たけー!すげー!\(゜ロ\)(/ロ゜)/
    季節感を上手に描写してますねー。
    てゆーか‥‥‥‥‥‥
    >>可愛いカボチャお化けのリンとレン
    見たいwwww超見たいww想像したら可愛すぎて死んだ(>_<)
    良い作品でした。ブクマします(*^_^*)

    2009/10/31 17:08:35

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