身支度を整え、階下に下りる。階段の下にはジジイが待ち受けていた。
「・・・ネル、少し話がある。こちらへ来なさい」
もちろん、無視。なんで親じゃないお前に命令されなきゃならないの?
「あたし、これから出かけるから。」
私はそう吐き捨てた。途端にババアの顔色が変わる。
「はあ!?なに言ってるのよ?いま帰ってきたばかりじゃない!!」
「あ、こら、ネル、待ちなさい!!まだ話は終わってないj(ry」
私は勢いよく扉をしめた。ため息をつくと、再び駅に向かって歩き出した。
~巡り廻るナイフの物語~ 第1章「不良少女」 第2話
駅から何個か電車を乗り継ぎ、あいつとの待ち合わせ場所に着いた。ただいまの時刻、9時半。すでに約束の時間より1時間半も遅れている。
できればあいつが怒って帰ってしまっていることを願う。しかしそんな淡い希望を描いても、あいつがこんなことでは帰らないことを私が一番よく知っている。
あいつの名前は、ナス。
といっても出会い系で知り合ったので、この名前は仮名である。
あいつとであったのは、1ヶ月前。
今まで友達の家に泊まったりしていたが、さすがに金もそこを尽きてきた。私と援交してる人はこのとき4人いたが、どういうワケか皆既婚者だった。
だから会えるのはよくて1ヶ月に2回程度だった。一回あってしまえば5万くらい手に入るのだが、生憎この月は会える人がいなかった。
だから代わりの金ヅルを探して、食いついてきたのがナスだった。
そして、いざ会うことになったのだが、最初に会ったときにまず身の危険を感じた。
和服を無理やり洋風に仕立てたような出で立ちに、私と同じくらいの長さの紫の髪。いっしょにいるのもはばかられる風貌だった。(周りの人にもかなり引かれていた)
私は駅構内へ引き返そうとした。しかしあいつは目ざとく私を見つけ、近寄ってきた。
「やあ、君がスリープさん?へえ・・・・超かわいいですな~~あ」
「は、はあ・・・」
ちなみにスリープとは私のネット上での仮名である。
周りの視線が私に注がれる。
「かわいいのに・・・」
「あいつ男見る目ないねwww」
「キモイ~無理だわw」
そういうヒソヒソ話が交わされていた。
「と、とりあえずここではなんなので・・・移動しましょうか?」
「ん?あ、いいよ~お 超もえ~~」
一昔のオタクみたいなセリフ吐いてんじゃねーよ、と言う言葉が喉まで出かかったが、なんとか持ちこたえた。
私とナスは、とある喫茶店に入った。
席につくと、私は切り出した。
「まず、契約の確認なんですが・・・週2日。金と、水曜日。手つなぎ、抱きしめ、キス(顔以外)。ラブホはオプションで一回1万5000。これで週8万でいいですか?」
こいつも酔狂なやつだ。たった週2回でこんなに金が払えるとは・・・
「あ、うんうん、全然それでいいよ~お、うん」
キモイ。
「じゃあ、コレで良いですね・・・私は一ヶ月私用でいけないので・・・来月からで。では私はこれで」
逃げるように喫茶店から出る。
そうして今に至る。
駅前広場に出ると、あいつはいた。
こちらに気づくと、手を振ってきた。キモイ。
私はため息をつきながら、あいつの元へと向かった。
続
コメント1
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ご意見・ご感想
日枝学
ご意見・ご感想
読んでますよー! いいですね、ネルのキャラがいい味出してます。危うい綱の上で不安定に、けれど強く生きているような印象を受けます。ここから作品がどう展開し、ネルがどうなっていくのか、期待しています。執筆、ファイトです!
2011/08/22 00:42:53
苺ころね
@日枝学さん
いつもいつもありがとうございます。
2シリーズ掛け持ちですが、がんばります?
2011/08/22 19:04:00