ミクの長い睫が揺れた。
 ゆっくりとそれは瞬き、ゆっくりと瞼が開く。大きな瞳が光を宿し、カイトの事を見つめてきた。
「カイト。」
花のような唇が、カイトの名を呼び、白い腕がゆっくりと、カイトの頬に触れた。
 まだ体温の戻らない冷たい指先がカイトの頬をなぞり、首筋を撫でる。驚いた表情のカイトにミクは嬉しそうに微笑んだ。
 意識を取り戻したミクは殺されかけたと言うのに、嬉しそうだった。殺されかけたそのことに、気が付いていないのかもしれない。とカイトは苦しげに顔を歪めた。
「俺は、君を殺そうとした。」
「ええ。」
「毒を、君に盛った。」
「ええ。」
カイトの言葉にしかし、ミクは嬉しそうに微笑んだままだった。
「でもカイト。貴方が私の全てを手にしたいほど好きだって、愛しているって言ったのは本当の事でしょう?」
だから、いいの。
 カイトが自分を愛している、そのことの前では全ては瑣末な出来事だ。そう言ってミクは微笑んだ。
 純粋無垢なような、それでいて娼婦のように艶めいた笑みだった。
「私の全てが欲しいのでしょう?」
だったら、捕まえて。
 そう言ってミクは微笑む。まるで毒のようにそれはカイトを絡め獲る。甘く、匂い立つような美しいミクの眼差しに、カイトの思考は侵されてゆく。
 ミクを自分が造った閉じた世界で育ててきたと信じていた。しかし、彼女の柔らかな蔓に絡め獲られていたのはカイトだったのかもしれない。

 もう、逃れることは出来ない。

 カイトはミクに手を伸ばし、誘うようなその唇に触れた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

鳥篭と蔦10~カンタレラ~

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
捏造もいいところですね、ホント。
こんなの、カンタレラじゃない~!と思われた方、ごめんなさい。

格好良いカイトを書きたかったはずなのに、へタレになってしまった。
メイコに「このへタレが!」と言わせたくなりました。

ぬるいですが性的描写があることについて。
直接的な言葉は避けたつもりだけど。どこまで書いて良いものやら、、、?
と考えつつ進めてみました。
これぐらいだったら大丈夫なのかな??


原曲様・黒うさP 『KAITO・ミク』カンタレラ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2393562

閲覧数:725

投稿日:2009/06/15 20:15:38

文字数:654文字

カテゴリ:小説

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  • 儚姫

    儚姫

    ご意見・ご感想

    はじめまして。
    カンタレラが好きで、お話を拝見させていただきました!
    素敵なお話で思わず目が離せなくなりました。
    素敵なお話をありがとうございました。

    2009/06/23 23:19:46

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