成り行きで引っ張り回された挙句訳解らない人まで出て来て、正直私の頭は働かなかった。と言うか考えるのに疲れていた。天城会長はノートを取りながら眉間に皺を寄せ考え込んでいる。一先ずこの菖蒲さんに話を聞いてみるべきかな?

「あの、結局どう言う事なんですか?菖蒲さんは雉鳴さんの上司で、雉鳴さんは仕事の一環としてゲームに参加してたって事ですか?」

菖蒲さんは少し考えてからノートを取っている天城会長に顔を向けた。視線に気付いたのか会長も顔を上げる。

「君はどう思います?天城君。」
「…推測ですが…人材判断ではないですか?危機管理、情報管理、冷静さ、特に男性参加者は不自然な位何かしらのトラブルに巻き込まれてますから…臨機応変な対応能力も含めて監視していたのでは?」
「中々良いですね。少し見習いなさい、そこのプランクトン。」
「むぐー?!むごごっ!」

ガムテープでぐるぐるにされたままの雉鳴さんが何か言いたげにもがいていた。菖蒲さんが溜息を吐いて貼ったガムテープをべりべり剥がすと、雉鳴さんは痛かったのか少し涙目になっていた。

「まぁ、掻い摘んで言ってしまえばそうですね、このプランクトン脳の仕事は本来単独で誰にもバレる事無く遂行されて然るべき物でしたが、それをまぁ、早々にバレるわ、刺されるわ、挙句子供に翻弄されて帰るのを渋るわ…減俸どころかゴミ以下ですね。」
「笑顔で全否定してますね。」
「当然ですよ、いざと言う時感情に流されていては出来ない仕事も世の中には溢れているんですから。」

そう言いながら菖蒲さんはポケットから何かを取り出した。見た感じ家の鍵。

「…推薦は私から取り下げました、さっさと部屋を片付けなさい、明日の朝一で報告に出勤して貰わないと困るんですよ。」
「え…?」
「駄々をこねる様なプランクトン人材を他所に回す程ウチは暇でも恥知らずでもありませんから。」

そう言って踵を返すと菖蒲さんはスタスタと出て行ってしまった。雉鳴さんはぽかんとしたまま鍵を見詰めて立ったままでいる。

「あれ…?」
「えっと、残って良いよって事じゃないですか?解り難かったですけど。」

少しの沈黙の後七海君が雉鳴さんの鳩尾を蹴った。

「ごふっ?!」
「ちょ?!何やってんの激しい子ね…。」
「馬鹿馬鹿しい、俺帰りますよ?お師匠、先輩達も。」
「そうだな、行くぞ鶴村、馬に蹴られる。」
「待ってって!もう!」

引き摺られる様に外に連れ出された私は、ずっと気になっていた事を口にした。

「『お師匠』って何のお師匠なの?女の子の口説き方とか?」
「そんなの聞く程プライド捨ててませんので。」

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いちごいちえとひめしあい-141.怖いヒト-

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投稿日:2012/10/16 20:01:32

文字数:1,101文字

カテゴリ:小説

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