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 男は高校に入学し、初めて好きな人を見つけた。それは幼なじみの香織だった。香織を見るだけで男は幸せな気持ちになるが辛くもあった。
香織とは同じクラスになれた。しかし、挨拶も交わすことはなく、ただただ想いを募らせるばかりの毎日。

 そんなある日、初めての席替えをすることになり、男は教卓の目の前という誰もが嫌がる席を引き当ててしまう。
憂鬱な気分のまま周りを見渡すと、右隣には香織が座っていた。全く予想も期待もしていなかった展開に戸惑う。
そこに追い打ちをかけるかのように、香織も男の方を向き、目が合ってしまった。
香織は男に向かって、(引きつった)笑顔で話しかけてきた。数年ぶりのまともな会話だった。

 帰り道、男はスキップを踏みたくなる気持ちを必死に堪えて家路についた。

 部屋の中でも香織の声と笑顔が脳内でループする。
何度も何度もベッドの上で悶える。
「これは運命なのかもしれない」
ずっと疎遠だった幼なじみと、同じ高校で同じ教室、席が隣。

 それから数日が経ち、香織との関係は友達と呼べるにまで回復した。
席が隣という事で、朝の挨拶も自然と交わせるようになり、香織が教科書を忘れてしまった時は心の中でガッツポーズをしていた。
なんだか昔に戻ったような幸せな毎日を送っていたが、男の中には今年の卒業式の記憶がまだ根強く残っていた。
「あの時の告白はどうしたのか」と聞きたかった。しかし、やっとここまでまた仲良くなれたのに、またギクシャクするのは嫌で、葛藤していた。

 そんな普通の高校生活がいつまでも続くと思っていた男は、きっと浮かれていたのだろう。
突然、席を移動することになってしまった。男の列の1番後ろの生徒が目が悪くなり、黒板が見づらいので変わってほしいとの事だった。
香織とは席が大きく離れてしまい、男は絶望した。
自室で宿題をしている時も、香織の事が頭から離れず、悶々とした毎日を過ごしていた。

 席を移動してから数日が経ち、ふと席が隣だった時の事を思い出してしまう。
あの時は運命とか訳のわからない事を考えていて、浮かれていた自分を思い出してしまったのは恥ずかしかった。
しかし、あの事は本当に運命だったのかもしれない。そう考えるようになり、どうせ香織とは席が離れてしまったんだ、ほとんど会話ができない毎日をダラダラと過ごすぐらいなら、いっそのこと告白をしてしまおおう。
失敗しても友達に戻るだけ、そう自分に言い聞かせ、逃げたくなる気持ちを抑えた。

 教室に居る時の香織は、いつも誰かと喋っていた。しかし、今日は仲の良い友達が欠席だったようで、香織は暇そうにしていた。今しかチャンスはない。
そうやって自分を奮い立たせなければ、気持ちとは反対に足は逃げ出してしまいそうだった。
なんとか香織を呼びだす事に成功し、一安心して男は席に戻った。

 こんな時に限って時間の流れは早く感じてしまう。
放課後になり、香織を呼び出した場所へと急いで向かった。

 なんとか告白は成功し、香織も男と付き合うことに頷いてくれた。
夏の香りが漂ってきそうな7月7日、夕暮れの出来事だった。


 あれから数か月、男は香織と順調で健全なお付き合いをしていた。
香織は学校で目立つ存在ではなく、かといって地味という訳でもない。ただ普通に可愛らしく、普通のお喋りが好きな、普通の女子高生。
しかし、そんな普通な香織に普通ではない出来事が起こってしまった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

高校生・引っ越しまで

プロットのようなもの。

内容は高校入学から香織の引っ越しまで。
文章量としては高校生編が一番長いです。

ツッコミどころがあれば、ドンドンくださいm(__)mとても助かります。

閲覧数:104

投稿日:2016/05/16 16:55:00

文字数:1,440文字

カテゴリ:歌詞

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