episode0-3
「もぅ~っ!殿!…いい加減、起きて下され!周りの者に示しがつきませぬぞ!…まったく。」体を激しく揺さ振って、起こすのに必死なようだ…。「…うんん~っ!…あれっ?…寝ちゃってたか。…早く、飯食わないと…腹減った。」「やっと起きたと思ったら、今度は寝言ですか!」信介が眼を擦りながら…「濃巳…?なんで俺の部屋に居るの…?あれっ?…眼鏡は?…お前…眼鏡外すと、以外に美人だよなぁ~。」「い、いきなり!…何を言い出すのですか…家臣達が居る前で!あぁ~っ、もぅ~っ!寝言にもほどがあります!…いいですか!良く聞いて下さいませ!私は、貴方の妻の濃ですよ!…解りますか!これから~皆を集めて~当主としての評定がありますので~眼を覚まして下さい!もう、刻限(こくげん)が過ぎていますので、このままお連れ致します!」この言葉を聞いた途端、固まる信介。…堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒(お)が切れた濃殿は…信介の首根っこを掴んで、大広間へと引き摺(ず)り出す…。突然、固まってた信介が…「え~~~~っ!…今、妻って言った?…当主って何?…なんで皆さん、着物なの?…ここは何処なの…?」信介がつべこべ言っている内に…大広間に着いた濃殿は、ポ~ンと信介を大広間の玉座(ぎょくざ)に、放り出した…。ガヤガヤしていた大広間が…信介の出現と共に静まり返る。状況が分からないまま、恐る恐る周りを見渡すと…およそ100名に及ぶ武将達がズラリと居並び、深々と頭を下げる姿を見た時には…権力の頂点に立ったような錯覚に陥(おちい)った…。すると、武将達の筆頭に座る者が…頭を下げつつ、申し上げ始めた。「…この国の未来を憂(うれ)うが為、一言、言上致したく存じます…。」『一体…ここは何処なんだ?…確か、学校から帰って…ベッドに横になって…起きたら、この状態だ。…今は、とにかく…落ち着け、落ち着け!…一旦、冷静になって落ち着こう。この状況を、先ずは情報収集しないと…。』キョロキョロと辺りを見回し始める信介…。『殿!…殿~!前を向いて!』濃殿が信介の様子を見て…家臣の言上を聞くように、差し向けようとするが、全く気が付かないので…槍で信介の尻を突っいた。「イっ、イっ~~タぁ~~い!」信介の悲鳴が響き渡る…。槍を手にした濃殿が仁王立ちして…「家臣がこの国を案じて…己が首を掛けて…命懸けで言上しているのに…その態度はなんじゃ~っ!情けない!…私がこの不甲斐ない夫を成敗して、私も自害致します…。」そう濃殿が言い放った途端…慌てた武将達が、濃殿と信介の間に雪崩れ込む。「お方様!…どうか、どうか!お気持ちをお鎮め下され!」武将の1人が濃殿をお諫(いさ)めする…。「安心せい…。狂言じゃ。余りに不甲斐ないので…眼を覚まして欲しくての…。せっかくの言上を台無しにしてしもうたの。許せ…。」槍を家臣に手渡すと…「すまぬが、今日はこれまでにして貰えぬか…。追って、新たな評定の日を伝える。言上もしかと、受け止めるつもりじゃ。沙汰を待て。」「はっ!」一同…揃って挨拶するとぞろぞろと帰って行った。「…大した傷ではなかろう…。ここは良い、後は私がやるから…。下がって良いぞ。」侍女達を下げさせ、濃殿1人で信介の手当てをする。「…申し訳ございません。あの場は…あのようにするしか、治められないと勝手な判断を致しました…。言上は…武士が腹を斬る覚悟を持って、目上の方に意見を申し上げる儀式の様なものです。しかし、例え…当主に対して意見を申し述べたとしても、命を掛けるほどの事でしょうか…?と私は思うのです。この国を良くしょうと考える家臣が、死ぬような事が在っては…この国は滅びます…。傷は、大した事はございませぬ。さぞ…痛かった事と思います。申し訳ございません…。」濃殿が…座って両手を前に揃えて、深々と頭を下げる。『…こんなに頭を下げるなんて…。この人の真剣な思いが伝わって来る…。取りあえず、未来から来た事を…んっ?…ここが過去だと証明出来て無いが…まぁ適当に誤魔化(ごまか)すしかないか…。』「…まぁ突然な事で、ちょっと驚いただけですから…。あんな声を上げて、申し訳ない…。」信介が頭をペコリと下げる。「…他人行儀な事を申すでない…。其方(そなた)と私は…その…つまり…夫婦なのだから…。何でも相談しても…構いませんので…。」少し照れたように…頬を染めて話す濃殿。『…まだ高校生の俺が…妻を持つなんて…許されていいのか…?それも…濃巳にそっくりな…こんな綺麗な女性と夫婦だなんて…。いかん、いかん!…今は余計な事を考えるな!この時代の手掛りになる事を探さないと…?…あっ、そうか…その手が在ったか…!』「あの…年号は、ご存知でしょうか…?」「はい。…確か、天正2年になるかと、存じあげまする。…年号がどうか致しましたか?」濃殿がキョトンとした顔で信介に話す…。「いや…ちょっと確認したまでの事です。」『よしっ!年号が解かったぞ。…天正2年と言えば、織田信長の全盛期だ。こんなところで…昔に読み漁(あさ)った史実が役に立つとは…。これでひとつ謎が解けた…。だが…どうして?何故?何の為に?何が目的に?…この時代にタイムリープ…?したのか…?全く解からない事ばかりだ…。しばらく…様子を見るしかないか…。…俺はここで生活していけるだろうか…。』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

歴史を変える、平和への戦い

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投稿日:2024/03/17 16:04:29

文字数:2,204文字

カテゴリ:小説

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