これからしばらく、仲間たちの出番はない。
何せ、リンとレンが出るのは全十五試合の最後、十五試合目なのだから。途中から見ているのにも飽きたリンとレンは、メイコに言ってドームの中を探検してみることになった。
「レン、あっちに行って見よう」
と右の通路を通って、
「リン、こっちが面白そう」
と左の扉を開き、
「怪しいっ!!」
とわけのわからないデータをいじった。おかげで、すっかり管理システムにこっぴどく怒られることになったが、それでも二人の探検は終わらない。
「リン、こっちに怪しげな扉がっ」
「ぬぁぬぃっ!?」
只今、この二人のテンションは最高潮に達しておりますから、ついて行けない方はスキップをご使用下さい。
兎に角、リンが指差したほうにある扉は確かに他の扉とはデザインの違う、怪しげな扉であった。
「入っちゃう?」
嬉しそうにリンが言う。
「入っちゃう?」
楽しそうにレンが言う。
「入っちゃおう!」
二人は愉快そうにドアを開いた。
「わ、わぁっ!…何なんですかぁ?」
中にいたのは長い銀髪を黒と青のリボンで結んだキレイな女性で、少なくとも今は一人きりらしく、酷く怯えたような表情をしていた。いきなり入ってきた二人を、泣きながら情けない声で向かえ、部屋の奥からのぞきこむように二人の姿を確認した。しばらくデータを確認して二人の身元を検索していたタようだったが、初対面なので検索してもヒットするわけがなく、女性は二人に尋ねた。
「で、デルさんの…お知り合い…ですか…?」
あまりにも空気が落ち込んでいるので、ついリンとレンは声を合わせてとっさに嘘をついてしまった。
「はい、そうですっ!」
すると女性はホッとした様子で少し優しい笑顔になり、頬を少し赤くした。
女性は薄幸美人、と言う感じで、白い肌は血色が悪いらしく青白く、その赤い瞳は毒々しいまでの鮮やかさだ。白いのか銀色なのかもよくわからないようなその長い髪は、透き通ったガラスか、ダイヤモンドのように見えた。
「デルさんたら、お友達がいらっしゃるなんていってくれなかったから…」
どうやら、彼女はそのデルという相手と一緒にいるらしい。、
そこへ、ドアを開くものがあった。
「ただいま。流石に芋焼酎は売ってなかった――誰だ、それ?」
「で、でで、デルさん!お友達じゃないんですかぁ?お友達だって言うから中に入れたのに…」
「…誰だ、お前ら?」
「えっ、あ、その…。スミマセンでした、人違いでしたァ!!」
二人は走って部屋を出た。
何故なら、二人を見るデルの目があまりにも酷く冷たく、早く出て行けといっているのがよくわかったからだった。兎に角さっさとその場を離れて、ドームのほうに戻る。その道の途中、リンはふとあのデルと言う青年を見たことがある、と思い、いつ見たのかと思い出そうとしてみたが、思い出せなかった。絶対にどこかで見ているのだ。それも、随分最近に。いつだったか――。
「リン、何やってんだよ?」
「うーん、さっきの人、どっかで見たような気がするんだけどなぁ…」
「どっかって?」
「わかんないからどっかなの!」
「はぁ?」
『――ソレデハ、第十五試合ヲ開始イタシマス――』
機械的な音声にもやっと慣れてきて、リンとレンは颯爽とフィールドに出て行き、相手を見た。ああ、大したこともなさそうなただ大柄なだけの二人組み。
「初試合にはもってこい、だよね?」
「準備運動になるかどうか、ねぇ?」
二人は顔を見合わせ、方に手を置いてぐるぐると腕を回した。右と左、余裕をかまして足もぐりぐりと回してみた。
『――第十五試合ヲ開始シテクダサイ――』
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