二人は先程まで女性が寄り掛かっていた家の脇まで移動して、二人でしゃがみ、少女が女性の声に耳を傾ける。女性はそんな少女の様子を見ながら歌い出す。

(小さな月の男の子 忍者の子供の肩の上 小さな子リスと肩の上 忍者は走る 風のよう 川を越え 森を抜け 綺麗に光る花畑 二人と一匹大冒険 そろそろ夜が明ける頃 ま〜るい大きなお月様 聞こえて来るよ 呼び声が 月の子供を呼ぶ声が 帰っておいでと月の声 忍者の子供に宝物 また逢う約束と 半月見たいな宝石を 必ず逢いに来るからと・・・)

ここまで歌うと、向こうから女性が駆け寄って来た。

「稲亜(いあ)ちゃん‼︎」

少女が嬉しそうに声を上げる。

「お母さん‼︎」

「良かった見つかって、ケガして無い?ごめんね一人にして」

お母さんが謝りながら、稲亜ちゃんを抱きしめる。稲亜ちゃんも抱き返しながらお母さんに一生懸命に喋る。

「ケガして無いよ。それにお姉さんが、一緒に居てくれたから大丈夫だったよ」

稲亜ちゃんに言われて、初めて女性の存在に気が付き、そして、その女性が娘と一緒に居てくれた事にやっと気付き、慌てて女性に向き直り、お礼を伝える。

「ありがとうございました。すいません、私が少し目を離してしまった内に、娘が迷子になってしまって。ご迷惑をお掛けしました」

そう言って頭を下げた。

「いいえ、迷惑なんて。私も楽しい時間を過ごせましたから」

そう言って女性は、笑って稲亜ちゃんに声を掛けた。

「稲亜ちゃん。歌を聴いてくれてありがとう。久しぶりに楽しくこの歌を歌えたよ」

「うん。私も楽しかった。また逢えたら歌の続きを聞きたい」

「ええ。喜んで」

女性が笑って稲亜ちゃんに頷く。稲亜ちゃんのお母さんが言いました。

「稲亜ちゃん。そろそろ行こうか」

「うん」

稲亜ちゃんが元気に返事をします。稲亜ちゃんのお母さんが、稲亜ちゃんの手をしっかりと握り、歩き出します。稲亜ちゃんもお母さんの手を握り返しながら歩き始めます。お母さんが振り返り、振り返り頭を下げ、稲亜ちゃんはこちらに手を振って離れて行きます。女性もそんな二人に手を振り返しながら言います。

「またね」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月の物語 [小説] 始まり2

閲覧数:169

投稿日:2016/08/19 14:05:30

文字数:991文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました