客星は地上にふたつ 赤く輝くふた粒の星
石道を跳ね回り
寝過ごした八月の熱 俄かの雨を潜り抜けては
夕景の琥珀へ飛び込む

連星の軌跡が日々を 落書きのようにかき混ぜるのを
鳥たちは見ていて
「ずっと 一緒に居ようね」 夏の終わりに呟いたこと
…胸の騒ぎが そうさせたのか


さざ波立つ白い毛並みが
反射した星の光
確信が汗と滴り
草原が少し揺れた

別れの仕草は 僅か


残光 木々に木霊して 見れば私は夜に一人きり
伸ばした指をあざ笑うように
ただただ星が照らしていた

煌めく夜の片隅で 何も知らないままのラジオから
流行りの歌が流れていた
"La La La"
"Fly me to the romantic moon!"


暗澹に肩を委ねて 暗くぼやけたひとつの星は
溜息で輪を描き
寝過ごして季節が巡る 明かずの雨も乾きだす朝
君の便りが 扉をノックした

電信は月面を離れ 一夜を待たず惑星を騒がす
…忘れないあの夜
俯いて帰る家路を 迷わぬように照らし続けた
月の明かりを ふと思い出した


"火星に花が咲いて"
"木星に春が来たら"
そんな妄想を
確かめる術など 無いのだと

聞かされ 生きるうちに
惑星は変わってしまった
"自分の目で確かめろ"と
掌を返して理不尽を告げる


合図もなしに駆け出して 息もできない程に追いかけて
君を捕まえ はい交代
それはいつかの夜の続きだろうか

鳥より早く目を覚まし 赤く微かな熱を確かめて
夜明けを叩く拍動がいま
秒を読む声に変わっていく


星たちは蒼穹の果て 静かの海で逢えるだろうか
無邪気なままの喝采に乗せ 黎明はやがて染まっていく

騒がしい夏の片隅で なぜか訳知り顔のラジオからは
懐かしい歌が流れていた
"La La La"
"Fly me to the romantic moon!"

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

[静かの海で逢いましょう] 歌詞

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投稿日:2020/04/05 08:14:55

文字数:786文字

カテゴリ:歌詞

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