*Miku side






「え?今日も…会えないの?」

ケータイを肩と顔ではさみながら、クローゼットを開けて服を選んでいた所に舞い込んだのは、もう珍しくないドタキャンだ。

仕方ないのかもしれない。
あっちは仕事もしてて、こっちはまだ呑気な大学生なんだから。

「ごめん…ちょっと会議が入って」

「…うん、分かった!頑張って!」

それにしたって、もう2週間ほど会っていない。
やっと決まった就職に、やる気を出すのは良い事だけれど。

私がほったらかしになってるじゃない。
一つのことを一生懸命する、そんな所も好きなんだけども。

そうだ、夜がふけたらカイトを迎えにいこう。






*Luka side






「カイト?どうしたの?ミクと約束あったんじゃ…」

「俺はルカが好きなんだよ」

カイトとは、二週間くらい前から付き合っている。
親友のミクの男であると知っていながら…だ。


思い返せば、二年前。
大学のサークルを通じて仲良くなった3人の中で、ミクとカイトは付き合い始めた。
私は高校生のときからカイトが好きだったのに。
ミクの為だと言い聞かせては、嫉妬を抑えてきた。


それでも付き合っているのは、どうしてもあきらめきれなかったから。
と言えば聞こえはいいが、つまり私は友情より恋愛のほうを取ったのだ。


「もう二週間…会ってないんでしょう?」

「近々、別れるつもりだけど」

「そんな冷たい言い方しないで。別れてもミクは友達なんだから」

私は偽善者だ。
いつもこうして、嫌われないように、人の目を気にして行動する、偽善者。
笑顔の仮面が顔に張り付いているけれど、その裏にはとても醜い嫉妬や憎悪の顔があるだけだ。

「ルカがいいなら俺はそれでいいけど」

私は唇を重ねた。
今まで一緒になれなかった分を掻き消すように。





*Miku side






夜の街中、歩いている青い髪の男を探す。
人ごみにまぎれていても、カイトを見つける自信はあった。
ほらね、もう見つけた。

「カイト!」

「ミク?どうしてここに…」

仕事だけじゃなくって、私を見てよ。
私だけを見て欲しい。

本当は、こう言えば良かったのかも知れない。
でもそんなの、素直に言えるわけも無くて。

私はカイトの胸に顔を埋めた。

と、わずかに甘い匂いが鼻をつついた。
他の、女…?

カイトの裏には、明らかに私じゃない誰かの影が、見え隠れしている。

「ねえ、カイト」

「なに?」



「私のこと、好き?」




「…今日泊まってくだろ?こんな街中じゃなくてベッドの上で」

「今…ここで答えてよ」

「好きだよ」

誤魔化すように、カイトは唇を重ねてきた。

「私だけを…見ててね?」

「……勿論」

見え隠れする女の影に怯えるように、カイトの胸にまた顔を埋めた。








*Kaito side






3人で仲良くなれば、それでいいと思っていたのに。

ミクの隣で、ぼんやりと夜のあけかかった空を見た。
雨が降っている。
雨音が、俺を責めているようにも聞こえた。

子供が、両親のどちらが好きかと問われたときに、両方、と言うように、俺にはどちらか、なんて選べないんだ。

俺が三人の仲に亀裂を生じさせているのは分かっていることなのに。

なのに、何故かやめられなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【ACUTE】歪んだ愛は、激化して 1

お久しぶりです(。・ω・)ノ゛
今回は次回予告の通り、黒うさPの「ACUTE」です!
思いっきり昼ドラ展開にしたいと思ってます。
「ReACT」も合わせて書くつもりです。
つまらん駄文をまたどうぞよろしくお願いします。

閲覧数:1,226

投稿日:2011/11/13 08:23:39

文字数:1,412文字

カテゴリ:小説

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