―まただ。
彼女は直感的に感じた。
”自分の踏んだ土が海へ還った”のだと。
それは論理的にはありえないことである。
何故か?
人はそれくらいには生きれないのだから。
―籠の中で、安寧を得て、私達は眠れるのよ。
いつぐらい前だろう。
幼馴染みの少女がそう言っていたのを思い出した。
彼女の横に居た”彼”の瞳に映る景色はいつも変わらない。
彼女は微かに嗤いたくなった。
―何故、この人は生きるの?
―生花なんて、摘み取ってしまえば枯れてしまうのとおなじ。
―”悠久”に生きるくらいなら、記憶を積み重ねるくらいなら、摘み取ってしまえば良いのに!
愚かな人、と彼女は呟いた。
彼は何も動じなかった。
それでも彼女は怒ったりしなかった。
彼の”本当の姿”を知っているから。
―知っているわ。
―彼が生きる理由は、私が生きるからよ。
彼女は溜息を吐いた。
自分には死ぬ勇気が無いと知っているから。
―彼は私を愛しているのかしら。
―だから脆く、弱く、吹けば消えてしまうような蝋燭のような私を殺さずに生きて居るのかしら?
彼女はそっと目を閉じた。
彼の言った事を思い出したから。
―”強く強く、どんな場所であっても、生きていく事が幸せ”らしいわね。
―”そうあろうと努力をして、疲弊しきった精神”を見るのは、辛いのよ。
彼には涙さえ忘れたのではないかと思えるほど情緒が無かった。
彼女にはそれが恐ろしく感じられた。
「ねぇ……」
彼女はふと彼に訊いた。
「あなたはいつも同じ景色を見て居るわね……そんな同じもの、愛でられるの?」
彼は静かに訊いていたが、軽く目を伏せ言った。
「君の居る景色だから……後は、この景色は少しずつかわってる」
彼女はもう一度訊いた。
「涙……そうよ、あなたはどんな事があっても泣かなかったわね……
どうして?こんなに長く生きたから……感情が死んでしまったの?それとも……涙が枯れてしまったの?」
彼はくすりと笑った。
「……笑えるから問題ないよ?
涙が枯れるって言うのは、人が生きるうちには無いだろうね。
感情が……無くなる事も……」
彼女は少し驚いてから、言った。
「あら……あなたが笑うなんて久しぶりに見たわ」
彼はもう、何も答えなかった。
―憂愁。
彼女の中に、ぽっかりと穴が開いたように、虚脱感が広がった。
何かしら、と思いながら、彼女も同じ景色を見る。
―とりあえず、彼にも夢がきてほしいわ。
彼女は思った。
―昔の、私みたいに。
―覚めない、夢がいい。
【自己解釈小説】永遠の人【かかせていただきました】
一応コラボの曲なので、こちらに投稿しておきます。
問題がありましたらご報告下さいまし。
ふぅ、歌詞が大好きなんだッ……
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