episode1 荒城の迷路
――カツ、カツ
私に聞こえるのは、恐らく自分が歩いているであろう足音だけ。
未だに暗闇は続いていて、生きているかすらわからない気持ちの悪い感触。
もうどれほど『歩いた』のだろうか。
けれどなんとなく、視界は開けているような気がする。
記憶ほど曖昧なものはない。
もう最初の完全なる闇は忘れてしまった。
――ぴしゃっ
足元で音がした。水たまりでも踏んだのだろうか。
下を見てみると、はっきりと小さな水たまりを踏んだ足と、水面に映る自分の姿を見ることができた。
理由はわからないが暗闇は脱出できたらしい。
その目で初めて見た自分の姿は、なんとも不思議だった。
白い肌に、桃色の長い髪をなびかせて、黒目がちな瞳で、臙脂色のエプロンドレスを身に着けている。
別にそこまで美しいとも思わない。
まだまだ歩みを進める。
辺りは一面不気味な森で覆われていて、私が歩いている一本道が不自然に続いている。
空は暗雲が立ち込めており、今にも雷が鳴りそうな。そんな最悪の第一印象。
「……まったく……ここはどこなのよ……」
そう呟いた。
そして私は声を出せることに気付く。
足も、腕も、首も、指も、自分の意志で動かせる、ということに気が付く。
「――ようこそ、エルカ。この迷宮へ」
なんだか聴いたことがあるような声がした、と思い瞬きをした瞬間現れたのは――虚大な城だった。
城、と言っても荒れ果てていて、眩かったであろう城壁は黒ずみ、屋根同様蔦の葉で覆われている。
「どうだい、我々の城は」
右側を向くと、黒いタキシードに似た服をきっちり着こなした帽子をかぶった男が意味あり気に腕組みをし、城の門に体を預け笑っていた。
影になってはいるが帽子から少し目を覗かせている。
「……だれ?」
「ああ、これはこれは。申し遅れたね。僕はカイアール。これからこの城――いや、迷宮を案内するものだよ。……おっと、疑っているの? 大丈夫安心して。僕は君に危害は加えないから」
「いや別に何も言ってないけど」
カイアールと名乗ったその男は帽子を取り、深々とお辞儀をした。
現れた透き通るように蒼い髪が揺れ、吸い込まれそうに青い瞳が私を見つめる。
「さあ、エルカ。おいで。案内しよう」
「……はぁ……。まあ、これ以上進めないみたいだし、もうずっと歩くのも嫌だし、そっちのほうが楽しいかもね。胡散臭いけど」
私はやっとたどり着いた恐らく目的地であるこの城を、カイアールとやらに案内してもらうことにした。
この後私がどうなろうが知ったこっちゃない。
けれど進んでいた道を遮るように現れたのならどうあがいてもこの迷宮に入らなくてはならないのは明白であった。
『さぁ、Show Timeだ』
誰かが笑った気がした。
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ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
このはなし、部分的には覚えてるなー
リメイクされた彼女の運命や如何に!
きっと、だれにもわからない!
そう、イズミさんでも!←
2013/12/28 14:14:18
イズミ草
覚えててくれましたか―ww
いやはや、実はこのリメイク版をやればいいと考え付いたのはつい最近のことでしてww
おお! さすがしるるさん!!
よくわかってらっしゃるwww
2013/12/29 19:45:39