ああ、またか・・。
私はため息をついて同時に恐怖をいだいた。
それは席替えの日のこと。
私はクラスの女子がみんな恋する男子のとなりの席になってしまったのだ。
彼の名はシオン。
シオンと私は普通にしゃべるクラスメイトというかんじ。
私はシオンに恋はしていない。
ところが最近クラスの女子のボスがシオンに恋をしたとの情報を得た。
想像するだけでも恐ろしいのでボスとシオンがとなりの席になることを誰もが祈った。
ところが幸か不幸か、私はシオンのとなりの席になってしまいボスににらまれ続ける日々を送っていた。
それは恐ろしい感覚でもう何度も体験しているが慣れないものである。
なんとか今日も無事に過ごし私はホームで電車を待っていた。
私の方向は同じクラスの子があまりいないから1人で帰ることが多い。
まだ電車はこない。
明日の時間割でも思い出すか。
と、何かが体に当たった。
とりあえず振り向いてみた。
「あれ?1人なの?」
「ミナトくん・・?」
そこにいたのは同じクラスのミナトくん。
でもミナトくんはこっちの方向じゃなかったはずだけど・・?
「うん、こっちは人が少ないからね・・」
「そっか!」
ミナトくんは明るくてフレンドリーな性格の男の子。
個人的にはミナトくんの方がモテそうな気がするのだか、クラスの女子はみなシオンに恋をするのでモテるとはいったい何なのだろうとわからない現象だと最近は思う。
「カエデちゃんはさ、シオンと付き合ってるの?」
えっ、今なんとおっしゃいました・・?
「付き合ってないよ!なんでそうなってるの?!」
もはや半分悲鳴である。
シオンは話しやすい男子だけど付き合ってなんかいないし、恋もしていないのでそれ以前の問題だ。
あと、もしそんなことになってたらたぶんボスに殺されると思う、うん、コワイナ。
「あ、そうなの?なんかシオンとカエデちゃんって仲良さそうだよねって友達が言ってて確かにそうだなぁって思って、じゃあ聞いてみるか!ってなってさ!」
ミナトくんがにっこり笑う。
「ミナトくんはなんでこっちなの?」
とりあえず話題をそらした、ごめんね、ミナトくん。
「なんでこっちだと思う?」
えっ、質問返し?
「うーん、引っ越したとか?」
「では1週間以内に答えを当てるという試練をあたえよう!」
スマイル度が増した顔でミナトくんが言う。
「ええ、答えを当てるの?!どうやって?」
「方法は何でもいいよ!俺は今日からこっちの電車になるから毎日一緒だからいくらでも観察できるよ!」
今度はピースをしてきた。
なんかよくわからないけどまあやるしかないよね・・。
「了解、受けて立つよ!もしも当たったらどうするの?」
負けず嫌いな私の性格が出てきた。
「おー、いいねぇ!さっすがカエデちゃん!」
笑顔のピースのミナトくんが突然真面目な顔になる。
えっ・・?
あまり見ないミナトくんの真面目な表情にドキッとした。
そんな自分の心にもおどろく。
「そうだなぁ・・。うーん、あっ!俺の秘密を教えるっていうのはどう?誰にも言ったことないやつ!」
再び笑顔に戻るミナトくん。
なんかおもしろそうかも。
「よーし、絶対に当てるよ!」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

春の楓(1)

閲覧数:71

投稿日:2023/02/12 00:25:59

文字数:1,317文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました