見えるのは青い空。
光生は目を覚ます。
(私、いったい何が?)
事態を把握し切れていない光生。
「よかった」
最初に聞こえたのはサレオスの安堵の声だった。
見ると周りには死んでしまったと思われる陰陽術師が多数倒れている。
だが、幸いにも自分は生きている。
光生はサレオスを見る。
疲れたような、やつれたようなサレオスが目に入る。
だが、直後、その後ろに浮いている物体に、いや、生物に、いや、怪物に光生は驚きを隠せない。
ライオンのような頭から山羊のような足が五本、円を描いて生えているそれ。
光生は恐怖に震える。
光生の様子に気づいたサレオスは笑う。
「こいつは敵じゃない」
そう言うと、続けてその怪物が口を開いた。
「我はブエル。サレオスと同じく、ソロモン72柱の一人」
ブエルと名乗ったそれの発した「同じく」という言葉に光生は安堵と共に疑問もわきあがる。
「あの……そろもんななじゅうにちゅう……って何?」
光生は訊いた。
すると、サレオスは困ったような顔をする。
「説明に時間がかかるな。簡単にいえば、神に対立するもの、こちらの味方だ。詳しくは後で」
「あ、はい」
光生は頷く。
サレオスはブエルに振り替える。
「それでは、仕事はこれで。還ってもらって構わない」
サレオスの言葉にブエルは頷き、一言、
「うむ。それでは、我は還る」
と言った。
直後、ブエルの足もとに円が出現する。
そして、円が何かに包まれる。
包みが解けたとき、そこにはもうブエルはいなかった。
「光生」
驚きで呆然としている光生をサレオスは呼んだ。
「え? は、はい」
我に返り、光生はサレオスの方を向く。
「お前に言いたいことがある」
「…………」
光生はすぐに返事できない。
それは、サレオスの表情が真剣極まりなかったからだ。
流れる静寂。
ようやくサレオスは口を開く。
「旅の連れになってくれないか」
「旅の……連れ?」
光生は首をかしげる。
サレオスはいつもの静かな口調で言う。
あまりにも光生に衝撃の大きいことを。
「そう。終生という名の旅の伴侶に」
「――――!!」
突然、その物静かな口調から発せられたのは……
愛の告白。
光生は余りの驚きに目を見開く。
戸惑いの余り、何を話せばいいか分からない。
だが、サレオスは一言も言わない。
返事を待っているのだ。
(私の気持ちは…………でも……)
「私は……巫女なので……」
そう言う光生。
しかし、直後、サレオスから発せられたのは、もう一つの驚き。
「この神社にはもう神はいない」
「え……?」
その言葉の意味を理解できない。
「この神社に祭られている神は?」
「……天照大神だけど」
恐る恐る光生は答える。
「天照大神はこちら側の者だ。そして、先日の世界征服を目論む神々との大戦で、死んだ」
「!?」
(天照大神様が……死んだ?)
光生は困惑する。
「どうしてサレオスがそれを知ってるの?」
どうしても信じられずに光生はサレオスに訊いた。
だが、サレオスから発せられたのは再びの驚き。
「三週間ほど生きて帰っては来れないかもしれない仕事に行っていた」
「はい」
それは光生も知っている。
「その仕事が、大戦だ」
「――!!」
光生は驚愕する。
「もうお前がここに居る必要はない。居る意味がない」
光生はあたりを見回す。
「もう一度訊く。終生という名の旅の伴侶になってくれないか」
確かに生きている者は一人もいなかった。
巫女も新職も。
知人は全員死んだ。
(でも、私にはまだ一人…………大切な人がいる。そう、それは……)
光生にはもう迷いはない。
立ちはだかる障壁はもう一つもない。
(そう、それは…………私の目の前にいる)
「サレオス」
そう言うと、光生はうつむいた。
ゆっくりとサレオスに向かって歩く。
体と体が当たるぐらいまで近づく。
ほのかに赤く染まった顔を上げる。
「私でよければ」
そして。
背伸びして、光生から重ねた。
唇に唇を。
ゆっくりと唇が離れる。
だが、体は離さない。
「じゃあ、行こう」
「ああ」
しっかりと手を握り合い、光生とサレオスは歩きだす。
そして、二人で歩む終生の旅が始まったのだった。
あとがき
皆様はじめまして。
初投稿です。
ヘルフィヨトルです。
皆様のお目に書かれたこと、誠に幸せです。
今回は「AuC 金のダイヤモンド」という私の書いている小説の本編に後々登場する予定の巫女・神門光生の過去の話として外伝にして書きました。なので、本篇に登場するときはこれよりも未来です。
ついでに、本編よりも外伝が先に出るのは変なことなのですが、本編はまとめて出したいのでもうしばらくお待ちください。
今回は
テーマ……光生の恋と旅立ち
目標………サレオスの「グレープ・シュガー」・出会いから旅立ちまで書く
結果………内容不満、修正不完全
でした。
本編は普通の小説並みの量になると思います。
なので、おそらく幕ごとに出すと思います。
今は第四幕を書いているところです。
一巻目は全六幕の予定。
では、本編や別の外伝で会えることを楽しみにしています。
読者の皆様にワルキューレが微笑むことを
ヘルフィヨトル
コメント1
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ご意見・ご感想
ヘルケロ
ご意見・ご感想
>阿達さん
なるほど
確かに読みづらいというのはありますね^^;
読んでて目がつらいwww
アドバイスありがとうございます。
ポーカロイド……ミクとかリンとかレンとか好きなのですが……
私あまり知らないんですよね^^;
頑張ってみます^^
2009/07/26 20:50:22