ガタガタと音を立てて馬車は揺れる。
その形は、南瓜などではない。
目の前にいるのも無論、魔法使いなのではない。
これは、現実なのだから。

「あなたは、誰?」

その人の顔は無機質で、無感情。
常に薄ら笑いを浮かべる、ゾっとするような人。

「私のことはどうでも良い、用があるのは君なのだから」

明るみに出てみると、その顔は仮面だった。

「君は孤児だ。探しにくる人など、いない」

仮面の男(?)は懐に手を入れ、黒光りするものを取り出した。
銃。銃口はいやに大きく、ミクを圧倒した。

「これを飲め」

「いやよ」

飲み物は遠くからでもクスリの臭いがした。
睡眠薬か、それとももっと危険なクスリか。

……………パン!

乾いた発砲音。
其れはミクの頭すれすれを通り、後ろの壁に直撃した。

「殺されたいか?」

ミクはふるふると頭を振るのみ。

「殺されたいか?」

また、頭を振る。

「コロサレタイカ?」
「コロサレタイカ?」
―――コロサレタイカ?

「っ…ぁ」

震える手で杯を取り、一気に飲み干した。
ミクの頭を理性が支配したのは、此処までのことであった。

「お前は王子を刺し殺す、十二時の鐘と同時に…出来なければお前が死ぬ」

みじめな古着はいつの間にか煌びやかなドレスへと変わっていた。
そして、硝子の靴と黒い仮面。
ドレスと共に纏ったのは、硝煙と邪悪な命令…







「…しました、どうしました?」

「…あっ?」

優しそうな男の人。
仮面をつけていても、高貴な血だということはすぐに分かった。
かっこいい、と言うよりは綺麗、と言った方が良いかもしれない。
間違いない、この人が王子だ…!

「あなたは…」

「仮面舞踏会でそれを聞くのはどうかと思いますが」

ミクは我に返って自分の姿を見た。
白いドレスと、白に対して不釣合いな黒い仮面。

「舞踏会に連れて行ってください」

彼はカイトと名乗った。
王子の名前は知らないから、本名か偽名かは分からない。
曖昧に指が階段に誘っている。
段差の低い豪華な階段を、三段飛ばしに跳ねた。

「随分とおてんばだね」


舞踏会は、仮面を付けた人で溢れ返っていた。

「踊りますか?」

「はい!………!?」

黒装束の、仮面の男。
3人ほどに居て、こちらを見ている。
あの囁きが耳に蘇る。

『お前は王子を刺し殺す、12時の鐘と共に』

「どうしました?」

「あっ…いえ…」

隠された刃の柄が腰に当たった。
ミクはそれを握り締めた。
駄目、駄目、駄目、駄目…!

「なんでもありません」

仕組まれた出会い、偽りの慈しみ。
偽りだらけのこの城で、二人は踊った。
朝まで踊れぬ運命だと知りながら。


「疲れましたか?」

「いっ…いえっ…だい、じょうぶ、です」

「こちらへどうぞ」

王子が案内したのは、誰も居ない、しかし豪華な部屋だった。
彼は仮面をゆっくり外した。
端正で、美しい。

「貴女の顔も見せて欲しい」

ミクもゆっくりと仮面を外した。

「私は…ミクです」

そして思い出したように聞いた。

「あの、今…何時ですか…?」

王子は懐中時計を優雅に出し、

「11時55分…そろそろ12時ですね」

「そうですか…では私は…帰ります」

鐘が鳴れば、貴方を殺さなければならない…
全てを壊してしまう前に、去ってしまおう。
貴方を愛しているが為に。

「何故!?」

ミクは階段を駆け下りた。
駆け下りた瞬間、硝子の靴が脱げ、躓いてしまった。

「大丈夫ですか?」

「鐘は…鳴らさないで」

震える声で懇願するミクに、王子はかける言葉が見つからなかった。

「それは…」

ゴ――ン…ゴ――ン…ゴ――ン…ゴ――ン…

「まだ、まだ駄目!」

ゴ――ン…ゴ――ン…ゴ――ン…ゴ――ン…

殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ…

ゴ――ン…ゴ――ン…ゴ――ン…

「嫌…駄目…駄目ぇっ」

ゴ――ン…

12回目の鐘がなると同時に、ミクの右手は本人の意思に逆らって刃をつき立てた。

王子の驚愕の表情、倒れていく王子、噴出す鮮血。
全てがミクの網膜に焼きついた。

「王子…様…」

王子は倒れたまま顔を歪め、笑った。

「何故私が王子だと分かったのです?」

「全てで」

「…そうですか…泣かないで。傷はそう深くありません。大丈夫です」

黒い仮面の男たちの誤算。
それはミクが王子に感情を持つということを考えなかったことだ。

「嗚呼…!」

ミクは王子の胸で泣き、王子もそれを受け止めた。

二人は邪悪な命令は消えたのに、時を止めてほしいと感じた。
鼓動のひとつひとつを貴方と刻み付けたい…

打ち付ける昴まりは、もう誰にも止められない。

「ミク…」

熱く濡れる二人は、少しずつ激しさを増してゆく。
全ての物事を覆すほどに。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【ミク誕、遅刻。】12時の鐘と偽りのシンデレラ【サンドリヨン】

フェアリーゴットマザー涙目ww
はい、ここ失敗。↑
ミク誕二日遅刻(つД`)・゜・。
はい、ここも失敗。↑
ごめんよミクちゃん…昨日はテスト勉強だったし、一昨日は上げれなかったよ…m(_ _)m
12時の鐘と~でピンときた方は大分侑子を分かっておいでですネ∑d(゜∀゜d)
アドレサンスは12時の針と~でしたけど。
シグナルP様が大好きです。

鳥肌がたつような素敵な本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4410647

閲覧数:732

投稿日:2011/09/02 17:56:36

文字数:2,015文字

カテゴリ:小説

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  • シベリア

    シベリア

    ご意見・ご感想

    カイトおおおおおおぉ!!!死なないでええええ!!
    よし、今からでもカイトとうちを入れ替えよう!そうすればカイトは死なずにすむよ!
    カイトは何もしなくても王子様なんだぜ!!ww

    アドレサンスの歌詞よく覚えてるねwすごいww最近聴いてないから忘れてきた…((
    中学生にとってテストは最大の敵だ!!(((勉強しろ

    2011/09/03 10:47:20

    • 楪 侑子@復活!

      楪 侑子@復活!

      シベリア  カイトは死ぬのか死なんのかぼかして書いたから…分からんな(おま
            シベリアは兄さんガチで好きですな(*゜ー゜)
            いやいや何もしなくても王子様はレンだ(ぇ
            うんアドレサンスとサンドリヨンの違いは全ていえるよ!
            分かりにくいのはね、「これ以上は動?か?ないよ」がサンドリヨンで、「これ以上は動?け?ないよ」がアドレサンスだよぅ!
            テスト作ったの誰だろうね?ブチ殺してやりたいww



      れっちぃ  うん!全然おk!
            おおじゃあれっちぃは侑子検定三級だな(ぇ
            いやいやこんな駄作を読んでくれてありがとうだぜまじで
            お!見に行く見に行くヾ(≧∪≦*)ノ〃
            うん!こちらこそよろしくね!

      2011/09/05 23:31:24

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