透明な陽光降り注ぐ 芽吹きの季節 卯月の空
整えられた庭を鮮やかに照らし出す
ガラスの離宮に見下ろされた ここはとある世界の片隅の庭
いびつなる俗世にぽっと咲いた まほろば
蜜蜂が春の始まりを告げた
完璧な対称(シンメトリー)の幾何学模様(ジオメトリー)の迷路
緑の彫像の動物たちが踊り唄う
花壇には青いバラが咲き誇る
手をくわえられてないものなんて何ひとつない
すべてが丁寧に仕組まれたこの庭の中で
“自由”を求めた僕は少し違っていました
造られたにわか雨をかけないで
清められ測られた水でなくて
たまには雨に打たれてみるのもいいかもしれないから
都合に隠れた一抹の“善意”の手を差し伸べて
お願いどうか僕を縛らないで
大地の隅に形造られた ありうるはずのない奇跡の庭
瑕疵(かし)のない者たちが織り成す 夢世界
賞賛の雨が降り注いだ午後
“選ばれた生え抜き(エリート)の集大成(コンプリート)の地だ”
好ましいものだけが生まれるはずの庭で
“そのまま”の姿など美しくないと
伸ばしたばかりの若枝(わかえ)を摘みとられた
“あなたもその方がいいでしょう?”
この庭では所詮、僕は“理想”という
芸術のためのひとつの歯車でしかないの?
侵入者を枯らす薬を撒かないで
からみついたそのつる草は
遠い地の空気を運んでくれた新しい友だから
“害悪”をはねつける分厚いガラスの壁で
お願いどうか僕を囲わないで
もの言えぬならば何もできないと なぜあなたが僕の色形を押し付けるのですか?
平気で鋏(はさみ)を入れて、切られる痛みを分かっていないでしょう
あなたの望む“美しさ”なんて、所詮はあなたのエゴでしょう?
僕は機械部品じゃない、いびつな形でも好きに手足を伸ばさせて
神様の創った世界に生まれた以上
どんな冴えない姿でも
僕はこの空の下で生きてゆく権利があるのです
“常識”の“美しさ”の物差しでこの命を測らないで
どんな姿でも、これが僕です
生ける緑さえ管理されたこの庭
たとえ気に入らなくても
生まれ落ちてしまった事実だけは変えられません
僕の命はあなたの“美”のためにあるのではない
お願いどうか僕を縛らないで
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