なにもないなにもない世界には
ふたつのイスだけ他にはない
誰のため何のためわからない
座っても良いか分からない

目を閉じてまた開けると
イスが少し離れている
なんでって視線を外すと
イスがまた近づいている

なんだか怖いからって離れたら
遠のいたよりも離れていなくて
全力で駆けだして振り向くと
さっきと同じ位置にまだあって

このイスは生きている動いてる?
この世界は生きている傾いでる?
私しか見えない?私だけ知らない?
何も分からないイスは知ってる?


果てのない果てのない世界には
ふたつのイスだけ他にはない
誰がした何をしたわからない
動かして良いか分からない

耳塞いでいるだけでも
イスがカタカタ鳴っている
なんでって怖がっていると
背当てに口が見えて笑い出す

とっても怖いからって泣いてたら
「ごめんなさい」って謝りだして
ようやく泣き止んだ私に向かい
意味のない説明を始めだした

「私たちは待っている」なにを?
「私たちは知っている」なにを?
私はどこにいる?私はどこから来た?
何も記憶がないイスは知ってる?


あてのないあてのない世界には
ふたつのイスだけ他にはない
誰といた何でいたわからない
話しかけて良いか分からない

うずくまっているだけでも
イスがゴトゴト動いて来る
嫌だって喚いていると
四つ足がぐにゃり曲がって覗き込む

頭抱えて丸くなっていたら
「座ってもいいよ」って呟いて
低くした座面を私に傾け
仕方なく私は座らされた

このイスはあたたかい?柔らかい?
この世界は生ぬるい?生易しい?
私はいつにいる?私はいつから来た?
どこも時計がないイスは知ってる?


きっとこれは罠だって思ってた
手枷足枷首輪が付いて電気ビリビリ
何も知らないのに白状させられる
そんな事を口走ったら怒られた

「私たちはただのイスです」って
その内容と事実がおかしいのに
イスは元々ただの二脚のイスで
いつの間にか言葉が出せていた

イスなのだから座ってもらわないと
そこに私が現れて怖がっちゃって
なんとかこうやって座ってくれた
ただ単にそれだけの話だってさ


イスは実は形が変わったりする
ふかふかのソファのようになったり
馬みたい跨がるような形になったり
ビーチチェアみたいに平べったく

そのまま走ったり飛んだりして
ここまで来るとイスなのかどうか
飛んでいるイスから落ちそうに
そして最後に一つだけ聞いてみた

これって結局夢なんでしょ?


顔が痛い肩が痛い膝が痛い
眠っていたのはほんの数分で
うたた寝のイスから転げ落ちた
もうイスは喋らなくなってる

そう考えると少しだけ少しだけ
なんかちょっと寂しい気もする
肘置きが手を振った気がしたけど
何も見なかったことにしよう

何も知らなかったことにしよう

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ふたつのイス

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投稿日:2022/03/05 20:46:39

文字数:1,176文字

カテゴリ:歌詞

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