それを聞いて、リンちゃんの好奇心がムクムクと湧き起ってきた。
「あのー、もし良かったら、会わせてもらえませんか。そのツクヨミさんに」
リンちゃんの言葉に、ベニスズメさんは目を見開いた。
「え? ええ、いいですよ。でも...」
口ごもる彼女に向かって、くったくのない笑顔を見せるリンちゃん。
「平気ですよ。別に、なんか文句を言ったりはしないから」
片目をつぶる。
「今回はお仕事で、お世話になったんだし」
笑って、うなずくベニスズメさん。
それを見て、おずおずと駿河ちゃんが言う。
「あの~。私も、お邪魔していいですか? 私は、部外者だけど...」
じっと彼女を見ていたが、ふっと表情がゆるみ、うなずいた。
「いいですよ。じゃ、こちらです」
●月光企画の部屋
2人は彼女の後について、古い建物の玄関を入った。
入り口には、ちょっとものものしい装飾の柱がある。
そんなに豪華で立派という建物ではないけれど、品が良くこじんまりとしている。
ただし、古い。昭和...を通り越して、大正の時代の趣さえある。
3人は、石造りの階段を上がって、(もちろん、エレベーターなど、無い)
3階まで上がって行った。
階段の手すりは、シンプルだが御影石でできている。
3階の廊下に出た。各部屋の外壁は、昔なつかしいモルタル造り。
廊下のいちばん奥にある、目指す部屋の前に来た。
入り口の扉にも、セメントで、ちょっとした装飾が施されている。さほど大きな部屋ではなさそうだが、感じの良い入り口だった。
扉の真ん中に、郵便物を入れる細長い穴がある。
その上に「月光企画」という浮き彫りがあった。
古めかしい作りだったが、いちおう扉の横に、インタホンがついている。
ベニスズメさんは、そのボタンを押した。
はい、という、男の子のような声がした。
●どこかで見たって...あれ?
「わたくしです。お客様お連れしてますけど」
口を近づけて言う、ベニスズメさんの声に応えて、扉がゆっくりと開いた。
でも、開けた人が誰もいない。...のではなかった。
ちょっと下から、こちらを見上げている顔があった。
少年、10歳くらいの少年の顔だった。
くりっとした目。七三ではないけれど、小ざっぱりとまとまった、ちょっと長い髪の毛。
その子の顔を見て、駿河ちゃんは、あれっ、と思った。
どこかで見たことがあるような...。
「ごめんなさい。いま、大丈夫?」
ドアを外から開いてささえて言う、ベニスズメさんに、少年はこくりとうなずいた。
そして大きな目を見開いた。
「あ、リンさん、じゃないですか」
リンちゃんも、目を大きく見開いて、その子を見つめてた。
「ツクヨミさん、ですか?」
思わず聞いたリンちゃんに、少年は「はい」と答えた。
あっ、そうか!
駿河ちゃんは、見合っている2人を見つめて、思った。
「ペッパーくん、だ。そっくりよ」
少年は...。ロボットのような感じの子どもだった。
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