第一章
『ウェイトレス・リリス』

「串原くん。今日の帰り、時間ある?」
会社の先輩、中山さんが話しかけてきた。
「この前みつけた、面白いファミレスがあるんだ。今日の夜に行ってみない?」
外食があまり得意じゃない僕は、少し躊躇ったけど興味はあるし、行ってみることにした。
その場所は、よく秋葉原などにある『メイドカフェ』のような所だった。
一人で入るには少し勇気がいると感じた僕は会社の先輩に連れて来られなければ一生関わることのない場所だっただろう…。
ファミリーレストラン『はちみつの瓶』
メイド服とまではいかないが、ウェイトレスはかなりオタクくさいコスチュームを身にまとっていた。
いわゆる『フリフリ』である。
僕は子供の頃からアニメやゲームなどが好きで『オタク』的な趣味を持っていたがアキバに行くことはあまりせず、よく通信販売などで買い物をしていた。
だから『メイドカフェ』に入ってみたい気持ちはあったけど実際に入ることはなかった。
はじめて体験した『フリフリ』を着た女の子に目のやり場に戸惑いながらも内心ドキドキしていた。
「いらっしゃいませ!お客様」
一人のウェイトレスが案内をしてくれた。
「どうも、お久しぶりです。」
そう先輩に向かって話し始めた。
「こちらのお客様は『ハチミツ』はじめてでいらっしゃいますか?」
ウェイトレスは僕に対して笑顔で、そう話しかけてきた。
僕が「はい」と答えると。
「では、こちらのメニューに書かれている[注意事項]をご説明させていただきます。お食事やお飲み物のお写真は撮影可能ですがウェイトレスや他のお客様の撮影はNGとなっております。お店が混んできた場合、九〇分制となりラストオーダーとさせていただきます。ご了承くださいませ。そして、特別メニューとして『日替わりランチ』をご注文いただいた際、ウェイトレスと5分間だけご自由にお話することができます。ですが『個人情報』などを聞くことはNGとさせていただきます。」
などなど、いろいろ制限があるようだ。(あたりまえか…)
『個人情報』なんて聞き出すつもりは更々ない。
はじめから『彼女たち』に何も望んでいない。僕のようなオタクは女の子たちと話せるだけで嬉しいのだ。たとえうわべだけの会話だとしても、それだけで楽しいのだ。
「あ、はじめまして。私『リリス』っていいます。これからよろしくお願いいたしますね。お客様」
「は、はあ…」
僕は少し頼りない返事をしてしまった。
「お客様、元気ないですね?何かありましたか?」
「この人、こういう店はじめてだから緊張してるんだよ」
中山センパイは、その場の空気を悪くしないためにそう言ってくれた。
「そうでしたか、それならよかったです。」
リリスさんは、そう言って笑ってくれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】地下アイドルを推しています。第一章①

小説を書いてみました。
その第一章①です。

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投稿日:2018/06/04 20:39:36

文字数:1,154文字

カテゴリ:小説

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